第16話「学び、成長していくこと」

トセパンは「学び」「研修」ということにも、大きな価値を置いています。

2003年に、クエツァランの郊外に「研修センター・カルタイクスペタニロヤン」が建てられました。これは、ナワット族の言葉で「精神を解き放つ家」という意味があります。通称「エル・カルタ」は、子ども、若者、大人の全てが学べる施設となっていて、理論と実践を通じて個々人の能力向上を目指しています。扱うテーマは、生産や栽培、社会のこと、市民生活など幅広く、組合員のみでなく地域の貧しい人々にも開かれています。

トセパンでは、学び合い、教え合える場所をずっと夢見てきました。エル・カルタは、その夢を具体化した施設なのです。図書館、ビデオ・ライブラリー、コンピュータールーム、視聴覚室を備えています。大小の会議室を持ち、短期でも長期でも集まり、知識を共有できる広々とした空間です。この学びの空間で、若い組合員がリーダー研修を受けたりもしています。

?IMG_0750
エルカルタの中で集会の様子

生産設備も併設され、実地で学ぶことができます。コーヒーやオールスパイスの果肉の処理施設、キノコ栽培場、有機肥料を作るためのミミズコンポスト、ブタや鶏、魚の飼育場などもあります。

IMG_0677
生活排水の浄化システム。植物を利用している。

実験農業では、収穫量の多いコーヒーの木や、病気に強い木を試験栽培しています。また、テラス、生垣、有機肥料、コーヒーに付く害虫であるブロッカ対策用のバウベリア菌の培養、緑肥・生垣としてのフレミンヒアの栽培などがモデル的に行われています。コーヒー栽培には欠かせない木陰の維持も研究していて、多様な植物を見ることができます。例えば、マカダミア、サポテマメイ、オールスパイス、カシ、コナラ、チャラウイテ、マホガニー、ホノーテなどの樹々です。

?IMG_0681
実験農場の一部。コーヒーが日陰樹の下に植えられている。

組合の活動がない時期には、宿泊施設や食堂は訪問者向けに活用されます。エル・カルタは、環境教育とエコツーリズムの場としても利用されているのです。

IMG_0999
宿泊施設 竹を建築材に活用している。

IMG_0872

トセパンの若きリーダーであるナサリオ・ディエゴは、研修センターについて語ります。

「センターの使命は、トセパンの組合員とプエブラ州北西部に広がる山岳地域の農民が、知識の幅を広げ、考え、アイデアや経験を共有することなのです。そのことを通して、人として成長し、家族の生活の質を高め、地域社会の発展に寄与するのです。」

?nasario
ナサリオさん

トセパンの組合員は殆どが先住民です。エル・カルタにおいて、先住民の習慣を評価し、文化を尊重し、言語を取り戻す事を学んでいます。残念ながら、山岳地域における差別意識は強く、彼らの習慣は軽蔑されているのが現状なのです。

例えば、子どもたちは、学校でナワット語を話すことで叱られてしまいます。また、伝統的な衣装とはかけ離れた高い制服を着なくてはなりません。都会から戻った若者は、伝統のダンス(xochipitsauat)を踊りたがらないのが現状です。野草料理を使う家庭も減ってきていると言われています。これは、とてももったいない状況なのです。それぞれの人が、自分のルーツである文化や習慣に誇りを持って生きていけることをトセパンでは大切にしています。エル・カルタを通じて、伝統を再評価し、誇りを取り戻すプログラムを展開しているのです。

?IMG_0779
エルカルタ内で、先住民の伝統ダンスを披露

エル・カルタに訪れるメンバーは現場で学び、知識をより発展させるため、学んだ内容を伝えていく活動に関わります。研修を受けた人が、他の人へと研修をおこなっていくのです。それによって、学びの連鎖、知恵の伝達がなされているのです。より学びの質を高めたいという良い循環が生まれていくのです。これは、大きな変化の第一歩となるでしょう。

エルカルタにて編集された「トセパン紹介動画」
tose_movie1
こちらもぜひ、ご覧ください。

[前話を読む目次]

中村隆市ブログ「風の便り」 コーヒー関連ブログ「豆の便り」 スタッフブログ「土の便り」