第15話「ホノトラの闘い」

積極的にトセパンの組合活動に参加している女性たち。ある時は苦難に対して闘って来た歴史もあります。

ホノトラ郡の中心都市、コーヒー畑の広がるホノトラ。大地主であるロペス家の首領制度に対抗するために女性達は立ち上がりました。この街は、領主であるロペス家によって抑圧され、支配されていました。土地、家畜はもちろん、女性達も支配していたのです。権力ある地位に人を好みで送り込み、銃を所有する集団まで抱え込み、従わない人は殺すということをロペス家はしていたのです。

7時、家々は扉を閉めた後、恐怖感から、翌朝まで再び扉を開けることはしないという日常。若者が自由に外で話しをする雰囲気もありませんでした。

もし首領が、ある土地を気に入ったなら、こう言ったそうです。

「この土地が気に入った。いくら欲しいか?」

何も答えなければ、首領自身が値を付ける。その土地を渡そうとしなければ、こう言われた。

「よそへ行くまでに、いくらでも時間をあげよう。」

人々は死への恐怖感から、土地を手放さざるを得なかった。

恐怖による支配。これが彼らのやり方だったのです。住民がひれ伏し、敬意を示さなければ、人々は脅迫されたのです。

ロペス家のセキュリティーは万全で、誰も歯向かう者はいませんでした。ピストルを始めとする武器で武装し、凶暴な番犬を飼い、塀にある銃眼から機関銃を出して監視し、実際に人を殺すこともあったのです。家族全員がホノトラから逃げ出すようなこともありました。

このような状況下で、ホノトラの組合組織は女性達だけでスタートしました。男性は集まることすらできなかったのです。男性が集まり話しをすることは、ロペス家が許さず、その時は脅迫されるからです。

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トセパンメンバーの女性(本文とは関係ありません)

村の神父は、この状況を打破するために奔走しました。路上でミサをおこない、村での悲劇を語っていったのです。ある日、住民は神父に、組合の初会合を開催するため礼拝堂を使用させてもらえるよう願い出ました。100名程の女性が集まり、家族が最も必要とするとうもろこし、大豆、特に砂糖を入手するために、組合活動を希望しました。これらは村の店舗でも販売されていましたが、ロペス家が支配していたため、価格は法外に高かったのです。

組合の店舗開設のため、神父は土地を提供し、女性達が石を運び土台をつくっていきました。その後、女性1人あたり200ペソを出し合い、商品を揃えたのです。店舗はロペス家と闘う足場となっていきました。

組合店舗の失敗を企み、1周年を迎える前にロペス家は、商品を運び入れるトラックの出入りを妨害しました。その後、女性組合員がトラックに同乗することで妨害は止めさせ、商品が村に届くようになりました。

領主は憤慨し、組合の建物を爆破する勢いで脅してきました。一度、飲み物を販売していた家を爆破して、その力を誇示したこともあったのです。

当初、緊迫した状態が続きました。しかし、恐怖に怯えるどころか、組合は成長していったのです。自分たちの暮らしをより良くしうようと、組合員も200名に増え、店舗の数も増え、ホノトラの中心部にもお店ができました。こうした組合活動と団結によって、恐怖に怯えることが少なくなっていきました。

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トセパンメンバーの女性(本文とは関係ありません)

神父は女性達にこう語ったと言われています。「後ろを振り向いてはいけない。ここに200名も集まった。それぞれの手に石を握れば400個となる。命を落とすなら、天に召されるでしょう。隠れたとしても、銃弾にあたるのみです。」

神父は勇気を与えてくれたのです。

1980年、PRI党の州知事候補がホノトラを選挙キャンペーン期間に訪問しました。当選は確実視されていたため、組合員は村の現実を伝える絶好の機会と考えて行動に出ました。

神父が女性達をまとめ、候補者が村にやって来た日、数名が叫びました。

「ホノトラが望むものは何か?」

周りの女性達がすぐさま呼応します。

「平和!平和!」

その後、叫ぶのは女性のみでなく、男性も含め村人の全てが平和を求める声を張り上げたのです。

候補者はいぶかしげに、「なぜ、これほどに平和を求めるのか?」と聞きます。

あらゆる問題を伝える絶好の機会となりました。

ロペス家の暴挙、男性達の身に起こることなどを伝えると、州知事候補者は協力することを申し出ました。

女性のグループに1人の記者が近づき、ホノトラを取り巻く状況を取材しました。そういった流れもあり、ホノトラを解放するためのグループが結成されました。住民とロペス家側の間に闘争が生まれ、実際に死者が出ました。その後、神父も命を落とすこととなってしまいました。武装グループの数名も命を落とし、残りの者は逃げ去るという事態にまでなりました。

こういった信じられない状況から脱することができたのは、新しい領主の存在でした。新領主がロペス家に裁きを下したのです。救われたのは、新しい領主達は高齢であり暴挙に出ないであろうこと。おそらく、孤独の中で死んでいくであろうと言われています。

時に女性達が集まり当時を思い返すと、涙なしではいられません。ホノトラの組合設立に関わった女性達は既に高齢ですが、今でも闘う女性に変わりはありません。組織をつくり30年近くが経ちました。組合は常に村のために闘ってきたのです。

全ての女性が参加して、ホノトラに「女性の家」が建設されました。生産者の直売店やトルティージャ屋もスタートしました。

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ある女性は語ります。

「一連の活動を通して、自分の身を守ることを覚えたわ。発言もできるし、恥ずかしがらずに自らの言葉で話せる。保健委員会には、組合員の姿がある。家族会があれば、そこにも組合員の姿がある。言ってみれば、私達は「トセパン大学」の一期生よ。自分たちの権利とより良い暮らしを勝ち取るための学びを深めたのだから。」

女性たちは、次の世代、孫達の世代に、自分たちが蒔いた希望の種から何かを収穫してもらいたいと望んでいます。

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