第10話 森林農法がもたらす豊かさ〜生物多様性

トセパンの森林農法で育まれるものは、コーヒーだけではありません。そこにはいろいろな「つながり」があり、自然環境・多様性、人々の暮らし、そして伝統文化をより豊かに保っているのです。

自然の多様性とバランス

メキシコでコーヒーが栽培される地域は動植物の多様性に富んだ地域です。前回紹介したように、トセパンが展開している地域の生態系を尊重した森林農法では、その多様性を崩さず、それどころか豊かにさえしているのです。

第10章1

伝統的な森林農法のコーヒー園の動植物を調べたところ、50種から100種の植物、20種から60種の樹木が確認されています。また、着生植物の種類は、樹木の総種類の3倍にも達したと言います。植物学上の調査においては、各調査地における有用な植物の数は、50種から80種に登るとの結論があります。さらには、コーヒー農園には600種類以上の節足動物、主にクモ、アリ、チョウ、ミツバチ、同翅目(セミの仲間)が生息しています。また、甲虫も棲息しています。

また、草木の種類の豊かさも特徴的です。この豊かさがあるために、節足動物は住処を得て、森の中で生きています。

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森林農法のコーヒー農園における生物の多様性は、有機栽培ともつながっています。そこでは生態系がバランスを保っているため、害虫の異常発生といったことはほぼ起きないのです。もちろん、害虫も多様性の中で生きているのですが、それを食べる益虫もたくさん生きているのです。


第10章2

害虫の天敵となる大食漢の益虫といえば、クモとアリが代表的です。この2種類の虫は、生態系において重要な役割を果たしていると言われます。害虫が大発生する原因は、その農園を構成する動植物の多様性が乏しくなることと直接的な関係があると多くの研究が結論付けています。

また、木陰の下の伝統的コーヒー農園は、渡り鳥や地域固有の多くの鳥類の数も多く確認されているのです。コーヒー農園の鳥類の総数は、雲霧林(100種から110種)、マツやナラの茂る湿潤な森林(80種から100種)、ナラの森(60種)、マツの森(50種)などを大きく上回ります。鳥類の豊富さは、メキシコのコーヒー農園にある「自然環境の色彩」とも表現されています。

これらの数字で表されている生物多様性は、コーヒー農園があらゆる生物の居住環境を提供していることで保たれています。標高の高低の違いにより、独特の鳥類の分布を生み出していることも付け加えておきましょう。

この点で、森林農法のコーヒーは一般的に言われている「バードフレンドリーコーヒー」の要素も兼ね備えているのです。

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