2005年09月13日

アルバロ・アギラル講演録
~トセパン・ティタタニスケ協同組合の持続可能な取り組み~

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 こんにちは。今回このような場を設けてくださって、ありがとうございます。

 私たちアルバロ・アギラルとパトリシア・モグエルは、皆様に私たちの活動を紹介するためにメキシコから来ました。私たちは、今あるものとは違うオルタナティブなかたちで、この社会の発展を推進していこうという取り組みを行っています。そのオルタナティブなかたちとして、「団結」ということがあげられます。これは、個人主義とは対極のところにある考え方です。ここでは、知識、技術を活かすということが、人びとへより良いサービス、そして空間をもたらすものであって、個人に利益が与えられるものではありません。そして、このような知識、技術というのを用いて環境保護が行われており、次の世代、さらにはその次の世代へと環境が守られていくことになります。また生産活動も、汚染または自然破壊をもたらさないかたちで行われます。

 今日は、このオルタナティブな発展について、メキシコの例を用いて皆様に一つ一つご紹介したいと考えて思います。私たちが活動を行っている組合は、トセパン・ティタタニスケという名前で、メキシコのプエブラ州北部のシエラノルテというところにあり、組合員は皆、ナワット族という先住民です。

 トセパン組合が設立されたのは、今から約28年前です。組合名「トセパン」は、「団結すること。それが、皆が幸せになる道である」という意味を含んでいます。現在トセパン組合には、小規模農家、約5,000世帯が参加しています。この5,000世帯というのは、だいたい6つの地域に分かれて住んでいます。

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トセパン組合のロゴマーク(団結を示している)

 この中央にありますトセパンのシンボルマークなんですけども、握りこぶしは「団結」を意味します。そして二つの農具は、マチェテと言われる山刀と鍬です。

 私たちは、活動を多様化させ、さまざまなかたちでプロジェクトを行っています。他のどの組織でも見られるように、組織の一番上には、組合員による理事会が設けられています。そして、代表会議会の下に、助言を与えるアドバイザーたちがグループをつくるところがあります。そしてその下に、それぞれ異なる活動をしているグループがあります。そして、ここでは持続可能な農法が行われています。化学肥料などは使わず、有機栽培で作物が栽培されています。その代表的な作物の中にコーヒーがあり、その栽培方法はアグロフォレストリーシステムと呼ばれています。そして、コーヒーの他にオールスパイスという香辛料も栽培しており、これは輸出作物として外国へも出荷されています。

 メキシコでは、女性は全人口の約51%を占めています。私たちの組合では、女性の活動グループがあり、独自の生産活動を行っています。そして、エコツーリズム、観光も行われており、私たちの活動を知ってもらうためにエコツアーを実践しています。また、組合員自身が持続可能な材質や設計がなされた家屋を建設し、そこに住んでいます。こうした活動を行っていくためには資金が必要になりますが、私たちは融資などを行う独自の金融機関も設けています。

 この他、私たちの中心的な活動として、研修センターを設置し、そこでいろいろな知識や体験を積むという活動を行っています。

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コーヒー栽培の過程を示した図
(左上から右に向かって栽培・加工手順が示してある)

 これは、アグロフォレストリーシステムによるコーヒー栽培を表したものです。中央にコーヒー栽培地がありますが、周辺に他の樹木も植えられています。図全体では、コーヒーの収穫、さらにその利用方法などを紹介しています。一般的には、収穫の次に消費があります。しかし消費と言っても、コーヒーの場合はさまざまな加工が必要となってきます。そして、右の方の図ですが、これは、コーヒーの加工から焙煎を経て、どのように食卓に届くかということが右から左へ、中央に沿って紹介してあります。この図から、いかにして現地ですべての加工・処理がされているのかということがわかるかと思います。

 皆さんは多くのコーヒー消費者のお一人だと思うんですけども、このような流れがあるということ、このような過程があるということを、コーヒーを飲むときに考えていただきたいと思っております。しかし、やはり一般的にはコーヒーの裏側にどのような手が加えられているか、どのような作業があるか知られていないと思います。

 コーヒーの栽培においては、栽培に対する労働だけではなく、それにまつわる周辺の環境、例えば森からさまざまなコーヒー以外の作物が生み出されています。

 アグロフォレストリーの場合、コーヒー以外にも、さまざまな大きさの木や収穫をもたらしてくれる果樹、作物が植えられ、多様な植生が共存しています。ここから多様な産物が得られるのです。また、この森は、二酸化炭素や温暖化に大きな影響を与えるガスの吸収を行っています。この他、鳥を始め、さまざまな動物などが住んでいます。また一方で、資源の活用において、水、そして土壌の活用においても均衡が崩れないよう心がけています。これらを環境の恩恵、そしてこの機能というのを一般に環境サービスと呼んでいます。

 森からは、商業作物としてコーヒーだけが生み出されるわけではありません。そのコーヒー以外にも、さまざまな果物、フルーツなどが生産されていまして、地域の市場だけではなく、その他の外国の市場にももたらされています。また、ハチミツも収穫できますが、この一帯の蜜蜂は一般的なヨーロッパ種ではなく、メキシコの原生種になります。蝶と同様に、受粉に役立っています。そして薬草や鑑賞用の多くの植物も見られます。

 こうしたことから、この森というのは生物多様性に富んでおり、私たちは非常に有用な森と考えております。ここで言う「有用」とは、この地域に住む人々だけではなくて、ここから生まれてくる作物を消費する皆さまにとっても有用な森という意味です。

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アグロフォレストリーの森がもらたらす多様な産物
(コーヒー、オールスパイス、シナモン、蜂蜜、バナナなど)

 この図の中央にアグロフォレストリーの森が描かれていますが、この一番下の小さい木、これがコーヒーの木になります。そして中央上の写真がコーヒーの実です。同じコーヒー畑にはさまざまな木が植えられていて、中には20メートルほどの高さになるオールスパイス(香辛料)の木などもあります。コーヒーやオールスパイスの栽培が、組合員たちに収入をもたらす商品作物になります。

 その他にも、マカダミアナッツを始め、シナモンなどさまざまな商品作物が栽培されています。もちろん市場に出すこともできる作物もありますし、自給用にも役立っているものもあります。このようなかたちで、私たちの森は生物多様性に富んでいて、私たちは「家族の生活にも役立つ森」というふうに表現しています。

 私たちの森で栽培される輸出作物は、コーヒーとオールスパイスの二つです。原材料として市場などに下ろすだけではなくて、最終的に加工して、最終消費者に届けるというかたちも取っています。

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(左) トセパンコーヒーのラベル
(右) トセパンの生産物のラベルには、すべてこのイラストが使われている

 コーヒーのパッケージは、女性が花束を抱えている様子をイラストにしたものです。これはこの地域に住む先住民の姿で、抱えている花束の花というも、この地域の在来種です。この図は、この地域の文化的な活動を結びつけていこうということを表しています。また私たちのコーヒーは、農薬や化学肥料などは一切使わず、の自然環境を守り、生活環境を守るという意味合いを含んでいます。この他にも、メキシコの原生の蜜蜂をつかって、ハチミツの生産もされています。栄養素に富んでおり、医薬品や化粧品などにも役立てられています。 こうした生物多様性の豊かな森で、これを守りながら生産者をいかに保護するかということが必要になってきます。

 また私たちは、コーヒー栽培において出た廃棄物、そして、それらを利用してできた商品になります。以前は、コーヒー栽培地において、コーヒーの果肉などはそれを除去した後、川などに捨てられ、それが汚染源になっていたという現状がありました。私たちのトセパンでは、その廃棄物を活かして、それをもうひとつ別のかたち、つまり資源として活かしています。これを通し、私たちはキノコ、有機肥料、アルコール、そして油などを生産しています。

 トセパンではさまざまなプロジェクトを行っていますが、その一つとしてまず苗床をつくる活動があります。私たちには、一年間で百万本の苗木を栽培する能力があります。この苗床で生まれる木々は、異なる方法で用いられています。一つはコーヒーの木々を新しいものに更新していくということ、二つめは、栽培物一般を多様化させるために、さまざまな苗木を植えています。そして、もうひとつが、時を経るにつれて原生種がなくなっているのですが、それを再生するためにも使われています。もちろん、この原生種を再生させるという事業は大切なことですが、森にやって来る鳥たちにとっても、食料として大切なものになっています。

 そして、もう一つのプロジェクトとして、女性の活動を挙げてみたいと思います。持続可能な活動というのを実現させるために、女性の参加というものに重みを置いています。男性というのは一般的に、コーヒー畑など土地を耕して生活をしています。そしてその畑から生まれてきた産物を家庭の収入源にしています。このトセパンという組織は、やはり女性も収入源というのをもって家族の生活の足しになるように活動を広げていけるように心がけています。今現在、20のグループがあり、それぞれ生産的な活動を行っています。グループ全体で480人の女性が参加しています。さまざまな研修活動を経て、家族に収入をもたらしています。

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環境教育の研修センター「カルタイクスペタニロヤン」

 私たちは、この生産活動を行う中で、研修活動または知識の向上を大切にしています。その目的のために、研修センターを設けています。このセンターの名前は「カルタイクスペタニロヤン」と言い、ナワット語で「魂が開かれる場所、精神を高めるところ」という意味を持っています。この研修施設なんですけども、生産活動ができるそれぞれの場所を備えています。また、研修活動を推進するために、小さな図書館やコンピュータールームを設けています。

 この研修施設、研修活動を通じ、活動というのが実質的に持続可能になることを考えています。この研修センターの目的は、能力を高め、またはさまざまなプロジェクトを実施するための能力や知識づけというのが行われています。この研修事業が進むことで、この地域のおいて持続可能な活動が行われています。そしてこれらの中に研修施設や宿泊施設が設けられています研修施設では、そこで食べられる食料も作られています。また一方で、施設内ではさまざまなサービスが提供されており、宿泊施設などを設け、組合員が来た時には宿泊できるようにしています。

 持続可能、そして生活環境の保護について話をしておりますけども、この中で注目すべきは環境教育というものの実践です。環境教育を通じて、先住民このナワット族の文化・知識が継承されていくようにしています。その環境教育の実践の場として、コーヒー畑の中に小さなスペースを設けています。

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コーヒー畑での環境教育

 組合員の多くが仕事の場としているところで環境教育を行うということが、実際に生物多様性というものを間近に見る機会にもなります。実際このコーヒーが栽培される畑では、コーヒー以外にも約150種の植物が栽培、または生育しています。私たちの地域全体では、コーヒーが栽培されている地域では、約200種類の鳥類が確認されています。さまざまな植物の利用方法、そして多くの鳥類が棲む場所というのを忘れないようにするために、その研修の場としてコーヒー畑の真ん中に建物をつくりました。この地域では、実際の森が教育のために役立てられています。

 次に、エコツーリズムについて簡単に説明したいと思います。エコツーリズムは、環境ばかりでなく、文化の多様性を保護する役割も果たしています。観光客にとって環境教育の場であるということで、非常に重要な役割を果たしています。森があったり、文化遺産があったり、先住民がどのように生活しているかということを知ることができます。

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環境教育センターの建物内
(地元の竹など出来るだけ自然素材を利用して建てられている)

 エコツーリズムの宿泊施設や研修施設には、建材として主に竹を使っていて、窓枠、柱すべてが作られています。この地域にはさまざまな文化遺産があり、非常に観光資源には恵まれた場所となっています。

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エコツアーでの訪問場所
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エコツアーでの訪問場所

 また、エコツアーを通じてたくさんの方にここを訪れていただくことで、コーヒーを始め、この周辺地域で何が起きているのかということを知ってもらいたいという目的も持っています。そして、このエコツアーを通じて、コーヒーの栽培とその加工にはどのような作業が必要なのか。そういったことを私たちがお伝えすることができると思います。こうした方法で、直接、消費者の皆さんがこの地に足を運んでくれましたら、「コーヒー」というものの本来の意味が分かっていただけるかと思います。そして、このコーヒー栽培の周辺環境をご理解していただくことで、消費者の皆さんの認識や理解も高まり、これが安定した価格への動きにもつながってくると思います。

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組合内の金融機関トセパン・トミン

 これまでご紹介してきたように、私たちはさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。取り組むにあたって、やはり融資というものが必要になってきます。一般的なメキシコの銀行のことをお話しますと、やはり農村に対して融資をしてくれるという機関は見当たりません。私たちも、敢えてそのような金融機関に融資をお願いするということはしていません。やはり農村地帯というのは、金銭という面で非常に困難に直面しています。一般的な銀行というのは、集めたお金は農村に投資せず、近代的な工業の方に投資します。例えば、持続可能な活動を模索する農村の人々たちは、地域にある資源や資金を独自に活用するという考えがあります。私たちの資金は非常に少なく、活用はしていますが、困難に直面しています。そのようなことから、地域内のお金が、その地域で最大限活用されるように活動を推進しています。そこで、私たちは独自の金融機関というのを設置するに至りました。この金融機関は、組合員によって運営されています。ここで活用されるお金は、同じ組合員から集められたお金です。そしてその貯蓄は、組合員たちに融資されます。この金融機関の名前は「トセパン・トミン」と言います。

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トセパントミンのロゴマーク

ナワット語で「皆のためのお金」という意味です。

 貯蓄額を年代順に見ていくと、1998年から順に多くなっています。一方で、年を追うごとに融資額も増えていっています。2004年になると、当初の額よりもはるかに大きな貯蓄額になっています。1998年から2004年の額を見ると、その貯蓄額と融資額は10倍になっています。トセパントミンでは、よりよいサービスを提供するために3つの支店を設けています。そして、さまざまな商業活動を支援しています。融資をする際には、一般的には担保が必要ですが、トセパントミンでは必要としません。代わりに「言葉」、つまり借り手の言葉を信用して行われています。今までこの金融機関がうまれてから、現在にいたるまで、融資のこげつきというのは一切ありません。

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持続可能な家屋や居住環境を示したもの

 このイラストは、組合内の持続可能な家屋を表しています。この家屋は、暮らす人が威厳ある生活が送れる場所であると同時に、その周囲にある資源を活用したつくりになっています。まず最初に挙げられるのは、雨水の利用です。そしてもうひとつは、太陽光の利用です。太陽光パネルを利用して、太陽光を最大限、そして有効に活用しています。また、周囲にある空き地を利用して食料生産なども行っています。家や農場から出る廃棄物を利用して有機肥料もつくられています。

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巣箱ではなく、壷を利用した養蜂

 これは蜂蜜を取るための壷です。これはさきほども申し上げましたが、この蜂蜜には、医療効果や美容効果があります。これが、蜜蜂の巣がある壷なんですけども、ここからハチミツが採取されます。一般的にはハチミツは巣箱から採取されるものだとお考えだと思います。この蜂の特徴というのは、人を刺すようなこともなく、一般的な蜜蜂とは異なります。巣箱を使うことはなく、壷を使って蜂蜜を採取しています。

 コーヒー、そしてハチミツを始め、これらの産物は、フェアトレード市場において皆さまにお届けできる商品になると思います。トセパンという生産者組合が持続可能な活動というのを展開し、これらの活動を持続していくために、組合員自身による団体なんですけども、研修、知識の継承というものを専門的に行うグループがあります。このようなかたちで生産者組合自身が彼らの知識または経験というのを継承していくための活動を推進していく団体というのを設けています。このような活動を続けることで、さらに持続可能なかたちが作り上げられていっているのです。地域というのが持続可能であるためには、まず組織というのが持続可能でなくてはいけません。このような動きを、私たちはトセパンという生産者組合を通じて模索しています。

投稿者 akira : 2005年09月13日 13:40