カルロスさんとのフェアトレードが絵本になりました!

『考える絵本 しあわせ』(大月書店) 文 辻信一  絵 森雅之

 「農薬なしにコーヒーができるはずないじゃないか」と言われていた30年前のブラジルで、有機コーヒー栽培のパイオニアとして、試行錯誤を繰り返しながら無農薬栽培を成功させたジャカランダ農場のカルロスさん。そのカルロスさんとのフェアトレードが絵本になりました。

 カルロスさんは、今から7年前に75才で永眠されましたが、生前、ジャカランダ農場にはブラジル各地、中南米各国からも生産者や研究者が見学に訪れ、有機農学校の役割も果たしてきました。カルロスさんは見学者に対して、消費者と連帯することの重要性も語りかけていました。そして、フェアトレードでつながった消費者からのメッセージをうれしそうに紹介していました。

 逆に、見学者から学ぶこともありました。特に、エクアドルやメキシコの生産者や研究者と交流するなかで、森林農法(アグロフォレストリー)に興味を抱き、農場の中に植林する樹木を増やしていきました。この農法は、農場の生物多様性を豊かにしています。農場の名前に「ジャカランダ」という樹の名前を付けたように、カルロスさんは、子どもの頃から樹木が大好きでした。

 また、カルロスさんは自ら語ることは、ほとんどありませんでしたが、20代の後半から福祉活動に熱心に取り組まれ、ストリートチルドレン、一人暮らしのお年寄り、赤ん坊を抱えた少女たち、エイズの子どもたちなどの世話を続けてこられました。(1984年にサンパウロ市議会から功労賞を受賞)

 人も自然も大切にするカルロスさんが、1980年から無農薬栽培に切り替えた最大の理由は「いのちを大切にしたい」ということでした。

 農場で働くスタッフと消費者の皆さんと土中の微生物や虫や小鳥も含めたいのちを大切にしたいという思いが無農薬栽培を成功させたのです。

 フェアトレードを通じてカルロスさんと共に歩んできた十年間は、いま思い出してもファンタジーのような特別な時間でした。カルロスさんが他界されたあと、ご家族から心に沁みるお話がありました。

 「パパは、亡くなるまでの最後の十年間、フェアトレードで日本とつながった十年間が最も生き生きしていた。とても幸せな人生だった」という皆さんの言葉でした。
 カルロスさんは、多くの人を幸せにした人でした。そして、幸せにしてもらったうちの一人が私でした。

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 そんなカルロスさんと私たちのフェアトレードが絵本になりました。物語を書いてくれたのは、文化人類学者であり、環境運動家でもある辻信一さんです。 十年前、辻さんをジャカランダ農場に案内しました。カルロスさんの案内で農場を見学し、土や自然の話を聞き、食卓では、幸せについて語り合いました。

それが十年の時を経て、絵本になりました。

みなさん、ぜひ読んでみて下さい。

カルロスさんのご家族にも手渡そうと思っています。
この絵本を読みながら、忘れかけていた大事なことを思い出しました。
辻さん、素晴らしい絵本をありがとう。

ウィンドファーム 代表
中村隆市

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