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容器の環境影響度 採点

大気汚染など3倍の差 不人気リターナブル瓶が優等生
問われる消費者の意識

<朝日新聞・2000年5月16日>

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 環境への負荷の大小で各種容器の優劣を比較した研究結果がまとまった。安井至・東大生産技術研究所教授を中心とする容器間比較研究会が、ライフサイクルアセスメント(「ニュースのことば」参照)という手法を使って数量化した。ビール瓶のように何度も使用するリターナブル瓶と紙パックが優れ、金属管やペットボトル、ワンウエー瓶は負荷が大きいとの結果が出た。利便性や流通事情を最優先する中で、リターナブル瓶を減らしている暮らしのあり方が問われそうだ。


容量業界のデータ−によると、この10年間でペットボトルの生産量は11万トンから37万トンへと三倍強に増加している。一方、250万トンもあったガラス瓶は200万トンを割り込み、スチール缶は140万トンからやや下降気味だ。アルミ缶は15万トンから27万トンまで増えたものの、最近は頭打ちになっている。紙パックも20万トン前後でほぼ横ばいだ。

家庭ごみの6割は容器包装類といわれ、廃棄物行政の大きな問題になっているが、どの容器がどれほど環境に負荷を与えるかの研究は立ち遅れていた。

容器間比較研究会は、瓶メーカーや酒造会社、生協、自治体清掃部門、大学などのメンバー10人で構成され、昨年8月から検討を重ねてきた。

500ミリリットルの容器を一回使用するのに、原料の調達から製造、流通、再資源化、廃棄までに、どれだけの環境負荷が生じるかというシナリオで計算した。

同じ再資源化でも、再び容器原料に使えるかどうかで負荷は異なる。他の用途にしか使えなければ、容器の原料消費は変わらないからだ。廃棄は焼却後埋め立て、直接埋め立て、散乱などに区分し、実態に近い数字を当てはめた。

リターナブル瓶は、500使用と20回使用の二通りのケースを想定した。

環境負荷の指数となる項目としては、消費側では資源、エネルギー(電力、重油、軽油など)、水、排出側では大気汚染物質(二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物)、水質汚濁物質、廃棄物(固形、液体)を考えた。

以上の前提で比較した結果、エネルギー消費量(表T)は、アルミ缶が最も多く、スチール缶とワンウエー瓶、ペットボトルが中位で、リターナブル瓶と紙パックが少なかった。

一方、大気汚染物質の排出量(表U)は、ワンウエー瓶、ペットボトル、アルミ缶が多く、リターナブル瓶と紙パックが少なかった。このほか、水消費量はペットボトルとアルミ缶が多かった。水質汚濁物質の排出量は紙パックが突出していた。固形廃棄物の排出量は重量比でワンウエー瓶が最も多かった。

結論として、リターナブル瓶が総合的に最も環境負荷が少なかった。ワンウエー瓶に比べればおおむね3分の1以下で、繰り返し使うことの長所がはっきりした。紙パックはリターナブル瓶とほぼ同等だったが、大量の水質汚濁物質を生じる点が難点だった。

今回の研究結果は、リターナブル瓶への追い風といえるが、事態は逆に進んできた。リターナブル瓶を使う業種はビール、酒、牛乳などに限られ、そこでもアルミ缶やペットボトル、紙パックの進出が著しい。

この最大の要因は、小売業態の変化だ。自動販売機の普及と、スーパーやコンビニでの販売が増えたことが、割れにくく、軽く、陳列しやすい容器を要求した。環境への負荷がどれだけ大きいかは、ほとんど選択の基準になっていない。

回収率が低下してリターナブル瓶を断念した事例もある。あまり戻ってこなければ、リターナブル用の重い頑丈な瓶よりも、軽い瓶で使い捨てにする方が、環境負荷は小さくなる。

この点で、容器包装リサイクル法も、リターナブル瓶の足を引っ張る結果になっている。リターナブル瓶は回収コストを業者が自己負担しなければならないのに、ペットボトルやワンウエー瓶の分別収集は住民と自治体の負担だ。

今回の研究では積み残しになったが、環境負荷を総合的に考えるには一本の容器を生産して廃棄するまでにどれだけコストがかかるかの比較も不可欠だ。そのコストをだれが負担するのかを含め、業界、行政、消費者が適切な容器の使い分けを真剣に考えるべき時期にさしかかっている。

■ライフサイクルアセスメント 環境への負荷を総合評価

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、ある製品が製造されて廃棄されるまでの間にどれだけの資源やエネルギーを使い、どれだけの廃棄物を排出するかを計算し、環境へ及ぼす影響を総合的に評価しようという手法だ。

もともとは製造業で新製品を開発する際の設計思想として発展してきた。地球規模の環境汚染が問題になり始めるにつれて、行政の産業政策や環境政策の手法として重視されるようになった。国際標準化機構(ISO)でも手法の標準化作業が進められ、1997年にLCA標準規格ISO14040が定められた。

ただし、現実にはまだ課題が残されている。一つには環境負荷を積算する基本データ−が不十分な点だ。

例えば、車一台ができあがるまでには、自動車メーカーで生じる負荷だけではなく、その前の部品メーカーでの負荷、さらには部品の素材メーカーでの負荷や、原料を採掘する段階での負荷などを一つ一つ積み上げなければならないのだが、各企業や業界はそうしたデータ−を公開したがらない。

もう一つは、性質の異なる負荷項目を統一する物差しが確立されていないことだ。二酸化炭素をXトン排出することと、水質汚濁物質をYトン流すことと、廃棄物をZトン出すことでは、どれが最も負荷が大きいかは、簡単には決められない。

地球温暖化、酸性雨、水の富栄養化、生態系破壊、資源枯渇などの指標のうち、どれを重視するかの世界観にかかわってくるからだ。紙やプラスチックのリサイクルをめぐって見解が対立するのも、ここに原因の一端がある。

必要性は認められながら、試行錯誤が続いているのがLCAの現状だ。


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