アグロフォレストリーツアー2005 森のカフェへようこそ 報告

2005年6月8日、メキシコから生物学者であり、環境保護活動家でもあるパトリシア・モグエルさん、そして有機コーヒー生産者グループ「トセパン・ティタタニスケ協同組合」からアルバロ・アギラルさんが来日しました。

メキシコでは、森の中でさまざまな作物や樹木と有機コーヒーを栽培する「アグロフォレストリー(森林農法)」が多く行われています。農薬や化学肥料を使 用せず、森の自然の生態系を守りながら行うこの農法は、土や水、そしてそこに暮らすたくさんの動物たちの命を守る持続的なやり方です。また、さまざまな作 物を栽培するアグロフォレストリーにおいては、収入源を一つの作物に頼ることなく、比較的安定した経営が可能となるのです。この農法は、主に熱帯地方にお ける持続可能な農業として重要視されています。メキシコにはたくさんの先住民グループがおり、この国でのアグロフォレストリーは、伝統的にこうした先住民 の人たちによって行われてきました。

今回、来日したパトリシアさんは、メキシコにおけるアグロフォレストリー研究の第一人者で、生物多様性を守るばかりでなく、この農法が有機コーヒーを栽 培する先住民たちの文化や暮らしを守っているということを強く訴えています。また、パトリシアさんと共に来日したアルバロさんは、トセパン組合の設立当初 からの中心人物であり、アグロフォレストリーの有機コーヒー栽培を始め、非常に多様で持続可能な組合づくりを行ってきました。

来日して最初に訪問したのは熊本県熊本市にあるフェアトレードショップ「はちどりの木」。2005年5月にオープンしたばかりのこのお店で、フェアト レードや国際交流に携わっている人たちと交流した後、水俣市へ移動。水俣病患者さんたちの支援に取り組む「ガイアみなまた」、患者さんたちの 作業所でもある「ほっとはうす」を訪問し、交流を行いました。水俣病の資料館を訪れ、また患者さんたちの話を聞いた二人は、水俣病に大きな関心を抱いてい ました。特に、地元で環境運動にも熱心に取り組んでいるパトリシアさんは、この日の訪問を、自分の人生の中で特別な日になったと涙を浮かべて 話していました。この他、九州は福岡でも講演会を行ったのですが、九州各地をまわる中で彼ら二人がとても驚いていたのは、日本にたくさんの山があるという ことでした。多くの木材を東南アジアなどから輸入している国に、これほど多くの森林があるとは想像もしていなかったようです。「これだけ豊かな森林がある のに、どうして外材に頼るの?」そんな疑問から始まり、日本人が山をどう管理してきたか、そして林業の現状などを知っていくにつれ、メキシコとは全くタイ プが異なる森林の問題にとても関心を抱いていました。メキシコでは開発やプランテーション栽培によって森が失われていっています。それを、アグロフォレス トリーを守り、さらには広めていくことで守ろうとしている。一方で日本には森林が多くあるのに、経済成長や社会状況の変化から、だんだんと森に入る人が少 なくなり、管理されなく なっている。そして熱帯地域を始めとする他の国々の森を壊し、その木を輸入しています。二人は、そんな構造にはがゆさも感じたようでした。

福岡イベントのスタッフたちと
福岡イベントのスタッフたちと
講演するパトリシア
講演するパトリシアさん

京都では、主に大学生、そして市民グループの人たちへの講演を行いました。フェアトレードや開発問題など、熱心に尋ねてくる学生もいました。

SBSの学生からのインタビュー
スロービジネススクールの学生からインタビューを受けるゲスト二人

その後に訪問した名古屋では、フェアトレードショップ「風”s」を見学。オーナーの土井さんを始め、スロービジネススクールの学生さんや市民活動をして いる大学院生の方々が企画してくださったイベントで話をしました。会場いっぱいの参加者があり、パトリシアさんたちの話に興味深く聞き入っていました。

アルバロの講演
講演するアルバロさん
聴衆
話に聞き入る参加者たち(名古屋会場)
フェアトレードショップ風sの前で
フェアトレードショップ風”sの前で、オーナーの土井さんと

この他、名古屋ではスロービジネススクールの学生さんたちとの交流会、屋上緑化や風力発電、また雨水利用などを行っているエコビルディングを見学するなど、中身の濃い滞在となりました。

旅の最後となる関東地域では、大学での意見交換、ナマケモノ倶楽部世話人の辻信一さんとともに「BeGoodCafe丸の内」イベントへトークゲストとして出演、カフェスローでのトークライブなど、さまざまなイベントに参加しました。

辻さんとBeGoodCafeに出演
辻信一さんとBeGood Cafeにゲスト出演

多くの日本人にとっては聞き慣れない「アグロフォレストリー(森林農法)」という自然や文化を守る農法。パトリシアさんは、今回の滞在で、さまざまな人 たちにこのアグロフォレストリーをわかりやすく紹介し、そしてアルバロさんは、その具体例としてトセパン組合の素晴らしい取り組みを伝えることができたと 思います。その中で日本に暮らす私たちができること。それは、森や環境、そして人びとの文化や伝統、生き方を守ろうと闘っているトセパンの人たちのコー ヒーを支援すること。日常におけるちょっとした物選びを見つめ直し、フェアトレードで輸入されたコーヒーを選ぶこと。そして、メキシコの生産者や豊かな大 地に思いを馳せてみること。それが、彼らが取り組む持続可能な活動を支える大きな力になるのです。メキシコ(途上国)の生産者と、日本に暮らす私たち消費 者とのつながりと連帯感。パトリシアさんとアルバロさんの来日によって、それが少しずつ動き始めました。

ツアーの全日程を終えた6月23日。この動きが大きく広がっていくことを願いながら、二人はメキシコへと帰国していきました。

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