メキシココーヒー物語 第4話 グローバリゼーションと闘う メキシコの現状とフェアトレード

熱帯地方に位置する多くのコーヒー生産国は、途上国と呼ばれる国々である。コーヒーはここ10年間、一般市場価格においては下落傾向が見られてい る。こうした経済危機の中、森林は伐採され、若者たちは仕事を失って都市部などに働きに出、村々には、年老いた人たちのみが暮らし続けるという厳しい状況 が強いられている。この経済的な危機は、メキシコを始めとするコーヒーの生産国に対して大きな影響を与えている。


荒れていく農地

一方で、消費者の方を見てみると、数で言えば、この地球上の人口の約40%の人がコーヒーを消費すると考えられている。その中でも、より多くのコーヒー を消費しているのがヨーロッパ、そしてアメリカである。しかし残念なことに、このコーヒーの約80%がアメリカやヨーロッパの企業によって流通させられて いて、約8つの企業の手によって支配されている、つまり、価格がコントロールされている。一般的に市場では、需要と供給によって価格は上下しているが、大 企業が自由市場という中で自由に振る舞い、在庫の管理、流通の量などを調整して価格を管理しているというのが現状となっている。

他のラテンアメリカ諸国と同じように、メキシコでもこの30年間、経済のグローバル化という現象が進んできた。自由市場が経済の中に持ち込まれると、北と南の間で競争をしなくてはならなくなる。しかし、これは、非常に不平等な市場での競争になってくる。

メキシコは、アメリカやカナダと自由貿易協定を結んだために、国家が、農民たちに自由に補助金などを提供することができなくなってきている。一方で、北の国々というのは、自由に補助金を出しているという非常に不公平で不平等な状況が展開されているのである。

こうした状況の中、メキシコでは、1994年に、サパティスタ解放戦線というゲリラ活動の蜂起があった。これは、自由主義が北から持ち込まれることに対 しての抵抗活動と考えられている。一方で、この厳しい現状を前にして、生産者たちで組織作りを行っていこうという動きが出始め、その中で、北とは直接競争 できない分野で競争していこうという流れになっている。

その一つの例が、メキシコ・プエブラ州にあるトセパン・ティタタニスケ協同組合である。実際、トセパンに限らず、生産者組織は北の国々からの多くの助け を得て、商品をフェアトレード市場で販売し、利益をあげるようになってきている。このようなかたちで北との連携を築くことで、持続可能な生産というのを南 北で築いていこうという動きが生まれているのである。

サパティスタ民族解放戦線.jpg
サパティスタ民族解放戦線

メキシコは、有機栽培のコーヒーにおいては世界第一位の生産量を誇る国であり、生産者組織の数も一番多いと言われている。フェアトレードのように、一般 の市場とは異なる市場の中で、生産者が認証を得えようとする動きがある。それは、「木陰で生まれたコーヒー」、「鳥類にやさしいコーヒー」といったように さまざまである。そして、最終的には「持続可能なコーヒー」という名がつけられ、広まっていくことになる。認証印というのは環境、または生産を助長するだ けではなく、フェアトレードの市場にくい込むためにも役立っている。そして消費国である日本は、フェアトレードのコーヒーを選ぶことで、メキシコを始めと する第三世界の小さな生産者組織の闘いを支えることにつながるのである。

※サパティスタ民族解放戦線:メキシコ南部に位置するチアパス州において活動する先住民の武装組織。北米自由貿易協定(NAFTA)が発行した1994年にチアパス州にて蜂起。

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