放射能汚染ガレキに関する情報

震災ガレキ「絆」に対抗するための科学的・法律的基礎知識
(2012年03月04日 院長の独り言)から抜粋

陸前高田の戸羽太市長は、『陸前高田市内にがれき処理専門のプラントを作れば、自分たちの判断で今の何倍ものスピードで処理ができると考え、そのことを県に相談したら、門前払いのような形で断られました。』と話し、

伊達勝身・岩泉町長『現場からは納得できないことが多々ある。がれき処理もそうだ。あと2年で片付けるという政府の公約が危ぶまれているというが、無理して早く片付けなくてはいけないんだろうか。山にしておいて10年、20年かけて片付けた方が地元に金が落ち、雇用も発生する。
 もともと使ってない土地がいっぱいあり、処理されなくても困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどこにあるのか。

ガレキの総量は 2252万トン うち400万トンを県外で処理しなければならないそうです。(がれき全体の割合からすると20%以下。なぜ、残りのこれっぽっちを東北では処理できないと決めつけるのか、私にはよくわかりません)
阪神大震災のガレキの総量は、約2000万トン。あの兵庫県でさえ、広域処理をせずに全て処理が終わっています。

全文


東日本大震災により発生したがれきの受入れについてから抜粋
(2012年3月23日 札幌市長の見解 札幌市ホームページ)

震災から一年後となる、今年の3月11日前後、テレビの画面に繰り返し映し出されたのは、膨大ながれきの山と、その前に呆然と立ちすくむ被災者の姿でした。これを視聴した多くの人々の心には、「何とか自分達の町でもこのがれき処理を引き受けて早期処理に協力できないか」という、同胞としての優しい思いと共感が生まれたものと思います。

政府は、岩手県・宮城県の震災がれき約2,045万トンのうち、20%に相当する約401万トンを被災地以外の広域で処理するという方針を出し、今、その受入れの是非に関する各自治体の判断が、連日のように新聞紙上等をにぎわせています。

私は、これまで、「放射性物質が付着しないがれきについては、当然のことながら受け入れに協力をする。しかし、放射性物質で汚染され安全性を確認できないがれきについては、受入れはできない。」と、市長としての考えを述べさせていただきました。

『放射性廃棄物は、基本的には拡散させない』ことが原則というべきで、不幸にして汚染された場合には、なるべくその近くに抑え込み、国の責任において、市民の生活環境に放射性物質が漏れ出ないよう、集中的かつ長期間の管理を継続することが必要であると私は考えています。非常時であっても、国民の健康と生活環境そして日本の未来を守り、国内外からの信頼を得るためには、その基本を守ることが重要だと思います。

国は、震災がれきの80%を被災地内で処理し、残りの20%のがれきを広域で処理することとし、今後2年間での処理完了を目指しています。これに対し、「現地に仮設処理施設を設置し精力的に焼却処理することで、全量がれき処理が可能であり、また輸送コストもかからず、被災地における雇用確保のためにも良い」という意見も、被災県から述べられ始めています。

また放射性物質についてですが、震災以前は「放射性セシウム濃度が、廃棄物1kgあたり100ベクレル以下であれば放射性物質として扱わなくてもよいレベル」だとされてきました。しかし現在では、「焼却後8,000ベクレル/kg以下であれば埋立て可能な基準」だとされています。「この数値は果たして、安全性の確証が得られるのか」というのが、多くの市民が抱く素朴な疑問です。

全国、幾つかの自治体で、独自基準を設けて引き受ける事例が報道され始めていますが、その独自基準についても本当に安全なのか、科学的根拠を示すことはできてはいないようです。

低レベルの放射線被ばくによる健康被害は、人体の外部から放射線を浴びる場合だけではなく、長期間にわたり放射性物質を管理する経過の中で、人体の内部に取り入れられる可能性のある内部被ばくをも想定しなければならないといわれています。

チェルノブイリで放射線障害を受けた子ども達の治療活動にあたった日本人医師(長野県松本市長など)をはじめ、多くの学者がこの内部被ばくの深刻さを語っています。放射性物質は核種によっても違いますが、概ね人間の寿命より、はるかに長い時間放射能を持ち続けるという性質があります。そして誰にも「確定的に絶対安全だとは言えない」というのが現状だと思います。

札幌市の各清掃工場では、一般ごみ焼却後の灰からの放射性物質の濃度は、不検出あるいは1キログラム当たり13~18ベクレルという極めて低い数値しか出ておりません。私たちの住む北海道は日本有数の食糧庫であり、これから先も日本中に安全でおいしい食糧を供給し続けていかなくてはなりません。そしてそれが私たち道民にできる最大の貢献であり支援でもあると考えます。

またこのところ、震災がれきの受け入れについて、電話やファクス、電子メールなどで札幌市民はもとより、道内外の多くの方々から、賛同・批判それぞれの声をお寄せいただき、厳しい批判も多数拝見しています。ご意見をお寄せいただいた方々に感謝を申し上げます。これらのご意見を踏まえ、何度も自問自答を繰り返しながら、私は、「市長として判断する際に、最も大事にすべきこと、それは市民の健康と安全な生活の場を保全することだ」という、いわば「原点」にたどり着きました。

私自身が不安を払拭できないでいるこの問題について、市民に受入れをお願いすることはできません。
市民にとって「絶対に安全」であることが担保されるまで、引き続き慎重に検討していきたいと思っています。

2012年3月23日
札幌市長 上田文雄


がれき受け入れ提言に対する徳島県の回答から抜粋
(2012-03-15 徳島県 目安箱)
60歳 男性
タイトル:放射線が怖い? いいえ本当に怖いのは無知から来る恐怖

 東北がんばれ!!それってただ言葉だけだったのか?東北の瓦礫は今だ5%しか処理されていない。東京、山形県を除く日本全国の道府県そして市民が瓦礫搬入を拒んでいるからだ。ただ放射能が怖いと言う無知から来る身勝手な言い分で、マスコミの垂れ流した風評を真に受けて、自分から勉強もせず大きな声で醜い感情を露わにして反対している人々よ、恥を知れ!!
 徳島県の市民は、自分だけ良ければいいって言う人間ばっかりなのか。声を大にして正義を叫ぶ人間はいないのか? 情け無い君たち東京を見習え。

 【環境整備課からの回答】から抜粋
 貴重なご意見ありがとうございます。せっかくの機会でございますので、徳島県としての見解を述べさせていただきます。
 
 徳島県や県内のいくつかの市町村は,協力できる部分は協力したいという思いで,国に対し協力する姿勢を表明しておりました。しかしながら,現行の法体制で想定していなかった放射能を帯びた震災がれきも発生していることから,その処理について,国においては1kgあたり8000ベクレルまでは全国において埋立処分できるといたしました。
(なお,徳島県においては,放射能を帯びた震災がれきは,国の責任で,国において処理すべきであると政策提言しております。)

 放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきました。(クリアランス制度)

 ところが、国においては、東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。
(したがって、現在、原子力発電所の事業所内から出た廃棄物は、100ベクレルを超えれば、低レベル放射性廃棄物処分場で厳格に管理されているのに、事業所の外では、8000ベクレルまで、東京都をはじめとする東日本では埋立処分されております。

 ひとつ、お考えいただきたいのは、この8000ベクレルという水準は国際的には低レベル放射性廃棄物として、厳格に管理されているということです。

 例えばフランスやドイツでは、低レベル放射性廃棄物処分場は、国内に1カ所だけであり、しかも鉱山の跡地など、放射性セシウム等が水に溶出して外部にでないように、地下水と接触しないように、注意深く保管されています

 また、群馬県伊勢崎市の処分場では1キロ当たり1800ベクレルという国の基準より、大幅に低い焼却灰を埋め立てていたにもかかわらず、大雨により放射性セシウムが水に溶け出し、排水基準を超えたという報道がございました。

 徳島県としては、県民の安心・安全を何より重視しなければならないことから、一度、生活環境上に流出すれば、大きな影響のある放射性物質を含むがれきについて、十分な検討もなく受け入れることは難しいと考えております。


ドイツ放射線防護協会によるフクシマ事故に関する報道発表から抜粋
(2011年11月27日 Dr. セバスティアン・プフルークバイル)

放射線防護においては、特定の措置を取らないで済ませたいが為に、あらゆる種類の汚染された食品やゴミを汚染されていないものと混ぜて「安全である」として通用させることを禁止する国際的な合意がある。日本の官庁は現時点において、食品とガレキにおいて、この希釈禁止に抵触している。


放射性汚染物質対処特措法施行に当たっての会長声明から抜粋
(2011年9月20日 日本弁護士連合会)

「原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」が、本年8月30日公布され、一部を除いて同日施行された。

当連合会は、去る7月29日、「放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策についての意見書」において、放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策について総合的な立法をするよう提言したが、今後、特措法に基づいて放射性廃棄物を処理するに当たり、現状における次の問題点を改め、予防原則に則って、徹底した安全対策をとるよう求めるものである。

1 放射性廃棄物の埋立て処分については、従前どおり放射性セシウムが100ベクレル/kg以上であれば放射性廃棄物として厳重に保管すること。また、焼却処理については、焼却施設の能力・性能の適切な試験・検証を行うこと。

政府は、本年6月、放射性廃棄物について、焼却が可能なものは焼却して減量した上で、汚泥や焼却灰等に含まれる放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kg以下のものについては、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)における埋立て処理(最終処分)とすることを認めていたが、さらに環境省は、8月31日、「8000ベクレル/kgを超え、10万ベクレル/kg以下の焼却灰等の処分方法に関する方針」を定め、8000ベクレル/kgを超え、10万ベクレル/kg以下の焼却灰等についても、一定の条件の下で一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)において埋立て処理(最終処分)することを認めた。

しかし、上記意見書記載のとおり、福島第一原子力発電所の事故前には、セシウム137が100ベクレル/kg以上であれば放射性廃棄物として低レベル放射性廃棄物処理施設で長期間、厳重に保管することが求められていた。特に、8000ベクレル/kgを超える焼却灰等については、その移動・保管の際に一般公衆の被曝線量限度である1mSv/年を超えるおそれがあり、これらを特に厳重な保管をすることなく通常の埋立て処理することは、労務作業者の被曝のみならず、周辺住民の被曝をももたらすおそれがあるから、到底許されることではない。

また、放射性廃棄物を減量するために焼却するとしても、現存する焼却施設は放射性廃棄物を焼却した場合に完全に放射性物質がフィルター等によって捕捉されるかどうか事前に十分に検討も調査もなされていないのであるから、焼却施設の能力・性能について、適切な試験・検証をし、公開と参加の原則に則って、住民の関与の下に具体的な焼却の方針を定めるべきである。拙速な処理によって放射能による環境汚染を拡散させることは回避すべきである。

政府は、従前の安全基準に則って、上記方針を直ちに改め、焼却施設の能力・性能について適切な試験・検証を至急実施するとともに、少なくともセシウム137が100ベクレル/kg以上であれば、放射性廃棄物として、通常の埋立て処理ではなく、特に厳重な処理を定めるべきである。

2 放射性廃棄物の広域処理についても、上記の基準に従い見直すべきである。

環境省は、8月11日に「広域処理の推進に係るガイドライン」を定め、広域処理の実施に当たっては、受入側にて問題なく埋立て処理ができるよう、当面の間は、受入側での災害廃棄物の焼却処理により生じる焼却灰の放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kg以下となるよう配慮することを求めている。また、跡地の利用が制限され、居住等の用途に用いられる可能性がない場合にあっては、焼却灰を他の廃棄物と物理的に分けることまで必要としないと通知している。

しかし、上記の従前の安全基準(放射性セシウム100ベクレル/kg)をはるかに上回るこの基準による処理では、本来であれば今回の事故による放射性物質の影響をほとんど受けなかった地域においても、放射能による環境汚染を被るおそれがある。

また、8000ベクレル/kgの放射性セシウム137に汚染された廃棄物が100ベクレル/kg未満となり、通常の廃棄物となるまでには、約200年を要するのであるから、その間、跡地の利用を制限し、居住等の用途に用いられる可能性を完全に排除することを担保する措置は、現実には採り得るものではない。

したがって、政府は、やはり従前の安全基準に則って、広域処理の実施について慎重に見直しをすべきであり、また、放射性廃棄物は、必ず他の廃棄物と物理的に分け、警告表示をした上で流出・飛散を防止すべきである。

3 特措法は適宜見直しを図るとともに、新法制定に向けた検討を開始すべきである。

放射性廃棄物は、通常の廃棄物と比較すると、極めて長期間にわたって特に厳重な保管を必要とするものであり、現行の廃棄物処理法の枠組みの中で処理することには無理がある。

附則については、政府は、特措法施行後3年を経過した時点で、特措法の施行状況を検討すると定めているが、放射性廃棄物の処理に係る科学的知見は今後、急ピッチで増進することが確実であるから、特措法の施行については適宜見直しを図るべきであり、また、廃棄物処理法とは独立した、放射性廃棄物の処理に係る新法の制定に向けた検討を至急開始すべきである。

2011年(平成23年)9月20日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児


環境ジャーリストの井部正之さんの講演会資料
(2012年2月4日 講演資料)
 

紀藤正樹弁護士の瓦礫問題に関する連続ツイートが鋭い!
(小出裕章さんのお話を聴く会 スタッフブログ)


こちら特報部「がれき、復興足かせ」疑問 広域処理は問題の山
(2012年2月15日 東京新聞)

環境総合研・池田副所長に聞く
住宅再建・原発補償が優先、現地焼却すれば雇用も 
仙台は「自己完結」 木材燃料化、リサイクル促進を

池田氏
「がれきは津波被害を受けた沿岸部に積まれるケースが多いが、そこに街を再建
するかはまだ決まっていない。高台移転には沿岸部のがれきは全く障害にならな
い。がれきが復興の妨げになっているかような論調は、国民に情緒的な圧力を加
えているだけだ」

がれき搬出から受け入れまでに複数回放射線量を測定するが、いずれもサンプル
検査。これについて・・・
       ↓
環境省(適正処理・不法投棄対策室)「サンプルを採取しなかった部分で、放射
線量が高いところがないとは言えない」

池田氏「がれきを全部測ることが出来ないのは分かるが、公表されているデータ
ではがれきのボリューム、採取方法、なぜサンプルが全体の線量を代表できるの
かの根拠などが不明だ。」

焼却炉の排ガス測定もサンプル測定。
池田氏「四時間程度採取した排ガスを測定する方法ではサンプル量が少なすぎる
のではないか?」

焼却灰の埋め立てにも首をかしげる。

池田氏「管理型の浸出水処理施設ではセシウムは除去できない。どうしても埋め
立てるのであれば、コンクリート製の仕切りで厳重に管理する『遮蔽型最終処分
場』で保管するしかない」

津波の影響にも警鐘を鳴らす。

池田氏「津波によって流されたがれきは、油類や農薬類などの有害物質を吸収し
ている。日本の焼却炉の排ガス規制は甘い。重金属などは野放しだ。こうした未
規制の物質が拡散する恐れがある」

池田氏「経済的妥当性も検討されていない。」「放射性レベルが低いというので
あれば、がれき処理専用の仮設焼却炉を現地に作って処理するのが最も効率的だ。
雇用も生まれる。高い輸送費をかけて西日本まで持って行くのは、ばかげている。」

社会的側面について

広域処理にめぐっては、被災地と被災地以外で”対立構図”ができつつある。

池田氏「被災地の人たちは、普段の生活ではがれきのことをあまり気に掛けてい
なくても、全国で『受け入れる、受け入れない』という騒ぎになれば、反対する
住民への不信感が募るだろう。受け入れを迫られる住民たちも、本当は被災地を
サポートしたいのに信頼できる情報もない中で心の余裕を失う。こうした対立構
図を作っているのは国だ」

「『広域処理』ありきの進め方だ。環境省は自治体や国民を蚊帳の外に置いたま
ま、一方的にものごとを決めている。とても正当な手続きとは言えない」

・・・・では、どうするか。

がれき総量は、宮城県が約1569万t 岩手県が約476万t。 だが、実際に広域
処理される量はずっと少ない。宮城が344万t、岩手が57万t。(仙台市は独自
処理)

提言

池田氏「それぞれの事情に応じて選択できる多様な代替案を早急に検討すべきだ。
広域処理する場合でも、輸送距離の短い範囲でしっかりとした施設を持つところ
に限定する。その間にリサイクルを促進したり、専用の仮設焼却炉を増設したり
することが考えられる」


「瓦礫について心配されている皆様へ 原理・原則6つ、計画的な埋設を」
(2012年3月19日 ちきゅう座)

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★1.瓦礫について心配されている皆様へ
   原理・原則6つ、計画的な埋設を
     (たんぽぽ舎 山崎久隆)
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 日本各地で瓦礫を受け入れる、受け入れないの議論が巻き起こっています。といっても、行政側が受け入れを決めると、ほとんどの場合そのまま規定方針として通っているようです。議会や住民への説明も行われていますが、住民の意思を問うているというよりは、受け入れの下地作りといった感を否めません。

 いくつもの質問がたんぽぽ舎にも寄せられております。しかし「たんぽぽ舎統一見解」というものは作っておりません。今後も作ることはないと思われます。原発への賛否とは問題の性質が異なり、見解を一致させねばならないということでも無いように思います。
 ただし、これは私の考えなので今後も統一見解が作られないと決まったわけではありません。

 従って、これから書くことは、たんぽぽ舎の見解では無く私個人の考えという事になります。あちこちで話す機会がありますが、その都度問われることでもありますので、述べておきます。

 「原理原則」と「理由」という形で書きます。

 原則その1 「放射性物質で汚染されたものを拡散・移動してはならない」

 放射性物質は国の法律にも規定されるとおり、拡散させないこと、飛散させないことが基本です。これに従えば、瓦礫に付着したセシウム等の放射性物質も現時点で存在する地点から別の地点に移動をするべきでは無いと考えております。
 さて、実は問題はここから始まっています。
 東京都は「女川町から運ぶ瓦礫の汚染濃度は100ベクレル/キログラム(Bq/kg)以下」としております。これは「クリアランス・レベルを下回るもの」とされております。
 原子炉等規制法では、100Bq/kg以下はそもそも放射性廃棄物扱いをしなくて良いとされています。つまり、放射性廃棄物では無いという事になります。そのため、法的規制は掛からず、いわば「どうしようと行政の勝手」になり、そのため説明会は開かれていますが都内の清掃工場に次々に運ばれて焼却が始まってしまいました。
 そこで次の原則になります。

 原則2「核のゴミは燃やすな」

 広域処分の一番間違っているところは焼却することです。燃やせば必ずセシウムは環境中に出ます。焼却灰や飛灰にも残ります。これを安全に処理できるような施設はありません。なぜならば、これら全て一般の焼却工場でやることになるからです。放射性廃棄物の焼却処分を行う専用施設でもないし、核のゴミを密封するための固化、安定化処理設備が併設しているわけでも無いのです。
 清掃工場から大気中に出るセシウムはおそらく関東や東京では検出が出来ないでしょう。なぜならば、東京などは周辺環境がすでに3.11以前の倍から数百倍に汚染されてしまっているため、セシウムを検出しても直接福島から来たのか瓦礫由来なのか区別が付かないからです。区別が付かなければ問題が無いなどと言うのはもはや放射線防護の知識の無い素人考えです。放射性物質の規制は「実行可能な限り低く」無ければならないところ、既に福島からのセシウムで優に年間1mSvの実効線量を超えてしまったところが沢山あります。もはや1Bq/kgたりとも多く拡散させることなど許されません。ところが瓦礫を燃やしてしまうと、核のゴミは大気中に拡散すると共に焼却灰中に濃縮しますので、公衆被曝と清掃等労働者への被曝と、時間をおいて処分場からの流出による被曝を引き起こすことになるでしょう。ゼロになど出来ない以上、追加放出される放射性物質は、その分健康影響を「どこかの誰か」には与えるものと考えざるを得ません。
 さらに、高性能の焼却施設ならばある程度はセシウムを出さないようにすることも出来ますが、特に地方にある性能の低い工場では周辺に拡散する量も増えてしまうでしょう。
 これを少量の試験燃焼で調べても見分けることは出来ません。

 原則3「拡散させるな、内部被曝は遙かに危険」

 核のゴミが固定されていて、そこからのガンマ線照射だけが問題であれば、対処は難しくありません。現に、原発内にはそのようなゴミが何万トンと積み上げられて今も保管されています。大学の研究室にもそのような保管設備はあります。病院にも、工場にも、日本中至る所に保管されています。
 しかしこれらは決して清掃工場で燃やされません。そのようなことをしてはならないと決められています。医療用に摂取した人はその糞尿もトイレに流してはならず、燃えないゴミにして出すように指導されます。そうしていない現実があるとしても、原理原則を行政が勝手に曲げて良いわけがありません。
 ところが瓦礫セシウムだけは燃やせと言われています。せめて燃やさずにセメント固化して安定した場所に保管すれば、拡散して口に入ることは防げるのにと思います。
 内部被曝を過小評価している日本の行政は、こういうところでも原則を踏み外しています。
 そういっても、背に腹は代えられないと思う人については、せめてこういうことは言えるのではないでしょうか。

 原則4「受益者負担の原則を忘れるな」

 今回の東電福島原発事故により被災した東北地方の人たちには、セシウムを引き受けなければならないいわれなど無いとするならば、セシウムは東京など東電管内において管理すべきだと。
 例えば大阪、例えば四国、例えば九州になど持っていくのはまかり成らぬ。
 東電管内において安定化処理したセシウムを、東電の敷地や国有地で、周辺に住民が住んでいないような地域を選んで積み重ねるとするならば、その考え方にまで反対はできないかもしれません。しかし九州だの北海道だの、せっかく放射性物質で汚染されていないところにわざわざ持って行って汚染するなど、愚の骨頂です。
 まずそんなことをしたら、諸外国が未だに続けている「日本からの農産物輸入規制」は半永久的に解除されなくなるのでは無いですか。例え風評被害だと非難をしても、輸出先で売れ無ければ同じ事です。
 日本中にわざわざ放射能を拡散させる利益などあるわけがなく、全く理解できません。
 私見ですが、愛知、岐阜、富山を含む西日本はほとんど汚染が見られないかあっても桁違いに低いので、いわば「サンクチュアリ」として残すべきです。そうでないと、福島の子どもたちに「汚染されていない食料を」と言っても、日本中が汚染されてしまったらもはや届ける食料が無くなります。
 西日本の人たちは、是非「受益者負担の原則で東京で処理せよ」と主張して下さい。
 東京の土は、東部で7000Bq/kg程度、新宿でも700Bq/kg程度。つまり東京ですでに100Bq/kgを遙かに超えてしまっている。これが現実です。

 原則5「低線量被曝の影響は未知数だ」

 まとめて言えば、今までの経験で「取り返しの付かないことは止めておこう」ということにつきます。特に大気拡散させてしまえば口に入り、内部被曝を引き起こします。さらに呼吸とともに入る場合は、気道から肺にと流れます。内部被曝でも最も始末に負えない呼吸器系への吸入です。これはなかなか取れません。消化器系ならば10~70日(年齢による)で半分になります(半分は排泄されます)が、呼吸器系では残留してしまうとそのままそこで放射線を出し続けます。
 さらに体内に入るセシウムは内部被曝を引き起こしますが、この場合は相当低いから安全と言われますが、それは間違っています。チェルノブイリ原発事故の後の疫学調査でも、ウクライナ、スウェーデンでは内部被曝の影響と考えられる疾患の増加が報告されています。その時の被曝量は相当低いものが多く、今回の瓦礫焼却により大気放出される程度のセシウムであっても、影響が無いと言い切れません。
 そして、最後に付け加えます。

 原則その6「クリアランスレベルの規制は間違いだ」

 例え100Bq/kg以下であっても、セシウムに汚染されている以上、核のゴミ扱いすべき性質のものです。3.11以前の土壌環境値はどんなに高くても1Bq/kgよりも遙かに少ないと思いますから(正確な3.11前の実測データが無いので、とりあえず九州南部の熊本市の値0.378Bq/kgを参考値として考えます)これを超える、つまり1Bq/kgであってもこれはれっきとした「核のゴミ」であると思うからです。
 クリアランスレベルの導入には、これが核のゴミ拡散法だとして、以前から「断固反対」してきた立場からも、東電福島原発事故が起きたからといって未来の世代のためにも以前の原則を簡単に曲げるわけにはいきません。
 原発事故で降り積もったと断定できる汚染をクリアランスレベル以下だから核のゴミ扱いにしないとする考え方は容認できません。
 ただし、100Bq/kg以下は原子炉等規制法により核のゴミ扱いしないと決めて、2005年には残念ながら法改定されてしまっていますから、行政に同じ立場に立てというのは難しいでしょう。あくまでも原発に反対し続けてきた市民の立場から認められないと主張することになります。

 さて、ではどうしてもダメと突っ張り続けるのはどうしてかという事になります。
 せめて汚染値の少ない、数十ベクレルとかならば、安全を確保して広域処分をしても良いではないか。マスコミも徹底的に勉強不足ですから、このような論理に簡単にはまっています。いまや全マスコミが(東京新聞までが)瓦礫広域処分を急げとの論調です。言いたくは無いが、反対すれば「非国民」扱いなわけです。

 ではどうしたら良いのか。

 そもそも広域焼却処分が進まないから現地の復興が進まないなどと言うのはどう見てもおかしな理屈です。敢えて言えば「言いがかり」です。
 瓦礫の全量は約2000万トン以上、それに対して広域処分は400万トン程度、約2割です。2割の処理が進まないから瓦礫の山がそのまま、なわけがありません。8割のほうも処理は進んでいません。それから、もともと燃やせるものはそう多くはありません。ダイオキシンやPCBや重金属など、他の有害物を考えれば、焼却できないものが沢山あります。車のスクラップなど、もともと燃やせるはずがありません。ところがこれらが山積みになった絵を見せられて「広域処分は必要だ」などと放送されています。すり替えの論理です。
 瓦礫が大量発生するなど、3.11当日から分かっていたことです。その対策はそんなに奇抜なものなどないのはわかりきったことです。大きくは二つ。埋立か埋設か。
 海や沼地などを埋め立てる方法は、東京大空襲などの戦後処理で盛んに行われています。東京の高速道路の下など、たいていは元運河か掘りで、戦後瓦礫の埋め立て地になっていました。その上に高速が走っていたりします。
 しかし今頃海を大量に埋めるなど環境破壊以外の何物でも無いので不可能です。
 であれば、もう方法は一つ。計画的な埋設です。
 海岸線の土地については、特に津波被害の大きかった地区については防災用地として国が買い上げ、その場所に瓦礫をセメント固化した構造物を作り、その上を盛り土し、鉄道用地や道路用地にするというアイディアが、とっくに自治体や専門家などから出されていました。
 4月か5月にもそういう方針を地元と協議して決めて、すぐに作業に着手していれば今頃は相当程度進んでいたはずです。
 その遅れの責任を「瓦礫広域焼却処分」に押しつけるなど、到底容認できるわけがありません。
 いまからでも、そのような方法に着手すべきです。
 まず瓦礫を焼却するのであれば、その施設は地元に作り、原発にあるような放射性廃棄物を処理する能力を持つ設備を作り、ここから出るセシウムはセメント固化して東電に返すことです。
 さらに福島県内など高い汚染の瓦礫は、そのままセメント固化して原発内部の防潮堤などの基礎材に使うことです。
 こういう原理原則を実行してもなお、広域処分をせざるを得ないのならば、東電管内で焼却では無くセメント固化などの安定化処理をすべきと考えます。



米専門家、放射能汚染瓦礫の焼却問題について深刻な懸念を表明

(9月 9th 2011 Mercury)から抜粋

エネルギーコンサルテキング企業米フェアウィンズ・アソシエーツ(Fairewinds Associates)のチーフ・エンジニアを務めるアーニー・ガンダーセン(Arnie Gundersen)氏が、日本政府の姿勢について深刻な懸念を表明

(ガンダーセン氏の瓦礫焼却問題に関する発言の書き起こし)

東北日本のセシウム降下は大量です。
日本政府は、放射能汚染瓦礫を焼却許可しようとしています。キロ当たりの放射線濃度が8,000ベクレル以下ならばです。これは1kgあたり原子核崩壊数が毎秒8,000個です。日本政府はその焼却許可をしようとしています。アメリカであれば、放射性廃棄物として処分して何千年も地中に埋めなければなりません。

ところが、日本政府は8,000ベクレル以下なら焼却許可を与えるというのです。それだけでなく、もっと当惑させることがあります。放射能汚染瓦礫を他の瓦礫と混ぜることを許可しようとしています。たとえば1つのサンプルが24,000ベクレルで他の2つが未汚染ならば、全部足して3で割ると平均8,000ベクレルになり、焼却許可されます。これを行えば、深刻な問題が生じます。

まずひとつは、福島原発が放出し既に地面に落ちた放射性物質を再び空気中に拡散させることになります。故意に!福島の周辺市町村の除汚が済んだ学校周辺や校庭に、瓦礫の焼却で再びセシウムが降ってきます。別の地域の放射能の雲が、日本に災いをもたらし、瓦礫を燃やす地域は、今は汚染がない状態または少ない状態でも再汚染され線量が高くなるでしょう。

その放射能の雲は、日本だけに留まっているわけではなく、もちろん太平洋を越えて太平洋北西部にも届きます。汚染瓦礫の焼却許可は、まるで福島原発事故の再現です。地面に落ちた汚染物質をもう一度空気中に舞い上げることです。

また、地面に落ちた放射性物質が川に入り、海に流れているという福島から比較的離れた地域のデータもあります。福島原発そのものに注目が集まっている間に、実際に今は、遠くはなれた川が汚染され、海が汚染されているのです。

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