2012/01/31

穴だらけの食品放射能検査体制  4月の新基準値導入で混乱必至

穴だらけの食品放射能検査体制
4月の新基準値導入で混乱必至

(2012年1月30日 週刊ダイヤモンド)

福島第1原子力発電所事故による放射能漏れで、食を取り巻く環境は一変した。国が安全宣言を出したあとに暫定規制値を超過する食品が流出するなど、公的検査の信頼性が失墜するなか、食品関連企業は独自に放射能検査を始めた。食の安全はいったい誰がどう保障するのか。ずさんな食品放射能検査体制の実態を明らかにする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

 千葉県柏市。駅前商店街の雑居ビル2階の放射能測定器レンタルスペース「ベクミル」には、平日の朝からひっきりなしに客が訪れる。手に持っているビニール袋には、刻んだ食品が入っている。測定器がずらりと並ぶ店内では、20分980円で持参した食品の放射能を測ることができる。

 柏は首都圏でも空間線量が局地的に高いホットスポットとして知られる。「公的な検査では測り切れないものを自由に測れる検査設備が欲しい」という請願が市民から出されたが、市はこれを却下した。そこで民営のベクミルがオープンするとたちまち客が殺到。昨年秋は、1日に70人もの人が20坪ほどの店に詰めかけ、店の外まで行列が続いた。

 原発事故以降、食に対する“不信”は根強く消費者の心に刻まれている。自治体が検査し、一度安全宣言を出した食品から次々に暫定規制値を超える放射性物質が検出されたからだ。昨年4月には茨城で放射性セシウムに汚染されたコウナゴが見つかり、昨年11月には福島で同様に汚染されたコメが見つかった。いずれもその直前に、“安全”というお墨付きが出されたばかりだった。

 なぜ“安全宣言”は何度も覆されたのか。それは国の食品放射能検査体制が穴だらけだからである。

偏る検査品目と地域
ずさんな国の検査体制

 問題点は大きく三つある。第1に、検査の品目と地域の偏りだ。

 1月末までに厚生労働省に寄せられた累計検査数約9万6000件のうち、約6万件を牛肉が占める(図参照)。福島産の稲わらを経由して牛肉の汚染が広がり、現在も10の県が牛肉の全頭検査を行っているからだ。うち、232件で暫定規制値を超えた。

 一方その他の食品では、茶が2227件の検査で暫定規制値超えが193件、水産物は6003件の検査で同195件見つかった。暫定規制値超えの比率は牛肉よりはるかに大きいにもかかわらず、検査件数は格段に少ない。

 また地域別では、山形の肉の検査数が福島の約2倍に上るなど、地域によって偏りが大きい。

 国が定めた食品の放射能検査の指針(表参照)はあるものの、「農水産物の生産量や生産品目などの細目に地域差がある」(厚生労働省食品安全部)ため、検査点数や頻度の細目は自治体の裁量に任されているのが実態なのだ。

 第2に、検査装置の不足である。国の検査はゲルマニウム半導体検出器で精密検査することを基本にしているが、じつは国が保有する検出器は国内にわずか216台しかないのだ。

 食品中の放射能を測る装置は、図のように3種類に大別できる。ゲルマニウム半導体検出器は容器に検体を2リットルほど微塵にして隙間なく詰め30分以上かけて測る。時間も手間もかかるが最も正確な検出ができる。次がスピードは上がるがやや精度は落ちる簡易スペクトロメータ。最もスピードが速いが精度は低いのが、放射線のガンマ線を測るガンマ線線量計だ。手で持つ簡易型が多いが、最近は富士電機がベルトコンベアに接続して大量の商品をサンプルとしてつぶすことなく梱包のまま測れる機械(図右の写真)も開発している。

 本来は、簡易な検出器で検査サンプル数を増やし、場合によっては全数検査などを行って、異常値が出たものをゲルマニウム半導体検出器で精密検査したほうがより多くをカバーできるはずだ。しかし当初、国はそのやり方を認めなかった。そのため「検査をしたくても、検査機関は肉の検査で手一杯で空きがないと軒並み断られた」(東北の野菜農家)。限られた設備に数万件の検体が殺到したのだから混乱するのは当たり前だ。

 第3に、サンプリングの網が粗過ぎるという問題だ。コメの場合、予備調査、本調査という2段階の検査を踏み万全を期したはずが、検査ポイントが15ヘクタール当たりたった1ヵ所しかないなど少な過ぎて、ホットスポットで生育していた稲を見逃した。具体的にどの地点を調べるかは、現地の農協や自治体に委ねられていたが、山間部や水路付近など、より放射性物質が蓄積しやすい部分を集中的に調べた形跡はない。

 最後に、国の検査の対象のほとんどが“川上”の生産地に偏っていることだ。じつは、1985年から各地で食卓に上る食品の放射性物質量を調べる「日常食調査」が行われていたが、2003年で打ち切られた。原発事故後、住民からの要望で日常食調査を再開する自治体もあるが、ごく一部だ。川上のサンプル調査で汚染を100%食い止められない以上、流通段階や、消費者の食卓の段階での調査も必要なはずなのだが、国として再開する動きはない。
小売店の店頭で福島産野菜の放射能検査を行い、測定結果を表示して販売する取り組みも始まった(カタログハウスの店・新橋店)

各社バラバラの検査方法
新基準導入で混乱に拍車

「放射能は大丈夫なのか」「どの産地のものを売っているのか」

 震災直後の昨年3?4月、スーパーや通販各社には顧客から数千件以上の問い合わせが殺到した。「行政の検査をクリアしているから大丈夫という説明では、お客様はまったく納得しない」(近澤靖英・イオン執行役)なか、食品関連各社は自己防衛のため独自検査を始めた。

後半は「週刊ダイヤモンド」を見てください。

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