2011/12/14

知られざる放射能の“都市濃縮”

多くの人に見てほしい動画

NHKクローズアップ現代 「知られざる放射能“都市濃縮”」(動画)
(12月13日 Dailymotion)


知られざる“都市濃縮”
(2011年12月12日放送 NHKクローズアップ現代)

東日本大震災から9か月。いま首都圏各地で、高い放射線量が計測される「新たなホットスポット」が次々に見つかっている。茨城県では、避難の目安、毎時3.8マイクロシーベルトに匹敵する場所が見つかり、住民の間に不安が広がっている。原因は都市そのものにあった。道をアスファルトで覆い、人工河川で排水性を高めたことで、都市特有の、放射性物質の「濃縮」が起きたと考えられている。首都圏の家庭から毎日出されるゴミに含まれる放射性物質も「都市濃縮」されている。千葉県柏市では、ごみを100分の1に減らせる最新の焼却施設で、焼却灰から高濃度の放射性物質が検出された。こうした焼却灰の一部は、すでに全国各地の埋め立て処分場に運ばれていた。事態の深刻さに気付いた秋田県の自治体では、これまで運ばれてきた200トンを超える焼却灰の返却を指示した。国は、焼却灰をコンクリートで固めて埋め立てるよう方針を示したが、首都圏でこうした施設や技術を持つ自治体はない。行き場のない焼却灰がたまり続けると、ゴミ処理そのものが止まる恐れも出ている。効率を追い求めてきた都市。その結果、新たな放射能の脅威と向き合うことになっている。番組では、「都市特有の放射能濃縮」をリポート。解決策を探っていく。
出演者 森口祐一さん(東京大学大学院 教授)


原発事故で各地に広がった放射性物質。
福島から遠く離れた首都圏のごみ焼却場で、新たな脅威を引き起こしています。

ごみに含まれる放射性物質が、最新の焼却施設によって灰に濃縮され、高い放射線量が検出されているのです。埋め立てることすらできない焼却灰が増え続けています。

首都圏のベッドタウンでも異変が起きています。
雨水を効率よく集めるために造られた人工の河川で高い放射線量が検出されています。
今、都市特有の放射性物質の濃縮が起きているのです。

原発事故から9か月を経て都市が突きつけた新たな課題。
放射能とどう向き合えばいいのか考えます。

2011年12月12日放送 NHK
ジャンル自然・科学 環境 災害
(NO.3133)

知られざる“都市濃縮”

新興都市で異変が

福島第一原発からおよそ180キロ
人口6万人余りの新興都市茨城県の守谷市です。
市民の依頼を受け放射性物質の測定を行っている東京大学助教の小豆川勝見さんです。
これまでのホットスポットより高い放射線量が検出されたと聞き駆けつけました。

住宅地に隣接するこの公園。
国が除染の目安としている値の6倍近い放射線量が検出されました。

「1.3マイクロシーベルトぐらいですので。」

守谷市が定期的に行っている測定結果によると、市内のほとんどの場所では放射線量が下がり続けています。
しかし10月この公園を測定すると広い範囲で除染の目安を上回る高い値が検出されたのです。
小豆川さんは土壌を採取し、調査
1キログラム当たり2万6000ベクレルという高い放射性セシウムが検出されました。

「福島第一原子力発電所の半径20キロ以内の警戒区域の中にあるような値が、ところどころで確認されるというのがやっぱり衝撃的で。どうしてこの値が出たのか分からない。」

●放射性物質集める都市のメカニズム

都市に放射性物質を集めるメカニズムがあるのではないか。
小豆川さんは町を覆うアスファルトに注目しました。

「0.3マイクロシーベルトパーアワーぐらいですね。」

同じ場所で僅かに残った土と比較するとアスファルトの放射線量は3分の1でした。

「アスファルトというものは非常に水はけがよいので線量のもととなる放射性物質が非常に移動しやすいということが分かります。」

小豆川さんは、土の多い農村部では放射性物質が吸着し移動しにくいのに対しアスファルトで舗装された都市では、放射性物質が雨水と共に動きやすいといいます。
守谷市が都市化されたのは80年代の終わりからでした。
大規模な宅地造成が行われ、町にはアスファルトの道路が整備されました。
雨水の排水性を高めるために、7年前には人工の河川も造られました。

小豆川さんは町の中心部を流れるこの人工の河川に注目しました。
川は網の目のように張り巡らされた排水路とつながり、およそ200ヘクタールの範囲の雨水を集めます。
そして高い放射線量が測定された公園に流れ込んでいました。

「川に近づくと高い放射線量が検出されます。」

国の定めた避難の目安となる1時間当たり3.8マイクロシーベルトに迫る値です。
小豆川さんは町に降った放射性物質が川に集まっていると考えました。
原発から飛散した放射性物質はアスファルトに降り注ぎました。
その一部は雨で洗い流され排水路を通って川に流れ込みます。
町じゅうの放射性物質が一本の川に集められ、公園に蓄積していきました。
小豆川さんの調査では、町に降り注いだ放射性物質は公園で34倍にまで濃縮されていたことが分かりました。
●新たな脅威 “都市濃縮”

市内には放射性物質がまだ残っており今後この川にさらに流れ込む可能性があると指摘しています。
汚染はすでに川や公園の広い範囲に及び、除染は容易ではありません。

「このように非常に広い面積の所が、一様に汚染されているというようなことが確認されるとなると、また除染の考え方を考え直さなければいけないんじゃないかなというふうに思いますね。」

市民の身近な場所で起きていた放射性物質の濃縮。
守谷市では高い放射線量が検出された場所を立ち入り禁止にしています。
身近な川に放射性物質が
ゲスト森口祐一さん(東京大学大学院教授)

都市で出る生活排水は下水処理場に流して、そして雨水は河川や海へと、別々に集めて流す、そういう都市づくりを進めてきたわけですね。
人々からちょっと水が離れすぎてしまった、それでやっぱり水とのふれあいの場を作ろうということで、こういう親水公園作ってきたんですけど、たまたまここの場合は、いろんな条件が重なってしまって、そこで濃縮が起きてしまった。
ただ、これはやっぱり、東日本、ほかの場所でも起きる可能性のある問題だと受け止めています。

水が勢いよく放射性物質を下流のほうへ流してくれれば、底にたまることはないんですけれども、ここの場合には、水量が少ない、そしてまた放射性物質が付きやすいような岩とか、底の土、泥ですね、こういったものがある中で、そこに蓄積してしまったということだと思います。
●“都市濃縮”意外な場所で

雨が広い面積に降って、そして屋根ですとか、コンクリートに覆われた場所ですとか、雨が広い面積に降って、そしてそれが1か所に集まってしまう、そういう場所で、やはり同じような問題が起きる可能性があります。
実は首都圏のある場所で、広い工場の屋根に降ったもの、それが1か所に集まって、そこの土に集まってしまう、そこで放射線、非常に高い放射線量が観測された、そういう事例がすでに起きています。

守谷市のあの人工河川の場合、これ、かなり大きな規模の所ですので、なかなか雨どいの下の除染なんかのように簡単にはいきません。
新しい法律の下で、これから自治体が除染計画を作って、国の支援のもとに除染を進めていく、そういう枠組みがスタートしますので、専門家の助言なんかを入れながら、まず、その自治体がしっかりと除染計画を作っていく、それを進めていく、これからそれがいよいよスタートする、そういう時期に来ています。
ゴミ処理で 放射性物質を濃縮

東京のベッドタウンおよそ40万人が暮らす千葉県柏市です。
毎日出るごみの中にも放射性物質の都市濃縮を引き起こすものがあります。
落ち葉や草木などです。
付着している放射性物質はごく僅かです。
しかし、それが集まる焼却場では思いもかけぬ事態が起きていました。

原発事故のあと、作業員たちは防護服を身につけなければならなくなったのです。
作業員たちが向かった先にあるのは…ごみを燃やしたあとの焼却灰です。
実はこの中には高濃度の放射性物質が含まれているのです。
これまでに最高で1キログラム当たり7万800ベクレルが検出されました。
国が埋め立ての目安としている8000ベクレルを大幅に上回っています。
ドラム缶の表面の放射線量は1時間当たり4マイクロシーベルト。
国の避難の目安となる値を超えるレベルです。
このため、焼却場の中で厳重に保管を続けています。
なぜ高濃度の放射性物質が検出されるのか。

原因は、ごみを超高温で燃やす過程で起きる放射性物質の濃縮です。
ごみは、まず900度で燃やされその量は10分の1に減ります。
さらに、その灰を1200度の超高温で溶かすことでごみは元の量の100分の1にまで減少。
しかし、放射性物質は減りません。
ごみの量を極限まで減らす高性能の焼却施設は、結果として放射性物質を濃縮してしまうのです。

日本の人口のおよそ3分の1が集中する首都圏。
長年、大量のごみをどう処理するかが課題となってきました。
その解決策として、都市では最新の技術でごみを減らす焼却施設の建設を進めてきました。
原発事故はそれを都市濃縮の場に変えてしまったのです。

現在、柏市の焼却場で保管されている灰はドラム缶で811本に達しています。
作業スペースや通路などに保管してきましたが年内にもいっぱいになる見通しです。

柏市の焼却場では1日およそ1トンの灰が排出されます。
保管場所がいっぱいになれば、ごみの焼却ができなくなります。
そうなると、ごみの収集まで止めざるをえないのです。
こうした状況に住民たちは不安を募らせています。
この日、市は住民向けの説明会を開きました。

柏市は国や東京電力に対して灰の保管場所を確保するよう求めてきましたが具体的な回答はありません。
さらに灰の置き場に悩む自治体にとって追い打ちをかける事態が起きています。
放射性物質を含んだ焼却灰が今、各地から次々と運び込まれているのです。
灰はもともと首都圏の焼却場から出たものでした。
首都圏では自前の埋め立て処分場を持っていない自治体も多く灰の処分をほかの地域に頼ってきました。
ところが原発事故のあと秋田県でそれを揺るがす問題が起きました。

「心からおわび申し上げます。」

千葉県流山市が送った灰から、埋め立てできる目安の3.5倍の2万8100ベクレルの放射性物質が検出されたのです。

首都圏から送られた灰の多くは国の目安を下回っていました。
しかし、不信感を募らせた地元の住民からは、放射性物質を少しでも含む灰は受け入れられないという反発の声が上がっています。

埋め立てずに保管してきた焼却灰225トンは、今月中にすべて首都圏に送り返されます。
国は放射性物質を含んだ焼却灰の処分方法を各自治体に示しています。
国の目安の8000ベクレルを超えていても10万ベクレル以下であればセメントで固めて埋め立てができるというものです。
しかし、専門の技術や施設が必要なため、この方法で処理を行った自治体は一つもありません。

焼却灰の保管場所が年内でいっぱいになる千葉県柏市。
今、放射性物質が付着していると見られる落ち葉や草木を分別して回収。
ほとんどを燃やさずに保管しています。
高濃度の放射性物質を含む灰を少しでも減らしごみ収集が止まるという事態を避けようとしています。
動画を見る
“都市濃縮”でゴミ処理は

(植木などのごみを)分別したほうがいいかどうかすら、実はなかなか難しいところがあるんですね。
ただやっぱり、ごみの収集が止まってしまうということを、最悪の事態をストップするためには、まず焼却灰のレベルを、最終処分できるレベルまで下げたい、保管しなきゃいけないものを減らしたい、管理しやすくするためには、放射性物質が付着しやすい落ち葉とか草木、こういうものとそれ以外のより安全なごみ、これは分けていただくということは、これは一つの解決策、当座の解決策にはなると思います。

今、分別収集をして、ある場所にまとめて保管しておられるんですけど、これもあまり大量になってしまうと、自然発火するような危険もあるわけですね。
かといって集めないと、結局、身の回りから放射性物質の付いたものがなかなかなくなってくれない、しかもこれから除染を本格的に進めていくっていうことになると、やはり身の回りから、それは集めてほしい、これがやはり市民の願いだと思うんですね。
ですからそれをなるべく安全に管理するような、そういう解決策を、これからやはりしっかり見いだしていかなければいけないと思います。
●行き場のない“放射能汚染灰”

まず、今の施設ではセメントで固めるっていう施設、まだないんですね。
それをまず作らなきゃいけない。
そして最終的にはそれは最終処分をしなければいけないということです。
最終処分場を自分の自治体の中に持っている所もあれば、先ほどのVTRにあったように、自分の所にない所もあります。
ですからその最終処分を探し、これは大変重い課題だと思います。

まず、その前に除染を進めるに当たっても、まず市民との対話、市民を巻き込んでちゃんと計画を作っていくということが必要なんですね。
なかなかやはり、ほかの自治体で受け入れていただけないとすれば、やはり自分の自治体の中で場所を探していかなきゃいけない。
これは行政が一方的に決めて、受け入れてくださいということには、やっぱりならないわけですね。
ですから、どうすると、自分たちの町がきれいになるのか、放射線への被ばくのリスクをどうすれば下げていけるのか、これはやはり住民の方々と丁寧に対話しながら、計画を作って、そしてそれを実行していく、そのことが、時間がかかるようですけれども、そのプロセスが大変大切だと思います。
●放射能とどう向き合うか

やはり今、私たちはまず身の回りから放射能、放射性物質をなんとか遠ざけたいと思っています。
しかし、遠ざけるとしても、実は除染をして水に流してしまったら、それはやっぱり川や海を汚してしまう可能性がある。
実は都市以外にも、例えば森林にも放射性物質が降ってます。
そういった所から川や海にも流れています。
ですからそういう生活環境、私自然環境も含めて、どうやって環境を修復、回復していくのか、それについて長い時間をかけて、考えていかなきゃいけないと思います。

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