「ごみと原発考える」 東京農工大・瀬戸昌之名誉教授  

東京湾に放射能汚染水、基準値の14倍 千葉県の廃棄物処理業者
こうした問題が広がっている今、読み返したい記事

【ガレキ】東京農工大 瀬戸名誉教授「処分場に埋め立てられた廃棄物の焼却灰によって地下水が下水並みに汚れた、放射能で汚染された廃棄物の処分コストばく大、まずは東電に除染と補償をさせるべきだ」
(2011.10.22 子どもを守ろうSAVE CHILD)

放射能で汚染された廃棄物・ガレキについて日本全国で関心を持つ人が増えています。昨日は福岡市が放射性物質に汚染された可能性のある震災廃棄物について「市内に放射性物質を処理できる設備がなく、自然環境への影響などを考えると安全性が保証できない」という理由で受け入れ拒否の回答をご紹介しました。放射性物質を処理できないのは他の県の処理施設も同じだと思います。

福岡市が震災がれき拒否回答「市内に放射性物質を処理できる設備がなく、自然環境への影響などを考えると安全性が保証できない」

他にも複数の自治体が受け入れ拒否を表明しています。

10月15日に東京農工大の瀬戸昌之名誉教授が愛媛県での講演を行ないました。その講演で、処分場に埋め立てられた焼却灰によって地下水が下水並みに汚れたとおっしゃっています。はたして放射性物質を大量に含んだ焼却灰や廃棄物を処分場に埋め立て処分して地下水は大丈夫でしょうか。

以下は毎日新聞より引用です。

がれき「処分コストばく大」 瀬戸・東京農工大名誉教授が講演/愛媛

◇ごみと原発考える

東日本大震災の被災地の災害廃棄物(がれき)の受け入れについて考えようと、40年以上ごみや廃棄物問題の研究をしてきた東京農工大の瀬戸昌之名誉教授の講演会「ごみと原発を考える」が15日、松山市堀之内の県美術館講堂であった。

災害廃棄物について考えるため9月に発足した市民団体「ごみを考えるネットワークえひめ」が主催した。

自らがかかわった東京都日の出町の処分場について説明した瀬戸名誉教授は、「同町の処分場では多摩地域の約360万人の一般廃棄物を燃やした灰を埋めている。学識者が遮水シートを敷いてあるからごみから出た汚水が地下水を汚すことはないと言っているが、結果的に日の出町の地下水は下水並みに汚れた」と指摘した。

また、震災による災害廃棄物については、「処分のコストは一般廃棄物で1トンあたり10万円はかかる。災害廃棄物や放射能で汚染された廃棄物となると、除染費用や運送費でもっと高くなり処分料金はばく大になる」との見通しを示した。

瀬戸名誉教授は原発事故への補償について、「福島第1原発事故前は利益を独占しながら、事故後のがれきの処分費用は税金で払っている。まずは東京電力に除染と補償をさせるべきだ」と主張した。【村田拓也】

毎日新聞 2011年10月16日 地方版

*   *   *

以下はこの講演の内容をツイートしている方がまとめを作っていらっしゃったので、講演内容を一部引用させて頂きます。重要な内容ですので詳しくは以下のリンク先で全文をお読みください。

20111015 瀬戸昌之講演会「ごみと原発を考える」愛媛県松山市 
から抜粋

瀬戸氏「日本で初めてごみ問題に携わったのが東京農工大学。創設から関わり、ごみ問題を見つめてきた。いくつかはみなさんの参考になるかと思う。それを周りの人に話してほしい。どうしたらいいかという語り合いの場を広げていきたい」

瀬戸氏「以下はウソかホントか。『ごみ焼却施設は排ガスの厳重な制御をしているから、大気を汚染することはない』まあこういうのは、最初にウソをもってくるものですが(笑)きわめて簡単な事実がある。横浜のいろんな所で、焼却施設がある近くの小学校の小児喘息が多い

瀬戸氏「『最近のごみの埋立地は遮水シートを敷いてあるから、ごみ汁が地下水を汚すことはない』いわゆる偽の学識経験者が安全と言って、それにのっかった処分組合が、下水を汚している。私がその問題に関わったために、ブラックリストに載って、処分施設の中に入れなくなってしまった」

瀬戸氏「重機も入るからシートに穴があいている。中にはタケノコが生えているところもある。全国の状況を見たが、漏れていないところはない。地下水を汚さなかった例はない。遮水シートの下の土地は死ぬ

瀬戸氏「『家電リサイクル法は、テレビや冷蔵庫の不法投棄の防止に有効である』何が予想できるかわかる。いらなくなったテレビを車につめこんで、人の来ないところにポンと捨ててしまえば、引取代金を払わなくてすむ。それがわかっていながら、ぬけぬけと欠陥法律を作った

瀬戸氏「大量生産・大量消費をよしとする大企業の考えがあるが、そこに環境を考えるというものはない。『修理するより新品を買った方が安い』その廃棄物を燃やしたりするために、新たに金が使われる。そのほとんどは税金。今得しても、後で金を払うことになる。ものを大事にする人の金まで

瀬戸氏「『原発はCO2を出さないから地球温暖化を起こさない』ウランの採掘、運搬、原子炉建設、ランニングコスト、その間に石油を使う。だから、このことは言えない。温暖化防止なんて、原発のほんの狭い所を見て言ってるだけ

瀬戸氏「『原発は事故さえなければ放射能汚染はない』温排水、1秒に50トン、瞬間的に7度温度が上がる。それを捨てている。海水を7度温めるのは恐ろしいこと。珊瑚礁がへたばる。海は基本的に温度が変わらないようにできていて、それにあわせて生物が生きている。上がると大ダメージ

瀬戸氏「『原発は安価な電力を生む』よくヌケヌケとこんなことを。根拠を出せといっても出さない。ホントに安いならデータを出せばいいのに

瀬戸氏「『計画停電はやむをえなかった』ろうそくは売れる、乾電池は売れる。東芝なんて、原発で儲けて事故で儲けて。事故以来批判が出てきて、原発反対したらこういう目にあうぞ、という脅迫。原発全部止めたって、必要な電力は供給できる。夏はクーラー、冬は暖房があるからと脅迫するが

瀬戸氏「『福島原発周辺の人は、除染ができれば故郷に帰れる』それはそうだ、汚染がなくなれば。問題は除染できるか。それをできるという経済界はおかしい、問題の深刻さに気づいていない。小学校の運動場100m四方、表層の土を1cm除去したら1万立方m。10cmで10万立方m

瀬戸氏「それだけの土をどうやって運ぶのか。どこに運ぶのか。山も畑もある。除去が実行できるのか。畑を転地換えしろという専門家もいるが、何の解決にもならない」

瀬戸氏「『放射能汚染除去に菜種、ヒマワリの栽培は有効である』できっこない。学者は、ロシアでやっているとぬかしておるようだが、実態は、放射能を吸わないような菜種を開発して植えている。IAEAの報告書にすらその記述はほとんどない。除染の方法はない。どうしようもない大災害」

瀬戸氏「福島の人は、政府の言うことを信じて、故郷に帰れることを期待している。それが彼らのためになるのか。新しい故郷を作ったほうがいいと言うのが親切ではないのか。しかし、除染で帰れるという政財界のキャンペーンが生きている。除染できなければ原発は終わりだから」

瀬戸氏「税金ジャブジャブ垂れ流しをやっているところに、原発のうまみがあるのであって、民営化して独立してはやっていけない」

瀬戸氏「ごみの安全基準、日本はいま4ピコグラム。日本人がとっている平均的なダイオキシンの量が3.いくらだったから。クリアしてるじゃないかと」

瀬戸氏「安全基準は、きわめて場当たり的に、政財界に都合のいいように決められている

瀬戸氏「ごみ対策の予算、必要な分の10分の1~20分の1。全然足りない。来年以降は予算が増えるというが、それは10年20年福島の人は帰れないとい うことではないか。それを間接的に認めておきながら、除染して帰れると言っている。義捐金3000億円はどうなった?外国からの金は?」

阿部県議「震災瓦礫を片づける金の出所は?と瀬戸先生に言われて、聞いてみた。県は『100%国が払う』と。2500万トンとして、岩手・宮城の分が全国にくる。いくらの予算かと聞いても『わからない』と。環境省に聞いたら、第3次補正予算の3000億円の中でやると」

阿部県議「補正予算3000億円と聞いただけで、少ないだろうと。ふつうの一般廃棄物でもトン当たり10万円はかかる。震災廃棄物だと、トン10万円としても2兆円かかる。なのに、ほかの予算も入れ込んで3000億円。やる気あるのか。瀬戸先生が計算してみなさいと言われて聞いた」

阿部県議「環境省の役人は『必要なら次々出します』と。次々って何年かかるのか。福島に帰ってきてというのは、なぜ言うのか。予算の裏付けがないまま、国 主導でやると言っている。その理由を瀬戸先生に聞いたら、『なんとかできるから、だから原発をやろうというストーリーだろう』と」

瀬戸氏「福島以外の震災廃棄物は大丈夫じゃないのかと言われるが、汚れている。基準がどんどん緩くなっている。東京で引き受けるというので調べてみたが、どこの瓦礫かも、どういう瓦礫かも書いていない。東京の汚染もびっくりするほど高い。福島原発から離れているのに高い」

瀬戸氏「これからの子どもたちに、可能なかぎり安全な環境を用意するのが、我々大人の義務。放射線はあたると必ず細胞を破壊する。これ以下なら安全というのはない。低いなりに破壊する。ただ人間には、破壊された遺伝子を修復する能力。高くなると間に合わない。人によってその境の値は違う

瀬戸氏「体にどれだけ突き刺さるかがベクレル。放射線の種類によって、体に及ぼす影響が違う。それを考慮して、どれくらいダメージを与えるか、がシーベルト。外部被爆と内部被爆をちゃんと考えないといけない。そのおところの情報が非常に限られている

瀬戸氏「1時間あたり3.8マイクロシーベルト、1年分まとめて20mSvを、原子炉建屋でガーンと浴びたとすると、修復が間に合わない。たとえば砂糖を1日10g摂取してもなんともない。1年分3650gを1時間で摂取したら?」

瀬戸氏「ごみ問題、原発問題、環境問題に共通して見られる現象は何か」客『差別?』「その原因は何か」『金儲け?』「誰が儲かっている?たとえばイタイイタイ病、カドミウムの垂れ流し。儲けは独り占め、後始末はみんなが。原発の儲けはすごい。後始末は税金。これ許したら第2第3が出る」

瀬戸氏「儲けは独り占め、後始末は税金で。ほかにもいっぱいある。一方、東電が支払った補償額は、事故後半年たっても、総額の1%にもならない。やらせはやるし、醜悪な事例がいっぱいある。これから環境問題などを考える時のキーポイント。厳しく責任を問うこと。許しちゃいけない

瀬戸氏「ではどう対応すべきか。EPR(Extended Producer Responsibility=拡大生産者責任)メーカーは製品に責任を持つのみならず、排気された製品の処理まで責任を拡大せよ、というOECDでの取り決め

瀬戸氏「たとえば120円のペットボトルを売るなら、これに80円のデポジット(ペットボトルの回収費+処理費)を入れて200円にする。空のボトルが販売店・生産者に返却されたら、生産者は30円を消費者に返還。残り50円で処理・資源化。EPRは、すべての製品に含めるべきとする

瀬戸氏「これを実施すれば、ゴミ問題・環境問題は一気に解決する。お金が戻ってくるなら誰も捨てない。ユーザーとメーカーの責任がはっきりし、雇用も生まれる。大量生産・大量消費にブレーキかかるとか、生産ラインをつけかえないといけないとかで、生産者が反対している

瀬戸氏「デポジット、アメリカはやっている。ヨーロッパ、店にもっていくと、機械に投げ込み、読みとって、金券が出てくる。それでまた買い物。ごみ問題は難しいんじゃなくて、難しいと思わされている

瀬戸氏「ノーベル平和賞を受賞したノエル・ベーカーは、『誰が儲かっているかを考えれば、本当の問題がわかる』という」

瀬戸氏「原発をどうするかは、PPP(Polluter Pays Principle=汚染者負担の原則)を実施した後で考えよう。政財界はそれを嫌がっている。日本のPPPはOECDと全く違うのに、入れたことにしている。消費者と行政が責任を拡大しろと

瀬戸氏「民間が東電以外で発電しても、送電しないといけない。送電線を使おうとするとすごい金がかかる。東電の独り舞台。だから送発電を分離しろという議論がある。歴史的には、電線は東電のものじゃない。送発電分離すれば電気代は安くなる

瀬戸氏「2億5000万円払っていた電気代が、東電以外の会社から電気を買うようにしたら、5000万円安くなった例がある。これが電力の自由化の実態

瀬戸氏「我々が声を大にしなければいけないのは、EPRやPPPを全製品で実施するようにすること。メーカーと消費者が限定されたなかで責任をとり、税金を入れる必要がなくなる。儲けは東電、後始末は税金なんて、通るわけない。もうひとつ、環境にいいことを我々は応援しているか?

瀬戸氏「例えばTPP(何がパートナーシップだふざけんじゃない)、安い食料が売れるからと思わされているが、そんな話じゃない。日本の米は世界一高いと 文句こそいえ、あの水田を維持することによる環境保全について応援しない。TPP後、土木工事で保全10兆円くらい払う覚悟があるのか

瀬戸氏「東電にちゃんと責任をとらせるのが第一。そして、環境にいいことをやっている人をもっと応援する。それを念頭においてほしい。ありがとうございました」

質疑応答なう。

瀬戸氏「新聞が本当のことを言わない理由も簡単。朝日新聞を開いたら電力会社の広告が載っている。悪口を言えるわけがない」

瀬戸氏「誰が儲かるかというと、原子炉メーカー。そこに役人が天下り。誰が損しているか。みなさん自分の税金をそこにとられているのに、どうして怒らないんですか。税金とられるのはいいけど、有効に使ってほしい」

「原発の場合交付金が出るが、もし私たちの知らないうちに瓦礫を受け入れることがあったら、助成金がくることもあるのか」瀬戸氏「交付金は常套手段。名目 がわかりづらい形で出している。そういう金がないとやっていけない。オンブズマンらの応援を仰いでチェックするのがいい」

瀬戸氏「除染して復興、故郷に帰れるというのが、我々が協力することによって速まるのか?予算措置なんてしてない。とんでもない量の瓦礫をどこに持って行くのか。こっちで引き受けたところで、大海の一滴にしかならない。残酷だが、福島原発の10km~20km圏内はあきらめるしかない」

瀬戸氏「それを解決できるような政府の言い方、10年20年先延ばしして一番困るのは、福島を追われた人たち。そろそろ決着をつけないといけない」

瀬戸氏「表で言っていることと、実際に起こっていることとの間には、乖離があることを覚えておいてほしい」

瀬戸氏「福島に帰れないだろうと言うのを恐れて、除染すれば福島に帰れると10年20年言うつもり。そのあいだに原発を進めようというのだろう」

瀬戸氏「日本の製品を燃やすと、いろんなガスが出てきて危険。ドイツは、家を解体して燃やしても危なくないものでできている。廃棄までも考えている。この考えが日本にない。後始末は税金。まずはペットボトルのデポジットから。世界中でやっている

瀬戸氏「一番危惧しているのは、広く薄く放射能汚染をやって、福島の復興なんてできない。生殺し。放射線を拡散しない方法があるならいいが、(震災廃棄物の拡散を)やればやるほどみんながダメになる。現地では『オレの家を潰していいからここに瓦礫をおけ。拡散させるな』という人もいる

質疑応答終了。本日参加者58名。配布された「https://t.co/1dGkGvTX“>震災がれきによる放射能汚染から子どもたちを守る決議」を拍手でもって議決。

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【汚染】放射性物質に汚染された可能性のある「がれき」を受け入れない選択をした全国の自治体(まとめ)

【動画】児玉龍彦教授「ガレキは当該地処理をしなければならない」

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