英科学誌「ネイチャー」 放射性セシウム放出量、保安院発表の2.4倍

ノルウェー大気研究所
「原子炉の自動停止直後にすでに放出が始まっていた強い証拠がある」
地震発生時に原子炉に構造的なダメージがあった可能性を示唆

福島セシウム137放出3万5800テラベクレル、政府発表の2倍超か
(10月27日 ブルームバーグ)

  東京電力・福島第一原子力発電所の事故に伴って放出されたセシウム137の総量が政府発表の2倍以上になる可能性がある、とのノルウェーの研究機関による調査結果が「アトモスフェッリクス・ケミストリー・アンド・フィジックス・ジャーナル」誌に発表された。

  同研究調査によると、事故のピーク時に福島第一原発から放出されたセシウム137は3万5800テラベクレル(テラは1兆)。経済産業省原子力・安全保安院が6月に発表していた放出量は1万5000テラベクレル

  セシウム137の半減期は30年であるため、健康被害が懸念されている。同調査によると、3万5800テラベクレルのセシウム137は、1986年に起きた史上最大のチェルノブイリ原発事故時の放出量の約42%に相当する。

  同調査によると、キセノン133も1670テラベクレル放出されており、「原爆実験を除くと、キセノンの放出量は史上最大」という。原子力安全・保安院はキセノンの放出量を1100万ベクレルと見積もっている。

  原子力安全・保安院防災課事務室の古作泰雄氏は電話取材に対し事故当初に放出されたとみられる放出量に大量の追加の必要性はないようだとの見方を示した。さらに、6月の試算が確定的なものかどうかははっきりしておらず、修正の必要があれば総放出量の試算を見直す必要が出てくるだろうと述べた。

  細野豪志原発担当相は8月に、要望があるので放出量の数字を最新のものにすることを考えているとしながらも、「率直に言って、当初の数字から大幅に増加することはないだろう」と述べた。

  ノルウェー大気研究所のアンドレアス・ストール氏らの同調査は大気化学関係のウェブサイト上で公開されている。

  日本政府と東電は最新の福島第一原発からの放射性物質の総放出量を公表していない。同調査では、3月11日にマグニチュード9の地震が起き45分後に大津波が福島第一原発を襲ったが、その前に放射性物質の放出があった可能性も指摘している。

  同調査は「原子炉の自動停止直後にすでに放出が始まっていた強い証拠がある」とし、「地震発生時に原子炉に構造的なダメージがあった可能性を示唆する」と指摘した。

  原子力安全・保安院の広報担当、小板橋忠重氏は地震が原発に大きな損傷は与えないとの立場を崩していないと語った。

  同調査では、4号機の使用済み核燃料プールに放水した際にセシウム137の量が「急減」していることから「放射性物質の放出が破損した原子炉だけではなく4号機の核燃料プールからも出ていることを示唆している」と述べた。


放射性物質放出量、政府推計の2倍か
(2011年10月27日03時11分 読売新聞)

 東京電力福島第一原発事故の初期に放出された放射性物質セシウム137は約3万5000テラ・ベクレルに上り、日本政府の推計の2倍を超える可能性があるとの試算を、北欧の研究者らがまとめた。

 英科学誌「ネイチャー」が25日の電子版で伝えた。世界の核実験監視網で観測した放射性物質のデータなどから放出量を逆算。太平洋上空に流れた量を多く見積もっている。

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