皆で原発をやめる努力を 生き方をチェンジする勇気を 加藤登紀子

考・原発 「フクシマ」半年(8)生き方、変える勇気を
(年9月15日 西日本新聞朝刊)から抜粋

歌手・加藤登紀子さん
東京大在学中にデビュー。国内外でコンサート活動を続け、千葉県内の農事組合法人の運営にも携わる。中国・ハルビン生まれ。67歳。

原発が各地で建設されていたころ、反対派イベントに出演。1981年には原発労働者を題材にした曲「闇のジプシー」を作った。97年に「原発ジプシー」と曲名を変えて発売。しかしレコード会社がすぐに発売中止にした。

「“ジプシー”が差別的表現などという説明だったので反論できなかった。実際は“原発”という言葉が問題視されたのだと思う」

「メディアなども深く関わりながら、原発依存型の社会をつくってしまった。福島第1原発事故まで脱原発世論が広まらなかったのは、反対する勢力は次々に踏みつぶしていくぞという目に見えぬ力を、多くの人が感じていたことが背景にあるのではないか。『脱原発社会』をつくっていくのは容易ではないが、これからは原発の反対・推進の壁を取り払い、みんなで原発をやめる努力をしなければいけない時だと思う」

枝野幸男経済産業相は原発の安全性に「100%はない」と明言する。しかし政府は、停止中の原発は安全性を確認した上で再稼動させる方針。「原発ゼロ」を目指すのか、将来の方向性は示していない。

福島第1原発とは別の原発が大きな事故を起こしたら、もう日本はアウト。ところがその可能性はゼロではない。例えば玄海原発(佐賀県玄海町)などでは通常の原子炉で、一般の燃料より危険性の高いプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やしている。MOX燃料は使用済み核燃料の再利用だから廃棄物は出さないと誤解している人もいるようだが、再処理過程で大量の高レベル廃棄物を出す危険な作業だ。地震国で、どうしてそんな危ないことをやるのか。どう考えてもおかしい

「放射能汚染で計画的避難区域に指定された福島県飯舘村で5月にコンサートをした。『までいな村』(「までい」は東北地方の方言で、手間をかけるの意味。心をこめて、つつましくなどの感覚も含む)をモットーに、素晴らしい地域づくりをしてきながら、故郷を失った人々に『命結―ぬちゆい』という歌を贈った。こんな悲しみを繰り返すことがないよう、早く脱原発に方向転換するべきだ」

経済界などは、コストが安く安定した原発は欠かせないと主張。一方、共同通信社が8月に実施した世論調査では「脱原発依存」への賛意が7割を超えた

「一極支配のような巨大な原発ではなく、電力供給を地域分散化すれば、送電時のロスも少なく十分足りるはず。これからは地域地産型と省エネ型の産業にこそ未来の可能性がある」

原発依存の文明は崩壊した。基本的には消費と生産でプラスマイナスゼロのバランスを取る生活に転換すべきだ。プラスマイナスと書いて『土』。土は多くの恵みを与えてくれる。これまで培ってきた生きる知恵も、休耕田も、地方にはたくさんある。生き方をチェンジする勇気を持ってほしい。津波で被害に遭われた多くの方も、ゼロから歯を食いしばって生きている。これからも命を守る側を、歌を通して支援したい」

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