エコロジーの風 12号「ハッピースロー宣言!」発行

エコロジーの風 12号「ハッピースロー宣言!」が発行されました。

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中村隆市(株)ウインドファーム代表
ウインドファーム流フェアトレードの20年
≪第一章≫ フェアトレードを始めるまで
≪第二章≫ フェアトレードの20年
≪第三章≫ 環境運動、市民運動、スロービジネス


<寄稿>
辻信一(明治学院大学教授)
フェアトレードが生み出す森の豊かさ
吉岡淳((有)カフェスロー代表)
拡がるスローカフェ運動
藤岡亜美(スローウォーターカフェ(有)代表)
フェアトレードが村を森を取り戻す
藤村靖之(非電化工房代表)
非電化生活を愉しもう!
アンニャ・ライト(歌手・環境運動家)
地球とのつながり、輪を取り戻す旅
後藤彰(ウィンドファームスタッフ)
スローな好循環 ゆっくり村で愉快に生きる
岩見知代子(トセパン・ジャパン代表)
メキシコ・トセパンの取り組みを体感するエコツアー
上條麻子(スロービジネススクール事務局スタッフ)
スロービジネススクールの実践 人とのつながりから広がる可能性
いのちを大切にする仕事づくり
?スロービジネスの実践者たち?
発行:(株)ウインドファーム
2007年11月発行
48ぺージ
<寄稿>
辻信一(明治学院大学教授)
「フェアトレードが生み出す森の豊かさ」
ウィンドファーム創立20周年、おめでとう!
ぼくがウィンドファームとお付き合いし始めてから、まだ10年も経っていない
けど、なんか、20年も前から親しくさせていただいているような感慨を覚えま
す。
ウィンドファームは日本におけるフェアトレードのパイオニアです。今でこそ、
世界に広がったフェアトレードですが、社長の中村隆市さんはフェアトレードと
いう外来語を知る前から、独自のやり方で公正なビジネスを模索してきました。
すごい会社だな、とつくづく思います。そういう会社と組んで環境運動をやって
こられたことを、ぼくは誇りに思います。
特に、中村さんとはナマケモノ倶楽部をつくるなど、いろんなことを一緒にやっ
てきました。カナダ、エクアドル、ブラジル、ビルマ、メキシコ・・・、いろん
なところを共に旅して歩きました。彼と過ごす時間はいつも楽しいものだったし、
ぼくの人生をますます意義深いものにしてくれました。
でも、9年のお付き合いの中で、今ほど、ウィンドフームの素晴らしさを痛感し、
中村さんを同志として誇りに思ったことはありません。それは、ついこの2週間
くらい前に南米エクアドルのインタグ地方の森から届いた報せのせいなんです。
鉱山開発に反対して森を守ろうとする住民たちの意思を受けて、エクアドル政府
はついに鉱山会社に退去を命じました。それは、もう9年も、ぼくたちが待ちに
待った報せでした。
アンデス山脈の中腹にあるインタグ地方は、世界有数の生物多様性を誇る雲霧林
に覆われています。その貴重な森林を伐採して鉱山をつくろうとするグローバル
企業と、外貨獲得のためにそれを後押しする政府に対して、現地の住民は森を守
るために闘い続けてきました。グローバル経済の観点からすれば鉱山開発はまさ
に「豊かさ」への近道でした。
企業は札束をちらつかせてコミュニティの分断を図り、他方では暴力的な手段を
も駆使して人々を力で屈服させようとしました。しかし住民たちは、その「豊か
さ」を拒否し、それとはちがうもうひとつの豊かさを選びました。それは森の豊
かさです。森と引きかえに一時的な富を手にすることより、自分たちの生存を保
障してくれる森を子どもたちやそのまた子どもたちに残すことを選んだのです。
ぼくと中村さんを結びつけたのは、そのインタグの森でした。1999年の初めにぼ
くたちはそこを訪れ、現地の農民やNGOや自治体のリーダーたちと会って話し合
いました。中村さんは当時を振り返って、こう言っています。
 「当初、鉱山開発を進めようとしていたのは、日系企業でした。現地の住民の
ほとんどがそれを食い止めたいと思ったわけです。でも、その地域は住民の9割
が国連のいう貧困ライン以下で、ただ開発反対というだけでは運動を維持するこ
とはできなかった。自然破壊型の開発に代わる地域発展のヴィジョンを示す必要
があったわけです。で、その核として森を守る農業、つまりアグロフォレストリー
があったわけです。つまり、地域自給的な農業に、有機コーヒーのような商品作
物、エコツーリズム、地域の民芸品などによる現金収入を組み合わせてやってい
きたいという地元の人々の熱意に動かされて、私はコーヒーのフェアトレードを
始めました」
数日の滞在の後、ぼくは中村さんが現地のコーヒー生産者たちを前に、「わかり
ました。ここでとれたコーヒーはすべて私が買いとります」と言い切るのを見て、
彼の思い切った決断に感動しながらも、心の片隅では、「大変なことになった、
大丈夫だろうか・・・」という不安を感じたものです。今思えばそれはひとつの
歴史的な瞬間でした。フェアトレードの最良の形が生まれたこの瞬間に立ち会っ
た者たちは、間もなく中村さんを中心に新しい環境=文化運動「ナマケモノ倶楽
部」を生み出しました。
帰国後、ぼくたちは早速、インタグのコーヒーを日本に広めるための活動を開始
しました。数年のうちにウィンドファームとナマケモノ倶楽部の周りに、仲間た
ちが「スロー」、「カフェスロー」、「スローウォーターカフェ」などの会社を
次々に起こしました。どれもインタグの森と、そこに住む人々の暮らしを守るこ
とを目標に掲げる会社です。
インタグのあるコタカチ郡のアウキ知事夫妻から、燃えている森に水のしずくを
運ぶあのハチドリのお話をぼくが聞いたのも、中村さんと一緒の時でした。イン
タグの闘いのリーダー、カルロス・ソリージャによれば、彼が買いとって守って
いる森だけでも、その中に住むハチドリの種類は、北米大陸全体に棲息するハチ
ドリの種類よりも多いのだそうです。彼がそう誇らしげに言うのを聞いたときも、
ぼくと中村さんは一緒でした。
ハチドリはもちろん、多くの鳥が集まる楽園のようなソリージャ家の庭を眺めな
がら、ぼくたちはカルロスが、闘いに勝利して心おきなく好きな芸術や科学に打
ち込める日の夢を語るのを聞いたものです。
インタグのコーヒーのことを、ぼくたちは「森を守り、つくるコーヒー」と呼ん
できました。それが単なる空疎な宣伝文句でないことが、今誰の目にも明らかに
なりました。フェアトレードという言葉の本当の意味が、そこにクッキリと現れ
ています。
改めて、インタグの森を守り抜いてきた現地の方々にお祝いの言葉を贈るととも
に、彼らを日本から支えてきた中村さんはじめウィンドファームの皆さん、そし
てまたそれに連なる、消費者を含むすべての皆さんに敬意を表したいと思います。
Viva Intag, viva!
Viva Windfarm, viva!
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