2006/09/09

ほどほどの快適・便利を愉しむ

財団法人 省エネルギーセンターが発行する「省エネルギー」誌 2006年9月号にコラムを書きました。



省エネルギー 2006 9月号


【 視点 】ほどほどの快適・便利を愉しむ“非電化”有機工業運動
                 (株)ウィンドファーム代表 
                 スロービジネススクール校長 中村隆市

 あれは6年前のこと。環境発明家の藤村靖之さんから「会って話がしたい」という電話が入った。「ブラジルで“有機コーヒーフェアトレード国際会議”があるので、戻るまでは難しい」と答えたところ、なんとブラジルまでいっしょに行くことになった。私は飛行機のなかで藤村さんの発明した「非電化製品」の話を聞いていた。電気を使わない冷蔵庫、エアコン、洗濯機、除湿器・・・。その面白さに惹きこまれた私は、24時間に及ぶ空路であったが、眠る時間も忘れて話を聞き続けた。

 「私たちは電気製品に囲まれて暮らしている。地球温暖化が深刻化しているなかで、この先、中国やインドなどでも一挙に電化が進めば、地球は一巻の終わりだ。そんな危機感から生まれた非電化製品だから、この発明を途上国の人々のために役立てたい」と藤村さんは言う。私はその話を聞いて思った。「まず、電気を使いすぎている日本で非電化製品を普及させたい」。しかし、「便利さに慣れた日本人は、わずかな不便でも受け入れないだろう」と、藤村さんはいつになく悲観的だった。

 それから1年後、チェルノブイリ原発事故15 周年にあたる2001 年4月、私はチェルノブイリ原発事故の被害に遭われた人たちを日本に招いた。藤村さんに講演を依頼し、私も皆さんに訴えた。「この10年間、チェルノブイリ支援、脱原発、自然エネルギー推進などの運動にかかわるなかで、省エネルギーの重要性を真剣に考えている人たちが増えていることを実感しています。原発も地球温暖化もない世界をつくるために、非電化製品を日本で広める運動にあなたも参加しませんか」と。これをきっかけとして「非電化運動ネットワーク」が立ち上がった。

 問題は、非電化製品は電化製品より“少し不便”であることである。たくさんつくったところで、誰が買ってくれるかわからない。そこで私は、自分の本業である有機農業運動に発想のヒントを得た「有機工業運動」を展開する方法を考えてみた。工業製品は大量生産しないとコストが高くなるため、大企業でなければ参入しにくいと思われてきた。確かに資金面でも販売面でも従来ののやり方では難しい。しかし、有機農業の提携方式で、消費者と生産者(発明家や中小製造業者)が手を結べば、資金面も販売面もクリアできる。

 非電化除湿機は、5台試作したところ1台12万円もかかった。500台なら1台15.000円で製造できる。(※今は、価格が変わっています)それなら、まず500台の予約を集めようと、私は次のように正直な説明をした。

「この除湿機は、ちょっと“不便”です。1リットルほど湿気を吸うと布団を干すように太陽の光にさらす必要があります。そうすると除湿能力が回復し、何度でも繰り返し除湿できて電気代は一切かかりません。そのうえ、故障せず長持ちします」。

 非電化除湿機500台の予約を集めるのに3年かかった。そして、昨年ついに500台が製造された。消費者の皆さんの反応は2種類に分かれた。「やっぱり面倒」という人と、「ちょっと不便がたのしい」という人・・・。しかし、「未来世代に負担をかけるほどの便利さ、快適さを求めなくても“ほどほどの便利さ、ほどほどの快適さ”でいい」という人たちは、この国にも確実に増えてきている。

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