もんじゅ―開発はあきらめる時だ  朝日新聞社説

もんじゅ―開発はあきらめる時だ (7月16日)

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)をめぐる高木義明文部科学相の発言が、波紋を呼んでいる。

 高木氏は昨日午前、もんじゅについて「廃止とか、単純に継続とかではなくて、全体的なエネルギー政策の中で結論がおのずと出てくる」と述べた。

 それが「開発中止を含め検討」と報じられたのを受け、夕方、改めて記者会見し、「中止なんて一言も言っていない」としつつ、「議論に予断は持つわけにはいかない」と語った。

 未曽有の原発事故を起こし、原発依存を下げていく以上、政府がもんじゅのあり方を問い直すのは当然のことだ。

 高速増殖炉(FBR)はプルトニウムを燃料にし、運転しながら燃料を「増殖」させる原発だ。この「夢の原子炉」によってエネルギーを支える構想を、核燃料サイクルとよぶ。

 かつては多くの国が核燃料サイクルの実現をめざしたが、技術的な難しさ、コストの高さ、プルトニウムを扱うことによる核拡散の問題を理由に、欧米はほぼ撤退した。

 日本の計画も遅れに遅れている。1970年代には「95~2005年ごろに実用化する」という計画を描いていたが、現在の原子力政策大綱では「50年ごろまでに実用化」としている。

 もんじゅは初発電から間もない95年12月に冷却材のナトリウム漏れ事故を起こした後、ほとんど稼働していない。すでに9千億円以上を投じ、停止中も1日5500万円の維持管理費がかかる。

 しかも、もんじゅは原型炉であり、この次に実証炉、実用炉と続く。実証炉をだれが主体になってつくるかも未定だ。つくるとしても、もんじゅとは違うタイプになる。実用化の見通しは立たない。

 日本の原子力開発の歴史において、普通の原発(軽水炉)が外国から丸ごと輸入されたのに対し、もんじゅは国産開発のシンボルだった。

 しかし、もんじゅで冷却材に使われるナトリウムは水と爆発的な反応をするため、制御が難しい。事故が起きた場合の危険性は極めて高い

 私たちは13日付の社説特集「提言 原発ゼロ社会」で、核燃料サイクル計画からの撤退を求めた。もはや巨額の予算をかけてFBRの開発を進める意味は乏しい。FBRはあきらめ、もんじゅは廃炉にすべきだ。

 FBR時代が来ない以上、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理事業も、根本的に見直さなければならない。

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