2011/07/13

「食事被ばく量」を試算 早急に子どもたちの内部被曝を防ぐ対策を

「食事被ばく量」についての厚労省試算が公表されたが、これを鵜呑みにしては危険である。当然のことだが、放射能に汚染された食品をどのくらい食べるかによって、「内部被ばく」の数字は大きく変わってくる。

今後、農産物がどれほど汚染されるのか、今秋に出回る主食の米にどれだけセシウムなどの放射性物質が含まれるか、魚は今後どれほど汚染されるのか、といったことが大きく影響する。もちろん、「基準以内であれば安全」ということはない。

この記事の読み方としては、日本人の大半が食事によって「内部被ばく」を受けるということを覚悟しておいた方がいい、ということだろう。ただし、子どもたちは、食事被曝(内部被曝)から守らなければならない。なぜなら、年齢が低く細胞分裂が活発なほど放射線の影響を大きく受けるためだ。ジョン・ゴフマン教授の研究では、0歳の赤ん坊は、30歳の約4倍、そして、55歳以上と比べると、300倍以上の大きな影響を赤ん坊は受けることになる。

今、学校給食の放射能汚染問題に注目が集まり始めているが、児童生徒だけでなく、保育園児や幼稚園児、そして、乳児も含めた全ての子どもたちを放射能から守ることを大人は皆で考え、早急に対策を立てなければならない。


福島第1原発:食事被ばく量、25%増 厚労省試算 (毎日新聞)

 厚生労働省は12日、東京電力福島第1原発事故後に日本国民が摂取した食品から受ける放射線量の増加推計値を初めて公表した。3~6月の4カ月間では全年齢平均で0.034ミリシーベルト、12年2月までの1年間では同0.106ミリシーベルト。通常時に食品に含まれる放射性物質(放射性カリウムなど)の摂取による年間被ばく線量(0.4ミリシーベルト)より25%増える計算だが、厚労省は「安全性の観点で相当程度小さい」と結論づけた。

 推計は同省薬事・食品衛生審議会の作業グループが実施。6月20日までに各自治体が実施した食品の放射性物質検査約5000件で検出された放射性セシウムやヨウ素のデータを使い、日本人の各食品の平均摂取量から、全年齢平均▽妊婦▽小児▽胎児▽乳児――の線量を推計した。

 6月までの被ばく線量(単位はミリシーベルト)は妊婦0.03▽小児0.065▽胎児0.038▽乳児0.029。年間線量は妊婦0.07▽小児0.137▽胎児0.063▽乳児0.044。甲状腺に放射性ヨウ素が集まりやすい小児の線量は比較的高い傾向がみられた。

 審議会委員で全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長は「国民は自分の住む地域でどの程度被ばくし、何に気をつけたらいいのかという正確な情報を知りたい。地域ごとや食品ごとの推計値を出すことも検討してほしい」と話した。【佐々木洋】

毎日新聞 2011年7月12日 13時17分(最終更新 7月12日 13時28分)


クローズアップ2011:内部被ばく 東電、甘い計算法主張 
(毎日新聞 6月15日)

 ◇厚労相「内部被ばく100ミリシーベルト限度」

 東京電力福島第1原発で、限度を超えた被ばくをする作業員が相次いでいる。特に放射性物質を体内に取り込む内部被ばくが深刻だ。細川律夫厚生労働相は14日、内部被ばくが100ミリシーベルトを超えた人を作業から外すよう東電に指示したが、被ばく量の算定を巡って東電と厚労省が対立、作業員の安全を優先した対策が遅れた。作業の長期化が避けられない中、被ばくの実態把握さえおぼつかない現状は、東電が工程表で公約した復旧作業にも影響しかねない。

 ◇根拠薄い「政治判断」

 「東電は当初、内部被ばく線量を甘い方法で計算していた」。厚労省の幹部は憤る。

 福島第1原発の作業員から緊急時の上限の250ミリシーベルトを超える被ばくをしたとみられる2人の存在が発覚した5月30日には、内部被ばくの線量は不明だった。線量計算を巡り厚労省は、同原発で最初に水素爆発があった3月12日を起算点にするよう東電に求めた。しかし、東電側は「いつ内部被ばくしたかは不明。3月末まで作業したなら震災当日と月末の中間の3月21日前後を起算点にすべきだ」などと主張した。

 内部被ばくは「ホールボディーカウンター」という機器を使い、ある時点の線量を測った上で過去にさかのぼって総量を積算する。さかのぼる期間が長いほど積算線量は高くなるため、東電側の計算では厚労省より積算線量が低くなる。厚労省労働基準局の職員は「厳しく計算するよう説得したが向こうも譲らず、にらみ合いが続いた」と証言する。

 ただ、東電の測定値は「暫定値」で、最終的な線量は放射線医学総合研究所(放医研)が精密に検査し算出する。放医研は厚労省と同じ起算点を用いて6月10日、2人の内部被ばくを590~540ミリシーベルト、外部被ばくと合わせて678~643ミリシーベルトで確定させた。

 東電も最終的には放医研に合わせて計算し直して13日に同省へ報告、新たに6人の上限超えが判明した。

 一方、細川厚労相が「内部被ばくの限度は100ミリシーベルト」と指示したのは根拠の薄い「政治判断」だった。

 最初の上限超え発覚後、厚労省は同様の作業をしていた約130人の内部被ばく線量を測るよう東電に指示し、6月3日に報告させた。この時点では新たな上限超えはいなかったが、100ミリシーベルト超が3人いた。当時は線量計算を巡り東電と争っていた時期で、厚労省は「100ミリシーベルト超の3人も最終的に上限超えの可能性が高い」と判断、作業から外すよう指示していた。

 その後、東電が計算し直した13日の報告を同省は「実態に近い」と評価。この報告では新たな上限超え6人のほか、200ミリシーベルト超の作業員が6人いたため、この6人も念のため作業から外すよう事務レベルで指示した。

 しかし、細川厚労相は「100ミリシーベルト超」で作業から外した3日の指示にこだわり、事務レベルの指示を変更した。基準が後退したと受け取られるのを恐れたとも見えるが、労基局の高崎真一・計画課長は「東電の対応が遅れがちな点も踏まえた政治判断」と説明した。【井上英介】

 ◇基準高すぎる

 元原発作業員が東電に損害賠償を求めた訴訟で原告代理人を務めた鈴木篤弁護士は「原告は年間70ミリシーベルトの外部被ばくで多発性骨髄腫が労災認定されたが、5ミリシーベルトで白血病が労災認定されたケースもある。今回の内部被ばくには絶句するしかない」と話す。その上で「100ミリシーベルトという基準は高すぎる。そもそも、内部被ばくの基準がなかったのは大問題だ」と指摘している。
 ◇3月の作業員、2割未検査

 被ばく線量が250ミリシーベルトを超えた作業員8人は、事故発生直後に構内で作業していた。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「発生から1週間はマスク着用の徹底や空気中の放射線測定ができていなかった」と説明する。

 最初に250ミリシーベルトを超えたことが判明した2人は、3、4号機の中央制御室の運転員で、3月11日はマスクを着けていなかった。新たに判明した6人について東電は「マスク着用の指示は出した」としているが、現場でどの程度徹底されていたかは不明だ。

 現状把握も追いついていない。放射性物質がピークだった3月に同原発で作業していた3726人のうち、内部被ばく量が判明しているのは約6割の2367人。残る1359人の半分は検査すら受けていない。

 測定器(ホールボディーカウンター)はわずか4台しかない。東電は「よそから運ぶにも専門業者に依頼したり設置場所の補強工事が必要で時間がかかっている」と釈明する。

 現場から約20キロ離れた前線基地の「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町)で車両の除染作業に携わる下請け会社の男性(28)は「内部被ばくの基準を設けるのは当然だが、それ以前に検査の環境を整えるべきだ」と訴える。ホールボディーカウンターが足りないためなかなか検査を受けられず、作業員の不満がくすぶっているという。

 東電は5月に見直した工程表に「作業環境の改善」を盛り込んだ。休憩所の増設など一部は着手しているが、「上限超え」が増える中、作業に支障が出る恐れもある。

 松本本部長代理は会見で「作業員が足りなくなる事態にはならない」と強調した。経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は「作業員が足りなくなれば、他の電力会社などの協力で人材を確保しながら、工程に支障がないよう努めたい」と話す。小林圭二・元京都大原子炉実験所講師(原子核工学)は、「東電や政府はメンツをかけて工程表通りに復旧を進めようとしているが、作業員の人命や健康を軽視している」と憤る。【岡田英、久野華代、袴田貴行、河内敏康】

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 ■福島第1原発での限度を超えた被ばくを巡る動き■

4月27日 50代女性社員が法定の限度(女性は3カ月で5ミリシーベルト)を超える17.55ミリシーベルトの被ばくと東電が発表

5月 1日 40代女性社員が7.49ミリシーベルトの被ばくと東電が発表

  30日 30代と40代の男性社員が、緊急時被ばく限度の250ミリシーベルトを超える被ばくの可能性があると東電が発表

6月 7日 厚生労働省が労働安全衛生法に基づき福島第1原発に立ち入り調査

  10日 放射線医学総合研究所の評価で30代社員の被ばく量は678ミリシーベルト、40代社員は643ミリシーベルトと判明。経済産業省原子力安全・保安院が東電を厳重注意。厚労省が是正勧告

  13日 新たに6人が250ミリシーベルトを超えた可能性があると厚労省が発表

  14日 細川律夫厚労相が、内部被ばくが100ミリシーベルトを超えた作業員は作業から外すよう東電に指示

毎日新聞 2011年6月15日 東京朝刊

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