2011/06/28

行政は、速やかに学校ごと疎開するという決断をすべきである

6月24日、福島地裁郡山支部に、郡山市を相手に郡山市の小中学生14名が年1ミリシーベルト以下の安全な場で教育を実施するよう求める裁判(仮処分)を申し立てました。その記者会見用資料が手元に届きました。とても重要なことが書かれているので、ぜひ読んで下さい。

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記者会見用(子供の人格権に対する妨害排除としての差止請求裁判の要旨)
2011 年6 月24 日

1 本日、福島県郡山市内に居住する小学生、中学生14名の親の皆さんが、子供たちの法定代理人として、郡山市を相手取り、福島地裁郡山支部に対し、民事仮処分を申し立てた。 申立ての趣旨は、次のとおりである。

1 債務者は債権者らに対し、別紙環境放射線モニタリング一覧表で測定高さが50cmまたは1mのいずれかにおいて空間線量率測定値の平均値が0.2μSv/h以上の地点の学校施設において教育活動を実施してはならない。

2 債務者は債権者らに対し、別紙環境放射線モニタリング一覧表で測定高さが50cmまたは1mのいずれかにおいて空間線量率測定値の平均値が0.2μSv/h以上の地点以外の学校施設において教育活動を実施しなければならない。

3 申立費用は債務者の負担とする。
との裁判を求める。

2 郡山市をはじめとする福島県内の子供たちの多くは、福島原発事故によって、すでに外部被曝だけでも1ミリシーベルトを超える被曝をしている(私たちの計算では、郡山市だけでも地域によっては、すでに6ミリシーベルトを超える)か、このままでは確実に1年に1ミリシーベルトを超える環境下で生活している。年間1ミリシーベルトというのは、国際放射線防護委員会(ICRP)が一般公衆の線量限度として定めるところであり、我が国においても、原子炉等規制法、同法施行令、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則、同規則に基づく線量当量限度を定める告示等によって、原子力発電所が一般公衆に対し、年間1ミリシーベルト以上を超える被曝をさせないことを求めてきた。

私たちは、ICRP自体が、もともと核を積極的に利用することを目的として作られた組織であること、欧州放射線リスク委員会(ECRR)では、ICRPよりもはるかに厳しい基準(一般公衆では10倍厳しい)を設けていること等から、ICRPの基準に無批判に依拠することは相当でないと考えるが、少なくとも、この基準は最低限守られるべきものであると考える。

ところで、人は、呼吸及び飲食によって放射性物質を体内に取り込み、内部被曝にも晒される。しかし、最も危険な内部被曝であるアルファ線とベータ線の線量を外部から測定するのは不可能である。また、成長期にあって細胞分裂が活発な子供は、大人よりもはるかに放射能に対する感受性が高い。そうだとすると、福島の子供たちについて、外部被曝だけでも年間1ミリシーベルトを超えるような環境に晒すことは断じてならない。

この点について、文科省は、このICRPが定めた基準や、我が国における従来の基準すら大幅に上回り、子どもについて年間20ミリシーベルト、1時間あたり3.8マイクロシーベルトの被曝まで許容するとしたが、この判断にはただ戦慄を覚えざるを得ない。文科省は、その後、学校での被曝量について年1ミリシーベルトを目指すと修正したが、20ミリシーベルトの基準を撤回したわけではない。
 電離放射線障害防止規則(昭和47年9月30日労働省令41号)によれば、実効線量が3か月に1.3ミリシーベルト、すなわち年間5.2ミリシーベルトを超えるおそれのある区域は「管理区域」とされ、事業者は、必要のある者以外の者を管理区域に立ち入らせてはならないと定めている(3条1項、4項)。年間20ミリシーベルトという環境は、管理区域よりもはるかに危険なのである。過去に、原発で働いた労働者について、5.2ミリシーベルトの被曝によって労災認定がなされた事例がある。これは、年間20ミリシーベルトの環境下であれば、わずか3か月で到達する数値である。

チェルノブイリ原発事故の際は、1平方メートルあたり55万5000ベクレルの放射能が検出された地域は一時移住地域とされたが、これは空間線量1.968マイクロシーベルトに相当するとされて
いる。文科省の基準は、チェルノブイリ事故の一時移住地域の基準を大きく上回るのである。

 ICRPは、事故収束時の基準として、1?20ミリシーベルトを提示しているが、事故収束時だからといって人が放射能に強くなるわけではない。特別な異常時だからリスクがあっても我慢させようという考え方であるが、福島原発事故の収束の見通しは全くたっておらず、今後、多量の放射能に囲まれて生活するのは福島の子供たちの日常なのであって、特別な日々ではないのである。

3 福島県では、すでに、かなりの数の子供たちが、自主避難して福島の地を離れた。しかし、依然、大多数の子供たちと親とは、行政が実施している安全宣伝と危険性を伝える情報、先生や友だちと別れたくないという思い、自主避難する場合の経済的負担等で思い悩み、不安な日々を送っている。メディアでは、子供たちの間に体調不安が広まっていると報道されている。

すでに1ミリシーベルトを超える被曝をしてしまった子供たちを、そしてこのままではやがて1ミリシーベルトに達する子供たちを守るためには、校庭や通学路の除染だけではもはや不十分であって、今後の外部被曝及び内部被曝を抜本的に改善した新たな環境を子供たちに提供するしか方法がない。自主避難をしたくてもできない家庭も多い。避難するか否かを各家庭の判断に任せるべきではない。子供と避難民を粗末にするような国には未来はない。いま、行政は、速やかに学校ごと疎開するという決断をすべきである。

  なお、子供たちが親と離れて暮らすことに不安を感じられる親もおられると思う。しかし、今は未来を見すえ、放射能の迫害から子供たちの生命・健康を守ることを最優先の課題とすべき緊急事態なのであり、この点をご理解頂きたい。

4 今回、郡山市内の子供と親たちが提起した仮処分は、端的にいえば、郡山市を相手に、郡山市が子供たちに対して負っている安全配慮義務の履行として、あるいは子供たちの生命、身体、健康を守るために、学校ごと疎開する措置をとることを求めるものである。

学校が疎開するとなれば、疎開先の選定、学校設備や宿泊先の確保、教員の労働条件の確保、そのための予算措置等、多くの困難な課題があることは承知しており、実質的には、国や他の地方自治体の強力な支援がなければ郡山市単独では、実現できないであろう。しかし、郡山市内の子供たちに対して直接に教育の義務を負担している郡山市が、まず、危険な地域の学校ごと疎開させるという決断をし、そのための支援を国や他の地方自治体に求め、費用は東京電力に負担させる等、叡智を働かせて子供たちを守る決意と行動に出ることを念願するものである。これは千年にいっぺんあるかないかの試練である。

以 上

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