通学路の凄まじい汚染 住民自身の手で放射性物質を取り除く試み

避難区域外の通学路に存在する平常時の3,000倍を超える放射線量

FNNニュース (動画あり 数日で見られなくなる可能性あり)
放射能から子どもを守れ 始動「除洗プロジェクト」
福島第1原発事故 住民自身の手で放射性物質を取り除く試みが始動しました。

福島市では、福島第1原子力発電所の事故による高い放射線量が、子どもの健康に及ぼす影響に懸念が強まっています。住民自身の手によって、子どもの生活圏から放射性物質を取り除く「除染」を行う試みが始動しました。

福島第1原発からおよそ60kmの福島市には、高い放射線量のホットスポットが存在する。明らかにしたのは、研究者と地元市民による放射能除染・回復プロジェクトのメンバーだった。

3週間前の調査では、平常時の560倍にあたる放射線量、28マイクロシーベルトを記録した通学路で、新たな現象が起きていた。95.58、99.50、100.93などと、測定器が示す数値に緊張感が高まる中、152.76マイクロシーベルトの表示も出た。

名古屋大学環境学研究科の高野雅夫准教授は、「相当高いですよね、これね。なんて言いますか、あまり居たくないですね、ここに。そんなレベルです」と語った。避難区域外の通学路に存在する平常時の3,000倍を超える放射線量。原発から飛散した放射性物質が、雨などで流されて集まり、局部的に濃縮された可能性があるという。

京都精華大学人文科学部の細川弘明教授は、「ほっといて改善するっていうことは、まったく期待できないので、少なくとも子どもが普通に暮らす環境で、この状態を放置するということは考えられない」と語った。

通学路のホットスポットについて、5月26日、文科省の坪井 裕審議官は、「町全体とか通学路全体が高いということではないと思いますので、たぶん局所的だと思いますが、それはちょっと実測値を見ながら、またどういった形でそれを除くことができるかは、測定のあとで考えていかなければいけない問題かと思います」と話した。
文科省は、通学路の被ばく対策に腰が重い

こうした中、京都精華大学人文科学部の山田国廣教授らは、住民が自らできる放射性物質の除染テストを開始した。京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「まず草を刈りましょう」と語った。現在、確認されている放射性物質は、セシウム134と137。除染作業はすなわち草刈りだが、高規格マスクにゴム手袋、ゴーグルなどを装着して、内部被ばくを防止する必要がある。

除染前に152.76を示した数値は、除染後は5.69と劇的に下がった。京都精華大学人文科学部の細川弘明教授は、「草の葉っぱにセシウムが積もっていた状態だと思われますので、草を取ったのが一番、効いていますね」と語った。

アスファルトに付着した土は、粘着テープで除去し、除染の仕上げはとろりとした透明の液体だった。実は100円ショップでも販売されている洗濯のりで、「山田式除染」の最大のポイントだという。

京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「(ポイントは)水でも流さないというか、全部こういうテープではがして、最後、はがし液(PVA洗濯のり)を塗って、乾燥してからはがします。それで完了です」と語った。

一般に除染で広く採用されているのが、高圧洗浄水で流す方法だが、水で洗い流すことで放射能汚染を拡大させていると、山田教授は指摘する。京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「固めて取るか、とにかくフィルム、(洗濯のりで)膜を作って取るかということをしないと、結局、まあ言えば汚染の押しつけ合いになるというか」と語った。

除染作業は、誰でも入手できる材料や道具で可能という。次は住宅の除染に、持ち主の男性も参加して取りかかった。住宅の放射線量が高いポイントは、軒下や雨どいなど、雨水が集中する場所だった。計測してみると、10マイクロシーベルトを超えて、計測不能となってしまった。

住宅敷地の中にあるホットスポットを8cm掘り下げて、汚染されていない土をかぶせると、0.451、0.454と、数値が下がった。しかし、汚染された土を除去しても、放射線量が高い部分があった。雨水をためておくタンクとパイプ周りで3.122マイクロシーベルト、そして庭の土や草木、敷石でも放射線量が高い値を示した。

2.425マイクロシーベルトは、思い出の詰まったブルーベリーの木の周辺だった。これを伐採して、表面およそ5cmの土を入れ替えたところ、0.418マイクロシーベルトに下がった。

一方、今回の除染テストで課題も見つかった。放射性物質を固めてはがすはずの洗濯のりが、雨の影響を受けて思うように固まらなかった。京都精華大学人文科学部の山田国廣教授は、「ほとんど取れてない。乾燥しないとだめ」と話した。

さらに問題なのは、除去した放射性物質の行き先だった。
今回、家の裏側を掘り込み、汚染された土などを一時的に保管したが、引受先は未定となっている。1年半前、この家を新築した吉川寛之さんは、被ばくを避けて、妻が2人の子どもを連れ、他県に避難していた。

吉川寛之さんは「学校に行くまでとか、福島市の中でみんなこう、全体的にそういう(除染する)ふうになっていかないと、子どもたちはやっぱり帰って来られないですね」と話した。
今回のテストをもとに、山田教授らは、近く地域住民が実施できる除染マニュアルを作成、提案していくという。
 (06/14 00:39)


前回(5月26日と27日)の放送の録画は、下記で御覧いただけます。
揺れる子供の安全 放射線の現実:放射能除染・回復プロジェクト
放射線に揺れる教育現場

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