避難基準20ミリシーベルトを批判 仏の汚染調査団体 内部被ばく4割

基準20ミリシーベルトを批判 仏の汚染調査団体 (6月1日 21:12 共同通信)

 福島第1原発事故を受け、5月下旬に福島県などで放射線量を測定したフランスの放射性物質の汚染調査団体CRIIRADのシャレイロン研究所長は1日、都内の日本記者クラブで記者会見し、日本政府が計画的避難区域の基準とする年間20ミリシーベルトの積算被ばく線量について「高すぎる」と批判した。

 シャレイロン氏は、事故直後に周辺住民は大量に被ばくしているとみられ、数値をより低く設定する必要があると指摘。「20ミリシーベルトという基準は外部被ばくだけで、呼吸や汚染された食品の摂取による内部被ばくは含まれていない」と批判した。(共同)


福島からの避難者ら4割が内部被曝 長崎大病院調べ (6月2日 中国新聞)

 福島第1原発事故を受け、救援活動などで現地入りした人や、現地から長崎県に避難している人たちを長崎大病院(長崎市)などが調べたところ、約4割が内部被曝(ひばく)していることが分かった。原発作業員以外の体内放射能の測定結果が明らかになるのは初めて。健康影響は考えなくていいレベルという。同大の研究グループは5日、広島市中区で開かれる「原子爆弾後障害研究会」で報告する。

 同大病院は3月14日から、福島県に派遣された大学や長崎県職員のほか被災地からの避難者を対象に、ホールボディーカウンター(全身測定装置)を使って体内放射能を検査している。同月末までに検査を受けた計87人を分析したところ、通常は検出されない放射性ヨウ素131を34人(39%)から、セシウム137を22人(25%)から検出した。

 ヨウ素は体重1キロ当たり平均8・2ベクレル、セシウムは同12・5ベクレルだった。人間(成人)の体内には通常でも、放射性物質のカリウム40が50~70ベクレル存在することから、健康影響はないと考えられるという。

 研究グループに参加した長崎大先導生命科学研究支援センターの松田尚樹教授は「ヨウ素やセシウムの値は予想の範囲内だった。呼吸を通じて取り込んだものが大半ではないか」とみる。4月以降に福島県内に入り、測定を受けた人の検出量はゼロに近づいているという。

 松田教授は「早期の内部被曝結果がデータとして現れた。原発との距離や方向、滞在時間などの行動パターンと合わせて解析することで、今後の研究に生かせるのではないか」と話している。


5月23日参議院行政監視委員会での小出裕章さんと孫正義さんの発言 (抜粋)

小出
日本には、もちろん、放射線に関する被ばくの法律があります。一般の方々に関して言えば、1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくは許さないという法律があります。そして、1平方メートルあたり4万ベクレル以上の汚染があるところは放射線の管理区域にしなければいけないという法律もあります。

孫正義
福島の子どもたちを原発労働者なみの20ミリシーベルトのレベルで放置していいのか。今までの政府報告は、ガンマ線だけの報告しかされていない。疑問を持っている。特に、体内被ばくについて再検討していただきたい。

小出
3月15日の東京の空間線量を測定した。ヨウ素、テルル、セシウム、1立方メートルあたり数百ベクレル。1986年にチェルノブイリから飛んできた量の約1000倍、それを東京の人は呼吸で吸い込んでしまっていた。内部被ばくで換算すると1時間吸っただけで約20マイクロシーベルトになってしまう、というくらいの被ばく量でした。


私は現在、4台の線量計を持って毎日見ています。政府が発表している新宿で0.07マイクロシーベルトくらいの数字が発表されていますが、概ねその倍くらいの数値が私の線量計では出ています。政府が発表しているのは、ガンマ線だけの数値で、私のはガンマ、アルファ、ベータの3つとも合計した線量を示すものでした。体内被ばくなどを考慮すると、トータルの線量で見るべきではないか、というのが 素朴な疑問です。 小出先生どうなんですか?

小出
今、孫さんが非常に重要なことを御指摘下さって、いわゆるガンマ線による外部被ばく線量と空気中の放射性物質を吸い込んで内部被ばくをする場合の線量とは別々に考えなければいけないのです。普通、政府が公表している、あるいは、マスコミに流れているのは、1時間あたり何マイクロシーベルトというのが公表されています。それは外部のガンマ線被ばく線量だけを公表しています。私、先ほど東京に飛んできた放射能の空気を1時間吸入して20マイクロシーベルトの内部被ばくをしたと話しましたが、そのときの外部被ばくは、1時間あたり2マイクロシーベルトでした。つまり、内部被ばくが10倍多いということです。


内部被ばくの方が怖いわけですよね。

小出
そうです。


内部被ばくの方がはるかに怖いのに、一番怖い体内被ばくのそれを線量として発表しないというのが、何か意図があるのか、何なのかというのが僕には分からない。今日、この場で先生方がチェックされるべきは、なぜ体内被ばくを議論しないのか。それを議論するのに必要なベータ、アルファも合わせて計測し公表すべきではないか。


内部被曝の危険性 (ウィキペディア)

内部被曝は被曝のしかたが外部被曝とまったく異なり、きわめて危険である。

内部被曝では、飛距離が短いアルファ線、ベータ線の全エネルギーが電離(電子を吹き飛ばすこと)に費やされ、人体に被曝を与える。これに対して、外部被曝では、飛距離の短い放射線は届かず、ほとんどガンマ線だけに被曝する。また、体外に放射性物質がある場合、放射線は四方八方に放射されるので、身体の方に来るのはほんの一部である。したがって、内部被曝の場合は外部被曝の場合にくらべて桁違いに大きな被曝線量を人体に与える

放射性の微粒子が非常に小さい場合、体に吸収され、親和性のある組織に入って、沈着、停留する。 放射性物質が体の同じ場所にとどまると、集中被曝の場所ができる。つまり、内部被曝には局所性と継続性がある。繰り返し被曝することによってDNAが変性してゆき、癌になる危険が高まる

外部被曝では低線量(少量)の被曝とされる場合でも、同じ放射性物質が体内に入った場合は、桁違いに大きな被曝線量となる[13]。

第二次世界大戦後に放射線被曝によって死亡した人数を欧州放射線リスク委員会は6500万人以上と試算している[14]。一方、国際放射線防護委員会(ICRP)は117万人と試算している。この差は内部被曝を計算に入れるかどうかのちがいである[15]。


内部被ばく4700件 県外原発で働く福島出身作業員、事故後立ち寄り
(毎日新聞)

 ◇周辺住民にも不安

 東京電力福島第1原発の事故後、福島県外で働く同県出身の原発作業員から、通常ならめったにない内部被ばくが見つかるケースが相次いでいる。大半は事故後に福島県に立ち寄っており、水素爆発で飛散した放射性物質を吸い込むなどしたとみられる。周辺住民も同様に内部被ばくした可能性もあり、福島県内の一部自治体は独自に検査を検討している。【日下部聡、石川淳一、町田徳丈、袴田貴行、池田知広】

 ◇時間と共に排せつ、半減期7~90日

 経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長が16日の衆院予算委員会で明らかにしたデータによると、3月11日以降、福島第1原発を除いた全国の原子力施設で、作業員から内部被ばくが見つかったケースが4956件あり、うち4766件はその作業員が事故発生後に福島県内に立ち寄っていた。柿沢未途議員(みんなの党)の質問に答えた。

 保安院によると、体内からの放射線を測定できる機器「ホールボディーカウンター」による検査で、東電が内部被ばくの目安としている1500cpm(cpmは1分当たりに検出された放射線量を示す単位)を上回った件数を電力各社から聞き取った。1人で複数回検査を受けるケースがあるため、件数で集計した。1万cpmを超えたケースも1193件にのぼった。

 いずれも福島第1原発近くに自宅があり、事故後に家族の避難などのために帰宅したり、福島第1、第2両原発から他原発に移った人たちとみられる。

 柿沢氏によると、北陸電力志賀原発(石川県)で働いていた作業員は、3月13日に福島県川内村の自宅に戻り、数時間滞在して家族と共に郡山市に1泊して県外に出た。同23日、志賀原発で検査を受けたところ5000cpmで、待機を指示された。2日後には1500cpmを下回ったため、作業に戻ったという。

 取材に応じた福島第2原発の40代の作業員男性は第1原発での水素爆発以降、自宅のある約30キロ離れたいわき市で待機していた。その後、検査を受けると2500cpmだった。「大半が(半減期の短い)ヨウ素で数値は(時間の経過で)下がると思うが、不安だ」と男性は話す。

 同県二本松市には「市民から内部被ばくを心配する声が寄せられ」(市民部)、市は乳幼児や屋外作業の多い人などを選び、県外のホールボディーカウンターで内部被ばくの有無を測定することを検討している。

 ◇扉ゆがむ棟「そこで食事すれば体に入って当然」 福島第1の作業員

 福島第1原発で作業拠点となっている免震重要棟は、3月に起きた1、3号機の水素爆発で扉がゆがみ、放射性物質が一時入り込みやすくなっていたという。40代の作業員男性は「そこで食事しているから(放射性物質は)体に入っているでしょう」とあきらめ顔だ。「『ビール飲んで(尿で体外に)出しゃいいよ』って感じですよ」

 ◇空気中線量高く、機器測定不能に

 今月現場に入った作業員男性(34)は内部被ばくの検査態勢の不十分さを懸念する。「周りのほとんどは検査を受けていない。特に20代の若手が不安がっている」。東電は3カ月に1回の定期検査のほか、恐れのある時の随時検査を定める。だが今月16日現在、検査したのは全作業員の2割程度の約1400人、このうち結果が確定したのは40人にとどまる。最も高い線量を浴びた作業員は240・8ミリシーベルトで、うち39ミリシーベルトは内部被ばくだった。

 東電によると、同原発のホールボディーカウンター4台は空気中の放射線量が高すぎて正確に測定できず、使えるのは福島第2原発といわき市の東電施設、柏崎刈羽原発の3カ所のみ。今後増設するとしているが、内部被ばくした場合、作業に従事できないのが通例だ。県内のある下請け会社社長は「このままでは福島の作業員が大量に失業する可能性がある」とも懸念する。

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 ■ことば
 ◇内部被ばく

 呼吸や飲食などで放射性物質を体内に取り込み、体内から放射線を浴びること。体外からの外部被ばくに比べ継続的で危険が高い。体表から10万cpmを超す線量を検出すれば放射性物質を洗い落とす「除染」が必要とされるが、東電は内部被ばくの恐れがあるとする目安を、ホールボディーカウンターで1500cpm超の場合としている。大量の内部被ばくはがんになるリスクを高める一方、時間と共に排せつされ、排せつも含めた「半減期」は成人ではヨウ素131で約7日、セシウム137で約90日。

毎日新聞 2011年5月21日 東京朝刊

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