飯舘の少女「危ないからもっと早く避難すべきと言ってほしかった」

原発に何の責任もない子どもたちから悲痛な叫びが届き始めた。原発に責任がある私たち大人は、この叫びにどう答えるのか。さらに文部科学省は、「安全基準」を20倍にして、幼児も含めた子どもたちの被害を拡大しようとしている。

東電に悲痛な叫び 計画的避難区域・飯舘の少女

 東京電力の鼓紀男副社長が30日、村内全域が計画的避難区域に指定された飯舘村と一部地域が指定を受けた川俣町で住民説明会を開き、住民に謝罪した。4月22日の指定以来、幹部が現地を訪れ、謝罪するのは初めて。これまでの避難と異なり、避難開始までの期間に住民がいかに生活基盤を確保するかが重要となる中、参加者からの質問は「いつ、どのように補償を開始するのか」といった補償問題に集中したが、東電側からの明確な答えはなく、避難開始への不安を残す結果となった。
 「私が将来結婚したとき、被ばくして子どもが産めなくなったら補償してくれるのですか」。人口約6100人全てが避難対象となる飯舘村で行われた説明会。原発事故から1カ月半が経過してようやく謝罪に訪れた東電側に対し、住民は怒りをぶつけ、将来の不安を悲痛な叫びとして訴えた。
 出席した村民約1300人が見守る中、同村飯樋の高校1年生渡辺奈央さん(15)は、将来の被ばくリスクについて質問した。鼓副社長は「とても重い質問。影響が出ないようにしたい」と答えると、「危ないからもっと早く避難すべきと言ってほしかった」と対応の遅さを指摘した。
(2011年5月1日 福島民友ニュース)


<子どもの生命を20倍も危険にする基準をわずか2時間で決定>
少女からの魂の叫び声が上がる中で、原子力安全委員会は、放射線量の基準を20倍の20ミリシーベルトに引き上げることを委員会も招集せず、わずか2時間で「妥当」と判断した。

もともと原子力安全委員からの子どもは10ミリシーベルト(これでも高すぎる)という意見を無視して20ミリシーベルトに引き上げた文部科学省の罪はさらに重い。

西日本新聞1面トップニュース(5月1日朝刊)より 
学校活動放射線量基準 安全委、招集せず「妥当」
文科省が助言要請 議事録もなし

審議2時間で「妥当」判断 原子力安全委、学校基準で 

 福島第1原発事故で、文部科学省から小中学校などの屋外活動を制限する基準値への助言を求められた国の原子力安全委員会(班目春樹委員長)が、正式な委員会を招集せず、助言要請から約2時間後には「妥当だ」との助言をまとめ、回答していたことが30日、関係者の話で分かった。

 安全委事務局は「臨機応変の対応だった」と反論するが、正式な委員会が開かれなかったため議事録も作られておらず、助言までに至る議論の内容が確認できないことも判明。審議の検証ができなくなった異例の事態に「国の政策を追認しただけだ」と批判の声が上がっている。

 国は、目安を一般人の年間許容限度の20倍という高さの年間20ミリシーベルトとした根拠について国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に準拠したとしているが、子どもに高い放射線量の被ばくを認めることになるため、内外の専門家から批判が続出。29日、内閣官房参与の小佐古敏荘・東大大学院教授が辞任する一因ともなった。

 関係者によると、文科省などが「年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達するかどうかを目安とし、毎時3・8マイクロシーベルトを学校での屋外活動の基準とする」との原案への助言を安全委に求めたのは19日午後2時ごろ。安全委側は正式な委員会を開かず「委員会内部で検討し」(関係者)、午後4時ごろに「妥当だ」と回答した。だが、議事録が残っていないため、安全委内部でどのような議論が行われたかは明らかではないという。

 安全委事務局は「9日ごろに文科省から相談したいとの依頼があり、委員らが複数回議論、その都度結果を文科省に口頭で連絡していた。正式な会議は開かなかったが、意思統一ができれば助言はできる」とコメント。「(検討時間の)妥当性については発言する立場にない」としている。

 基準の撤回を求めている環境保護団体、FoE(地球の友)ジャパンの満田夏花さんは「独立した規制機関であるはずの安全委が、ほとんど議論もせずに国の政策を追認したことは明らかだ」と指摘。「子どもの健康を守るという重要な責務も、社会への説明責任もまったく果たしていない」と批判している。

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子どもの屋外許容線量、緩い基準に厳しい批判 (5月1日 中国新聞)

 福島第1原発事故で、放射線が検出された学校について、文部科学省が屋外活動制限の可否を判断するのに「年20ミリシーベルト」と、一般人の年間許容限度の20倍という高さの被ばく線量を目安としたことに、激しい批判が噴出、内閣官房参与の学者の抗議の辞任にも発展した。菅直人首相は基準を妥当とした国の原子力安全委員会の見解を根拠に正当性を主張したが、民主党内からも撤回を求める声が上がり、政権にとっての「大きな爆弾」(党関係者)となる可能性も出てきた。

 ▽学者生命

 「年20ミリシーベルト近い被ばくは業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは受け入れがたく、強く抗議し見直しを求める。参与の形で容認したと言われれば学者としての生命は終わりだ」―。29日、記者会見した小佐古敏荘こさこ・としそう・東大大学院教授はあふれる涙をこらえながら、こう語った。

 同教授が問題視するのは文科省が19日、福島県の小中学校などでの屋外活動を制限する放射線量として「年間の積算放射線量20ミリシーベルト」との目安を基に「屋外で毎時3・8マイクロシーベルト」と決めたことだ。

 民主党関係者によると文科省は、厳しい基準を当てはめた場合、学校の休校や疎開が必要になることを指摘。「疎開先の学校でのいじめや放射線に対する不安など、疎開や休校で子どもたちが受けるストレスが懸念される」と説明したという。

 ▽わずか2時間

 基準値の裏付けとなるのが、これを妥当とした原子力安全委の見解だ。30日の衆院予算委員会で菅首相は「安全委の助言を得ながら判断した。場当たり的ではない」と反論。高木義明文科相も「子どもの心理的なことも、安全委の助言も踏まえ取りまとめた」と述べた。

 だがその直後に、安全委員会が助言を求められてから2時間後に「政府の基準案は妥当」と回答していたことが判明。政権側の「お墨付き」は、その妥当性が厳しく問われる事態になった。

 ある民主党議員は「文科省の課長補佐が決めたことで、決め方自体がおかしい。安全委も機能しなかった」と批判。原口一博前総務相も短文投稿サイト「ツイッター」で、基準見直しの必要性を主張するなど、党内の批判も強まる一方だ。

 ▽進まぬ対策

 市川龍資いちかわ・りゅうし・放射線医学総合研究所元副所長が「できる限り現場の放射線量を下げる努力をすることが求められる。学校それぞれの事情に応じて除染や場所の移転など合理的な対応を取った上で、基準を決めるべきだ」と指摘するように、専門家の中には放射性物質を取り除くことの重要性を指摘する声が強い。

 だが、政府は25日の段階でも「除染については考えていない」(文科省学校健康教育課)と危機感が薄く、30日になってようやく「(除染など)可能なことはできるだけやりたい」(枝野幸男官房長官)、「(校庭などの)土を持っていく場所など課題があるが、しっかり取り組むよう指示している」(菅首相)と前向きの姿勢を見せた。

 しかし、同じ日に記者会見した文科省の坪井裕つぼい・ひろし審議官は「(土の除去を含め)線量率が下がる取り組みはやっていきたい。ただ具体的な支援についてはまだ検討していない」とコメント。混乱が大きくなるばかりで、具体的な除染の方策は見当たらない。

 原子力資料情報室の沢井正子さわい・まさこさんは「年20ミリシーベルトに設定した根拠と理由が示されていないし、子どもにどういう影響が出るかの説明もない。そういうところで子どもを過ごさせるというのか」と憤っている。

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