「大人の人に伝えたいこと」 小学6年生 鷲野天音

福島原発事故前の2010年に、小学6年生の鷲野天音君が書いた「大人の人に伝えたいこと」

◆「大人の人に伝えたいこと」 小学6年生 鷲野天音

 僕が住んでいる愛媛県には原子力発電所があります。
 去年、ぼくが5年生の時、その原子力発電所に、フランスからMOX燃料が来ました。プルサーマル発電のためです。プルサーマル発電というのは、広島の原ばくウラン(一般の原子力発電所の燃料)と長崎の原ばくプルトニウム(高速増殖炉の燃料)をいっしょに核分れつさせて、タービンをまわす発電です。ウランもプルトニウムも危険な放射能を持っています。放射線というものは細胞の中の遺伝子をばらばらにしてしまうもので、ガンや白血病の原因となります。広島や長崎には、まだ今も後遺症で苦しんでいる人たちがいます。それなのに日本は世界第3位の原子力発電の国です。しかも、日本は世界第3位の火山国です。火山国だということは、地かく変動もよく起こります。もし、地しんが起きたらどうなるのでしょう。日本に原子力発電所は望ましいのでしょうか?

 もしなにも起こらなかったとしても、未来に、核のゴミとして残ってしまいます。

 CO2を出さないという理由で、原子力発電がさらに新しく建とうとしています。新しく作ると、きれいな海を埋め立てて、たくさんの命をうばい、住む所をなくします。それに原子炉を冷ますために、1秒で70トンの海水を、7度上げて、海に戻すことになります。もうこれ以上ぼくたちの環境をこわすのはやめてください。ぼくたちこどもも、あと何年かすれば、大人になります。ぼくたちの未来に汚れた海や山、空気や水、核のゴミを残さないでください。

 ぼくたちの未来に残してほしいのは、生き物のくらせる森、川、命、希望、そして大きくなったら、こんなことがしたいという夢が叶えられる社会です。

 地球の体積の99%は1000度以上あります。発電でいえば、この地球の熱を使う、地熱発電がいいとぼくは思っています。

 ぼくたちも一緒にやるので、大人の人も、勉強してほしいです。

 大人の人にやってほしいのは
●やりはじめたことの責任をとること。
●前のひとのやった無責任を、解決するようにがんばること。
●こわれてしまった自然を、元に戻す努力をすること。
●それから、これ以上自然をこわさないこと、です。

 未来に続く命のために美しい地球を創りましょう。
 よろしくおねがいします。

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★はじめよう!地熱発電 子ども署名から未来への提案

情報を発信するにあたって

この度は、息子天音の行動にご協力いただきありがとうございます。

彼がMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合燃料)のことに関心を持ち、感じ、調べ始めて請願にいたるまで本当にあっという間でした。

普段は本当に普通の小学5年生ですが、ことMOX燃料を使うプルサーマル計画については納得がいかず、何とかしたいと思う非常に強い意志が、私たち両親を巻き込みながら展開していきました。

彼が今回の行動を起こしたことについては、ことのはじめから彼の気持ちに寄り添ってきた家族でも正確に説明するのは難しく、そしてなお、文章で簡単に説明できるものではないと感じています。本人はあくまでも、感じたことを純粋に行動に移しただけなのですから。

そこで父親の立場から、今回のことを振り返って整理したいと思います。

私たちは四国の山の中に住んでおり、「自然と人の相互依存・共生関係の本来の姿を求め」、仲間と共に里山づくりをしています。私たちが生活しているこのスペースを「人を含めた生き物が安心して暮らせる場所を目指している」と訪問者に説明していることを、天音はよく知っています。このことと、伊方に原爆の材料のプルトニウムがやってきたということが大いに矛盾していると感じたようで、彼はこのことに納得しませんでした。

「世界は良くなって行っていると思っていた」と彼が言ったとき、

「お父さんに任せとけ!」と言えなかった自分は困り果てていました。

核の問題にまったくの無知ではないつもりでいましたが、原子力発電の問題に関しては、あまり知りたくないし、自分は関わりたくないとも思っていました。電気を使っているのだから、この事はなんとも言えないと考えていたのです。

そこで息子の「世界は良くなって行っていると思った」発言です。

私たちは原子力発電やプルサーマル計画について正確な情報を持っておらず、

妻とも相談し、MOX燃料を怖がっている彼に、できるだけ考えが偏らないように天音が欲しがる情報を集める手伝いをしていきました。図書館ではエネルギー関係や原子力の本、原発反対派の方が出しているブックレット、インターネットの情報。賛成派の人の意見、反対派の人の意見など…。

同時に、私たち両親も彼に続いてプルサーマル問題の学習を始めました。

本人が納得するまで、彼に寄り添いながら家族の問題として取り組みました。

ここではっきりしておきたい事があります。11歳の息子の署名活動や請願といった行動は、彼自身がプルサーマル問題についてのいろいろな考え・情報・選択肢の中から、彼の純粋な思考・判断において、責任を持って今回の行動にいたる選択していったということです。数日前に兄弟のように共に生活をしていた子ヤギが、病気で苦しみながら息を引き取った時に立ち会ったことも、彼の中の何かに影響したようです。

その時我々夫婦は、恥ずかしながら彼に代わって事を進めていける知識や意志・勇気・強さを持ち合わせていませんでした。

彼は本当にたくさんの思いを「言葉」にして我々に伝えましたし、私たち家族はそれについて話し合いをしました。彼の言葉と純粋さに何度も涙したことを覚えています。

彼の決断と普段には見られない非常に強い意志・使命めいた眼差しに、夫婦そろって困惑しました。そして夫婦で話し合った結果、このことに関しては、彼の踏み台になり、盾になり、彼の思いを遂げさせようと決断しました。

今回,開設したこのページは、「大人たち、ことに親や周囲の原発反対派と呼ばれる人が子どもを使ったのではないか・・」という憶測や、さまざまな意見が交錯する中、「プルサーマルはやめてください」といった、小学5年生の子どもとその家族として、私たちに起こった事実と、その経緯。 それから、未来につなぐ今後の展望をささやかながら、当事者としてきちんと記しておこうと考えたからです。彼の思いはあくまでも、今も変わっていません。「伊方のプルサーマルは何としても止めたい」ということです。彼の請願提出後、多くの大人たちが動き始めてくれたことを知って心強く感じています。一緒に学習をしてきた私たちも、今はプルサーマルについて知り、現時点での装荷、プルサーマル発電の開始は中止すべきだと思っています。

6月議会以降、プルサーマルに変わるエネルギーを家族で考え、学習しています。署名を集めているときに、たまたま、NHKの放送で知った地熱発電を中心としたクリーンエネルギーが基幹電力供給に繋がるのではないか、と今考えています。我々大人がプルサーマル発電に代わるものとして提案しながら、行動をしていこうと思っています。

子どもに教えられました。正しいと思うことに臆病にならず、勇気を持って安心して暮らせる未来のために考え、行動していきたいと思います。

       *        *

核のごみ 地層処分ムリ 人が20秒で死亡
   (2012年6月19日 東京新聞)

以下は、放射性廃棄物に関する参考情報です。

10万年の安全は守れるか 行き場なき高レベル放射性廃棄物
(2012年10月1日(月)放送 NHKクローズアップ現代)から抜粋

原発が生むゴミ 高レベル放射性廃棄物

先月(9月)、日本学術会議が原子力委員会に出した報告書。
高レベル放射性廃棄物の地層処分の方針を白紙に戻すべきだという重い提言でした。

原子力委員会 近藤駿介委員長「大変、ありがたく思っています。よく勉強させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。」

現在、高レベル放射性廃棄物の多くは青森県六ヶ所村に集められています。

地層処分が行われるまでの間、この貯蔵施設で一時的に保管しています。

「オレンジ色のふたがありますが、9個ずつ(廃棄物が)入っています。
1,400個ほどがもう入っています。」

高レベル放射性廃棄物は原発で使い終わった使用済み核燃料から生まれます。
日本では使用済み核燃料を再び燃料として使用するとされていますが、その処理の過程で極めて強い放射能を持つ廃液が出てしまいます。この廃液に高温で溶かしたガラスを混ぜステンレス製の容器に入れるとその後、固まった状態で閉じ込められます。

ガラス固化体と呼ばれる物質。
これが高レベル放射性廃棄物です。
一体、どれほどの放射能を持つのか。

発電に使われた核燃料の放射能は使用前の1億倍に増えます
ガラス固化体にした時点で放射能は少し下がりますがそれでも人が近づけば20秒で死亡するほど危険なものです。もとのウラン鉱石と同じレベルにまで低下するには10万年もの歳月を必要とします。

原発が生むゴミ 高レベル放射性廃棄物 10万年

そのため日本では地下300メートルより深い地層に埋め込む地層処分という方法が国の方針となっています。

地層処分 10万年の安全は

岐阜県瑞浪市。
ここで地層処分の研究が進められています。

地震国日本 問われる地層処分

しかし今回、日本学術会議は地層処分を行うのは地震の多い日本では困難だと結論づけました。

日本学術会議 検討委員会 今田高俊委員長
「千年から万年、10万年先なんていうのは、責任もって大丈夫と言えるような状況ではない。」

学術会議が一つの参考としたのは、地震学を専門とする神戸大学の石橋克彦名誉教授の意見です。

それまで、地震を起こす活断層を避けて処分すれば安全としてきた国の方針に対し、石橋さんは、活断層が見つかっていない場所でも大地震は起きると主張してきました。その根拠の一つとしたのが鳥取県西部地震です。

震度6強の大地震。
起きたのは活断層がないと考えられていた場所でした。

神戸大学 石橋克彦名誉教授
「第2次取りまとめ(1999年)の段階で日本列島の活断層は赤い線が引かれていて、地震の起こらない真っ白な土地が広大にあると言っているわけですけれども、2000年の鳥取県西部地震というのは、赤い活断層がまったく引かれていない所で、マグニチュード7.3の地震が起こってしまったわけですから。」

さらに東日本大震災から1か月後、福島県いわき市で起きた震度6弱の地震。このとき石橋さんが指摘していた、もう一つの問題が発生していました。地震による地下水の変動です。地震があったその日から住宅街の真ん中で大量の地下水が湧き出てきたのです。

「毎秒4リットルぐらい。」

産業技術総合研究所 地質情報研究部門 風早康平博士
「全然終わる気配がなくて1年半経っても出続けているということになっています。」

活断層がずれたことによって地下水の道に大きな力が加わり水を地表まで一気に押し上げたと考えられています。大きな地震が起きると岩盤という天然のバリアが機能しなくなる可能性があると石橋さんは指摘しています。

神戸大学 石橋克彦名誉教授
「今現在われわれの世代で『ここなら10万年間大丈夫です』という場所を選べるか具体的に指定できるかというとそれはできない。一言で言えば、この日本列島で地層処分をやるというのは未来世代に多大な迷惑をかけるかもしれない、かける可能性のある非常に無責任な巨大な賭けだと思う。」

ゲスト植田和弘さん(京都大学大学院教授)

●“原発のゴミ”問題 なぜ置き去りに?

これはやはり、放射性廃棄物だけ特別扱いするというか、そういうことが続いてきたことが、結果的にこういうことになったと思うんですね。実は一般の廃棄物については、1970年、公害国会のときに廃棄物処理法が出来ていますけれども、考え方としては、その廃棄物、生産をするというのは廃棄物が出るわけですが、その廃棄物をちゃんと処分できるという状況が作られないと、生産はできないんだと、こういうことだと思うんですね。

今、日本の工場で、最終的な処分の廃棄物の処分場所が決まってない工場はないと思います。あるとしたらそれは法律違反だと、こういうことになる訳ですね。

ところが、放射性廃棄物だけは1957年に、放射性廃棄物については、原発の場所で管理すると、こういうふうにされたままで、ずっとそれがそのまま続いてきてて、それが2000年のときに、やはりあふれ出そうになるわけですから、最終処分を決めないといけないという法律が出来て、2002年から公募するというようなこともしますけれども、結果的には全く応募もないということで、ずっと放置されてきたと、こういうことかと思います。

●福島第一原子力発電所の事故で見つめざるをえなくなったのか

福島の原発事故というのは、もちろん、事故リスクの問題をね、原発の事故リスクを大きく顕在化させたと思いますが、同時に、原発という技術の持っているいろんな問題を表に出したと、その一つとして、放射性廃棄物の問題はあったと思いますね。

これは、私は廃棄物の問題を考えるときの原則なので、これは産業廃棄物に共通していると思うんですが、やっぱり何か生産するというときは、廃棄物がどうなってるかというのが、明確にならないと本当は生産してはいけないと、そういう原則が本当は確立しないといけない、適用されるべきだったと思うんですね。

でも、放射性廃棄物の問題は、やはり私たちも電気の、コンセントの向こう側のことをあまり考えないまま、電気を使ってた面がやはりあったと、そういうこともあったと思います。

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3254/1.html

人間が20秒で死ぬ「ガラス固化体」管理は10万年!?〈週刊朝日〉
(2012年10月26日号 週刊朝日)から転載

 日本学術会議が高レベル放射性廃棄物をパックしたガラス固化体の地層処分の見直しを提言し、原子力委員会に報告した。早稲田大学国際教養学部教授の池田清彦氏はそのニュースを聞いて、学術会議もようやくまともなことを言い出したという想いと、人類は10万年も先まで生存しているのだろうかという想いが錯綜し、ちょっと複雑な気持ちになったという。

*  *  *

 御承知の方も多いと思うが、ガラス固化体は使用済み核燃料を再処理する際に必ず生産されるもので、極めて強い放射能を有し、そのすぐそばに人間が立つと約20秒で致死量の放射線を浴びるというすさまじい物体だ。現時点までに日本国内の原発で使用された核燃料をすべて再処理した場合、約2万6000本のガラス固化体になると推定される。

 問題はガラス固化体の放射能は10万年経たないと安全なレベルにならない点だ。そこで30~50年ほど冷却しながら保管したあとで、地下300メートル以深の地層に埋めてしまおうというのが地層処分だ。しかし、地震のみならず、火山大国日本で、10万年も安定した地層を探すことは不可能であり、別の方法を考えろと学術会議は言っているわけだけれど、別の方法はあるかと言うと、どう考えてもないんだよね。

 原発を動かす限り、放射性廃棄物はどんどん蓄積し、未来世代は膨大な国の借金のみならず、膨大な量の放射性廃棄物に悩まされることになりそうだ。借金はハイパーインフレを起こせばチャラにできるが、放射性廃棄物にはいかなる手段をもってしてもチャラにできない。日本の政策を決定する議員や官僚は、今さえ凌げれば後は野となれ山となれと思っているのであろう。

 それにしても10万年も管理しなければ安全にならない装置って、いったい何なんだろう。現生人類はわずか1万年。化学燃料を大量に使い出してから200年しか経っていない。10万年とは言わず、1万年後のガラス固化体の面倒を誰が見るのだろう。自民党も民主党も電力会社もまず間違いなく消滅していると思いますがね。

池田清彦

福島のフレコンバッグの山

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