2010/05/05

“古き良き沖縄”が残る離島で、エコ・リゾート会社が環境破壊

“古き良き沖縄”が残る離島で、エコ・リゾート会社が環境破壊

■竹富島(沖縄県)<上>

 人口340人の小さな島が、大規模リゾート開発の波に呑まれようとしている。

 沖縄県八重山郡竹富島は、石垣島からフェリーで約10分、“古き良き沖縄”の景観を今なお残す離島だ。国の「重要伝統的建造物群保存地区」にも指定されている。ハイビスカスやブーゲンビリアなどの花に囲まれ、赤瓦の家々が連なり、きれいに掃き清められた白砂の道を水牛車が通っている。

 リゾートの開発者はエコ・リゾートで有名な「星野リゾート」で、竹富島東部海岸アイヤル浜付近の83haにコテージ約50棟、プールやレストラン等を建設する。今年中の完成を目指しているという。

【環境調査も埋蔵文化調査も行わず森を皆伐】

  ’07年8月、開発者側は「測量」を名目に、リゾート開発予定地を含む6.7haの森林を伐採した。竹富島の自然が好きで年に何度も訪れるという神奈川県在住の斉藤英夫氏はこう証言する。

「開発予定地内を通るアイヤル路は『蝶の道』とも呼ばれ、以前は歩くとたくさんの蝶が体にまとわりついてきました。ところが、おそらく伐採の影響だと思いますが、年々蝶の数が減っている。感覚としては3分の1くらい。リゾートができれば道路も整備され、多くの車両が行き交うことになる。さらに多くの動植物に影響が出ると予測されます」

 ところが開発者側は、環境調査を一切していないという。

 リゾート開発に反対する、「竹富島憲章を生かす会」代表の上間毅氏はこう語る。

「6.7haでは調査をする義務がないと説明されています。でも、本土と小さな離島では、同じ面積でも環境に対する負荷がまったく違う。予定地にどんな動植物がいるのかわからないまま、開発が進められようとしています」

 また、予定地内の漢那地(かんなーじ)という地域では、数十年前に先島先史時代の石斧が出土しているが、埋蔵文化調査も行われないままだ。

「石斧の出土場所は’07年に伐採された地域に含まれます。このときに多くの遺構も破壊されてしまったのではないでしょうか」(上間氏)

「カネは一代、土地は末代」外部資本による開発は竹富島憲章違反
 ■竹富島(沖縄県)<下>

 竹富島には「外部資本に土地の取得や開発をさせてはならない」というルールが存在する。その起源は’70年代の沖縄復帰直後、本土資本が沖縄県内の土地を買い漁っていた時代にさかのぼる。当時、竹富島の土地の4分の1が本土の開発業者に買われてしまい、危機感を覚えた島の人々は前記のルールを謳った「竹富島の声」を発表して土地を取り戻す運動を始め、’86年には「竹富島憲章」を制定した。このことによって、沖縄本島などで大規模リゾート開発が進められるなか、竹富島は昔ながらの沖縄の町並みや伝統文化、豊かな自然を残してきたのだった。

 それなのに、なぜ星野リゾートのような本土のリゾート会社が進出することができたのか。それは、竹富島の有力者・上勢頭保氏の存在が大きくかかわっているという。’70年代、上勢頭氏が代表を務める南西観光は、沖縄県のゼネコン最大手である國場組から資金提供を受け、リゾート開発対象地の所有権を取得した。ところが、’90年代のバブル崩壊でリゾート計画は破綻してしまった。債務処理のため島の土地を買われる危機にあったところ、星野リゾートが15億円の資金を拠出して「外部資本の開発から守ってくれた」と開発者側は説明している。

「しかし、土地を保有する竹富土地保有機構も、開発・運営を担当する南西観光(南星観光)も、星野リゾートが100%の株式を保有している。名目上、島内の会社となっているだけで、実質は島外資本なんです。もしリゾートができれば、小さな島に人口70?100人の大集落ができることになる。経済的にも大資本に従属して、今まで守ってきた民主的な住民自治や、祭りなどの伝統文化も大きな影響を受ける恐れがあります」(同)

 計画が発表された’07年以降、開発者側は「住民説明会を何度も行い、賛同を得た」と説明しているが、これに対して竹富島で民宿を経営する野原義克氏は「とんでもない」と反論する。

「開発者側は、あの道を直してあげるとか雇用が増えるとか、借金を返し終わった12?13年後には島民に土地を返すなどと、いい話ばかり言っています。しかし、説明会での録音や録画を認めず、すべて口約束にすぎない。それに、あの人はこの人に説得させれば嫌でも反対できない、といった島社会の実情を知り尽くしている。狭い島社会で、有力者に反対するのは大変なことなんです。まず老人会で拍手喝采させて、次は婦人会、反対意見の出そうな一般向けは最後に、といったように段階に分けて説明会を行うなどで、島の人々が反対と言いづらい状況を徐々につくってしまった。東京、沖縄、石垣にある竹富出身者の団体『郷友会』にも圧力がかけられました」

 そこで、野原氏らは島民の本音を聞くために、無記名での住民投票を公民館に求めた。

「ところが、いったん住民投票の開催が決定されたにもかかわらず、また圧力がかかってその決定も無効にされてしまったんです。そして、今年3月31日に開かれた公民館の定例総会では、開発者側が100通近くの委任状を取得したうえで、リゾート開発への賛成決議を強行しました」

 そのほか、上水道の供給の問題、排水処理やゴミの問題など、未解決の問題は数多くある。それらを放置したまま、開発者側は建設を強行しようとしているのだ。

 現在、リゾートは沖縄県に建築確認を申請中。早ければ、今年のゴールデンウィーク明けにも工事が始まる見込みだという。

「私たち島民は、おじいおばあから『カネは一代、土地は末代』と教えられて育ってきました。もともと、竹富島には島民が守ってきた『沖縄の原風景』に惹かれてやってくる観光客が多く、豪華リゾートを望む人々は少ない。もし失敗すれば企業は撤退するだけですが、後に残された我々はどうすればいいのか。先祖が残してくれた島の伝統文化や自然は、一度壊してしまったらもう取り戻すことはできません。お金には換えられない、絶対に守っていかなきゃならないものなんです」(上間氏)

「竹富島憲章を生かす会」では、趣旨に賛同する賛助会員を募集中。

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