電力自由化 電力会社 「原発はコスト面で不利だ」

電力自由化:原発の扱い結論出ず コスト面で不利に
(2002年12月27日 毎日新聞)

 総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会が27日まとめた電力自由化の枠組みでは、自由化の範囲や制度が決まったものの、原子力発電と電力自由化をどう両立させるかについては結論が得られなかった。電力の自由化が進むと、コスト面で原発は不利な立場に追い込まれる。政府は05年末をめどに核燃料サイクルを含む原子力発電の収益性や官民の役割分担を改めて検討することになったが、電力会社は「原発が本当に優位なのかオープンに議論したい」としており、自由化をきっかけに原子力政策が方向転換する可能性もある。

 電力の自由化で、新規参入の電気事業者の大半は、余剰の石炭火力発電所を利用してコストの安い海外炭を燃やし、安価な電力を供給する。これに対し、既存の電力会社は1基約4000億円と膨大な初期投資のかかる原発を「国策」として建設し、40年間以上の長期にわたる運転で採算をとろうとしている。

 このため「原発は短期的にはコスト面で不利だ」と電力会社は主張政府は原発の発電コストが1キロワット時当たり5.9円で、石炭火力の同6.5円より安いとしているが、電力会社は「現実的でない」と反発している。使用済み核燃料の再処理など核燃料サイクルを含めるとコスト面や安全面で未知の領域もあり、「原発にこれ以上、手を出したくない」というのが電力会社の本音だ。

 電力自由化が進むにつれ、初期投資がかさむうえ、トラブル続きの原発は電力会社にとっては重荷となりつつある。05年末に向けた政府の原子力政策の検討会の中で、電力業界は「自由化問題と原子力政策のあり方を原点に返って議論し、現実的な選択をすべきだ」(電気事業連合会幹部)と主張している。 【川口雅浩】

経産省:原発廃棄物処理で電力会社支援を検討
(2002年12月27日 毎日新聞)

 経済産業省は27日、原子力発電の放射性廃棄物の処理や老朽化した原発の廃炉作業など、将来的に発生が見込まれる巨額のコストを負担する立場の電力会社に対し、政策的な支援措置の導入を検討する方針を明らかにした。

 電力自由化の進展に伴う新規参入者との競争で経営資源を割かれる電力会社が、中長期的に原発を維持、運転できるようにするための措置。総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の電気事業分科会の下に来年中に専門委員会を設け、04年度末をめどに官民のコスト分担のあり方や、具体的な支援措置について結論を出す。

電力自由化:電力会社は発送電分離阻止に安堵
(2002 年12月27日 毎日新聞)

 電力各社は、今回の電力自由化論議で「発電」と「送電」の分離(発送分離)が見送られたことに胸をなでおろしている。当初、欧米並みに自由化を進めるには「電力会社の発電部門と送電部門を切り離さないと、新規参入者が支払う託送料金の透明性が図れない」と推進派は主張。しかし、発送分離は電力会社の分社化につながるため、各社とも「一体運用でなければ安定供給に支障が出る」などと反論し、結果的に電力会社は現状の体制を維持することに成功した。

 託送料金の公平性と透明性を確保するため、電気事業分科会は料金設定のルールを策定して監視する中立機関を設置するとともに、電力会社内で送電部門の収入と支出の会計を分離することなどを盛り込んだ。電力会社は「発送分離しなくても、競争の環境が整備された」と評価。各社の関心は「具体的にどんな制度をつくり、運用するのか」など、早くも今後の展開に向かっている。

 発送分離という電力会社にとって「最大の危機」を乗り越えたことで、電力会社は将来的に全面自由化が進んだとしても「安定供給を確保しながら、新規参入者と競争できる」と、自信を見せている。 【川口雅浩】

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