森と共存する農法を紹介する動画 「コーヒーを育てる恵みの森」

森と共存する「森林農法」によって、30年以上も森を守ってきたメキシコ、クェツァランのトセパン協同組合の皆さん(大半が先住民のナワット族とトトナカ族)。しかし今、その豊かな自然環境が「鉱山開発」によって破壊されようとしています。私たちは、森林農法で栽培された有機コーヒーをフェアトレードで輸入するだけでなく、様々な形でトセパンの皆さんが取り組んでいる自然保護活動に「参加」しています。その取り組みの一つが、農薬がほとんど使用されていない地域で採れるハチミツの輸入です。
詳しくは「豊かな森を守るメキシコ固有の不思議なハチミツを日本に届けたい」をご覧下さい。
皆さんにもこの取り組みに参加していただければ幸いです。

この森を守っている人々を紹介した動画がNHKによって制作されています。2005年に開催された「愛・地球博」の基本理念継承のために制作された「モリゾー・キッコロ 地球環境の旅」(DVD)に収録され、日本全国の小学校等に配布されました。その動画の一部がyoutubeにアップされていましたが、その動画を友人が書き起こしてくれました。

コーヒーを育てる恵みの森 〜メキシコ〜

0:00
モリゾー:さー出発じゃー!
キッコロ:ヒャッフー!

0:05(ナレーター:竹下景子)
命あふれる地球。大切なこの星を守るために、何ができるんでしょう。モリゾーとキッコロが、その答えを探しに世界中を旅します。さあ、私たちも出かけましょう!

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今回の舞台は、先住民の文化が残る、メキシコ。一風変わったコーヒーづくり。森の豊かな自然を生かして農業を進める、メキシコの先住民たちのお話です。

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ラテンアメリカの国メキシコ。そのほぼ中央、標高900メートルの高地に、クェツァランの町があります。

0:55
17世紀にスペイン人によって作られた、石畳の街並み。愛・地球博でも紹介されていましたが、メキシコは豊かな農業の国。市場はトウモロコシやトマトなど、新鮮な野菜でいっぱい。コーヒー栽培も盛んで、世界でも有数のコーヒーの生産国なんです。

1:25
コーヒーは、山の斜面の、ちょっと変わった農園で栽培されています。

1:35
キッコロ:キッコロ、コーヒーの木を見るの、初めて!
モリゾー:そりゃそうじゃ。日本は寒くてコーヒーが育たんからのう。
キッコロ:コーヒーの木ってどんな木?
モリゾー:どれどれ、あー、あそこに生えておるぞ。ほーれ、あの赤いのがコーヒーの実じゃ。
キッコロ:へー、サクランボよりも少し小さいくらいだね。
モリゾー:この赤い実を干して取り出した種が、コーヒー豆なんじゃ。

2:10
モリゾー:ところでキッコロ、この農園ちょっと変わっとらんか。
キッコロ:うん、いろんな木があって森みたいだね。
モリゾー:お、だれか来たぞ。どうやらこの農園のご主人みたいじゃな。
キッコロ:おじさん、この農園、まるで自然の森みたいだね。
農園の主人:ああ、ここはね、自然の森でコーヒーを作りたくて、28年かけて作り上げたんだよ。いろんな種類の木を植えてあるんだ。良かったら、見て回ってごらん。

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モリゾー:よーしキッコロ、森の中を探検じゃ。
キッコロ:行こう!

キッコロ:あ、高いところになにかなってる!
モリゾー:あれはバナナじゃ。たわわに実っておるのう。
キッコロ:ほかにどんな木があるんだろう?
モリゾー:おー、トウガラシじゃ。
キッコロ:うわー辛そう!
モリゾー:コショウの木まで植わっておるわい。
キッコロ:本当にいろんな木がある農園だね!

3:36
この森は、森林農法をしている農園です。背の高い作物や低い作物をいっしょに植え、自然の森と同じような環境を作ってする農業なんです。もちろん、農薬も化学肥料も使いません。栄養の元は、降り積もった落ち葉です。虫や微生物が落ち葉を分解して、豊かな土を作るんです。

4:05
今、地球の温暖化や木の伐採によって世界中で森が減っています。この森林農法、自然を守りながら進める新しい農法として期待を集めています。

4:23
メキシコにヨーロッパからコーヒーがもたらされたのは、今から300年前。

4:34
山岳地帯の気候がコーヒー栽培に適していたため、20世紀にはメキシコ全体に広がりました。

4:44
しかし森林農法によるコーヒー栽培が始まったのは、実は最近のことなんです。

4:55
クェツァランの町に森林農法を広めた、ドン・ルイスさんです。以前は、コーヒー協会という全国組織の指導で、全く違った栽培をしていました。

5:10
ドン・ルイス:収穫量が増えるという栽培方法を、コーヒー協会が教えに来たんだ。私たちは、何も知らずに教えられたとおりにやったんだよ。

5:25
30年前、メキシココーヒー協会が農家に配ったテキスト。コーヒーの木の周りは、草を刈るように書かれています。また、化学肥料を使ったり、農薬をまいて害虫を駆除するように教えていました。こうした、森を切り開いて作る農園を、プランテーション農園と呼び、これが世界のコーヒーづくりの主流なんです。

コーヒー園での農薬散布・メキシコ

6:00
しかし、この方法は、収穫量が増えますが、自然を破壊する恐れがあります。コーヒー以外の木が切られると、露出した地面は荒れてしまいます。下草の生えない地面には虫はいなくなり、鳥などの生き物も姿を見せません。

6:27
ルイスさんも、一度はプランテーション農園にしましたが、収穫量は減っても自然に優しい森林農法に切り替えたんです。研究機関の教えも受け、ルイスさんは町中に森林農法を広めました。

6:46
ドン・ルイス:収穫量がもっと上がれば、森林農法を選ぶ人は世界中に広がり、自然を守る意識も高くなると思います。私たち農家が森を守らなければ、誰が守るというのでしょうか。

笑顔のドン・ルイスと中村
(ドン・ルイスと中村隆市 2003年)

7:06
23年前に撮った写真。当時、教会の下には、プランテーション農園が広がっていました。

7:17
キッコロ:おじいちゃん、この写真の場所を探してみようよ。
モリゾー:今はどうなっているんかのう。
キッコロ:すみません、この写真の場所を探してるんだけど、分かりますか?
花屋:うーん、わからないわ。
モリゾー:はて、どこじゃろうか。

7:44
モリゾー:あ、この場所を知っておるかのう。
通りがかりの男性:クェツァランだね。おー、これは、もっと上の方から写しているようだよ。

8:00
キッコロ:なんだか近づいてきた気がするよ。

8:12
男性:うーん、見覚えがあるよ。わかった、この場所を知っているよ。
男性:ここから見た景色さ。

8:28
ようやく見つけた場所は、景色がすっかり変わっていました。以前、協会の下にあったプランテーション農園。今は一面の森です。20年ほど前、この土地の持ち主が森林農法を取り入れたためです。森を歩くと、木漏れ日が舞い落ちます。森には花々が咲き、そこには虫たちが集まります。そして、虫や木の実を食べに、多くの鳥たちがやってきます。一度壊された森が、森林農法でよみがえったんです。

9:32
モリゾー:よいしょ、よいしょっと。なかなか固いもんじゃのう。
キッコロ:がんばって、おじいちゃん。

9:43
モリゾー:うーん!うまいコーヒーじゃ。
キッコロ:うわー、いい香り!どんな人がこのコーヒーを飲んでるんだろうねえ?
モリゾー:よし!次はそれを調べることにしよう。

10:03
モリゾーとキッコロが訪ねたのは、コーヒー農家の協同組合の倉庫です。

モリゾー:誰かおるんかのう。
キッコロ:わーすごい袋!これみんなコーヒーが入ってるんだね!

クェツァランで森林農法によるコーヒーづくりをしている農家の数は、年々増えて、今ではおよそ5800世帯。収穫したコーヒーは、すべてこの倉庫に集めて出荷しています。

10:39
キッコロ:あ!人がいるよ!
キッコロ:すみません、このコーヒーどこに売るの?
男性:主に輸出さ。アメリカ、ヨーロッパ、そして日本にも売っているんだよ。

10:51
農薬や化学肥料を使わない森林農法のコーヒーは、環境にも人の体にも優しいので、世界中にファンがいます。普通のコーヒーの3割ほど高い値段で取引されています。

11:07
日本にも森林農法のコーヒーを応援する人たちがいます。東京、国分寺にあるこのカフェは、森林保護のために、最近、クェツァランのコーヒーを扱い始めました。コーヒーを買うと、森林農法の農家にお金が渡り、日本にいてもメキシコの森を守る手助けができます。そう考えるお客さんたちが店に集まってくるんです。

11:43
女性:どうしても安い商品に目が行きがちなんですけども、それも価格破壊と言うことで環境を破壊していたりと言うことも、つながってきたりするので、地域を助けるという意味では、何かの一滴になれば、すごくうれしいのはうれしいですよね。

12:10
キッコロ:この森は世界中の人たちが支えているんだね。
モリゾー:お金の使い方次第で外国の森も守れるということじゃのう。
キッコロ:あ!おじいちゃいん、鳥がいるよ!
モリゾー:おー、七面鳥じゃ。家畜にしておるんじゃな。農薬を使ってないから、放し飼いできるんじゃのう。

12:48
この農園で暮らしている、シモン君とジュリサさんの一家です。おじいさんのマルティンさんは、長く続けてきたプランテーション農園を、5年前に森林農法に切り替えました。孫たちに綺麗な自然を残してあげたいと思ったのがきっかけなんです。以前は、この農園にコーヒー以外の作物はありませんでした。でも今は、食べられるものも育つようになりました。こうしたキノコなどが、一家の大切な食糧になります。

13:38
マルティンさん:自然をもう汚したくなかったのさ。森で採れるものを、何の心配もなく食べられるようにしたかったんだよ。

13:50
キッコロ:うわーいいにおい!
モリゾー:燃料の薪も、森から拾ってきたんだそうじゃよ。

14:00
軽く焼いたキノコは、トウモロコシで作った手作りのパンで包んで食べます。森で採れる食べ物が並ぶ、シモン君一家の食卓。森林農法で取り戻した自然の恵みいっぱいの暮らしです。

14:20
キッコロ:森のおかげで、とっても素敵な暮らしだね!
モリゾー:森林農法のような自然に優しい農業が広がれば、人はいつまでも森と一緒に生きていけるんんじゃ。
キッコロ:みんなで頑張ろう!
モリゾー:さあ、次の旅に出かけるとするか。

「モリゾー・キッコロ 地球環境の旅」の制作配布について
(平成19年1月18日(財)2005年日本国際博覧会協会)から抜粋

博覧会協会は、愛・地球博の基本理念継承のため、「モリゾー・キッコロ 地球環境の旅」と題するDVDを制作し、順次、全国の小学校に無償配布致しましたのでお知らせします。このDVDは、愛・地球博で展示・紹介された環境保護の取り組みをモリゾー・キッコロの二人が日本と世界を旅してレポートするもので、各15分 全8話から構成されています。なお、今回のDVDは、昨年10月より今年年始にかけ、NHKハイビジョン、NHK教育テレビ及び国際放送を通じて全世界で放映されてきたもので、愛・地球博の基本理念を、愛・地球博閉幕後1年を経てなお人気のあるモリゾーとキッコロを通じて、より一層効果的に継承するため、日本全国の小学校等への配布を目的に、博覧会協会解散以前よりDVDの制作を行ってきたものです。

本DVDの構成(各15分 詳細は別紙参照PDF
第1話 ジンベエザメ Uターン!〜フィリピン・ルソン島〜
第2話 蝶は森の救世主〜ケニア〜
第3話 ゴミから生まれるエネルギー〜スウェーデン〜
第4話 250キロ!湖畔にアサザを〜茨城県・霞ヶ浦〜
第5話 植物プラスチックが地球を救う!〜名古屋 / アメリカ・ネブラスカ州〜
第6話 絶滅脱出!珍獣カモノハシ〜オーストラリア・タスマニア島〜
第7話 コーヒーを育てる恵みの森〜メキシコ〜
第8話 田んぼに舞ったコウノトリ〜兵庫県・豊岡〜

配布部数及び配布先
・配布部数:約23,000部
・主な配布先:全国の都道府県及び政令指定都市の教育委員会並びに全国の小学校


40年前に姿を消した鳥たちを呼び戻した男の物語

40年ほど前、メキシコのクエツァランに鳥が大好きなドン・ルイスという先住民がいました。彼は「コーヒーの収穫量が増える」というコーヒー協会の指導に従って「農薬と化学肥料を多用する近代農法」に取り組みました。ところが、近代農法が広まるほどに鳥が激減していることに気づきました。「鳥がいない人生ほど寂しいことはない。鳥がいなくなる農法は間違っている」と確信したルイスは、鳥を呼び戻すために勉強し、森や森の生き物たちと共生する「森林農法(アグロフォレストリー)」を地域に広めました。40年後の今、この地域の森には、渡り鳥もたくさん飛来し、年間200種類もの鳥を見ることができます。「クエツァランという地名は、世界で最も美しい鳥とも言われているケツァール(手塚治虫が描いた火の鳥のモデルとなった鳥)に由来しています」と嬉しそうに話してくれたドン・ルイスは、鳥たちの鳴き声に包まれながら人生を終えました。

火の鳥 ケツァール

ケツァール(みどり系胸は赤)

物語は、ここで終わりませんでした。「近代農法」の次に「鉱山開発」という自然破壊の危機がこの地に迫っています。ドン・ルイスの意志を継ぐ人々が今、鉱山開発から森や川や全てのいのちを守る闘いに立ち上がっています。

シエラノルテの大地に命をかけて
(鉱山開発から自然を守る闘い)書き起こしから抜粋

◆シエラノルテの大地に命をかけて
(鉱山開発から自然を守る闘い)の書き起こしから抜粋

6:16?(ナワット族の男性)
今は亡き母が いつも言っていました
「大地を大切にしなさい」と

トセパン 亡き母がいつも言っていました 「大地を大切にしなさい」と

農薬や化学肥料の利用はもってのほかです
私たちは この土地がさらに豊かになる
方法を模索しています

有機コーヒー オールスパイス 野菜
とうもろこし 豆 穀物
これらの恵みがあるからこそ
私たちは生きていけるのです

ここに鉱山開発の手が及び
その影響が及ぶなんてことは
想像もできません

水が奪われ 汚染される

ここで水力発電が始まれば
90%の水が失われます

金 銀 銅の鉱脈が確認されています
鉱山開発が進めば シアン化合物も
使われます

いのちの源である川や水源に 
毒物が流されることと同じです
決して許されることではありません

先住民であろうとなかろうと
目を覚ます時が来たのです

7:28?(青いシャツの女性)
この森には コーヒー オレンジ 
バナナ パパイヤがあります
この地域には あらゆる恵みが
あるのです

もし私たちが 鉱山開発を許したならば
今あるすべてのものが失われてしまいます

8:07?(ナワットの男性)
私たちが望んでいるのは
この土地に暮らすすべてのいのち
を守ることです

いま メキシコ政府は 外国企業と
協定を結び 鉱山開発が始まろうと
しています

メキシコの鉱山開発反対デモ

しかし この土地には
私たちが先祖から受け継ぎ
大切に守ってきた
自然があるのです

8:38?(赤いチェックのシャツの女性)
私たちは今 とても危険で困難な局面を
むかえています
プエブラ州シエラノルテの一帯で
鉱山開発 そして水力発電所の建設が
まさに始まろうとしているのです

このシエラノルテの地域に暮らす
ナワット族 トトナカ族 メスティーソ
そして農業を営む人たち
すべての人たちの命が脅かされます

金 銀 銅 亜鉛の鉱山開発に対する
許可だけに着目しても
その開発予定面積は
14万ヘクタールにも及びます

15:45?(花柄の服の女性)
ここに豊かな森があることを
もう一度 考え直しましょう

森は 単なる植物ではありません
私たちの命を支えてくれているのです
本当の意味で 私たちの生活を
豊かにしてくれます。

金とは比較できない
私たちの資源なのです

18:45?(赤いベストの男性)
この土地で 
平和に生活を続けたいだけです

鉱山開発による発展は
私たちが考える発展ではありません

27:56?(帽子をかぶった男性)
年老いた私は 息子 孫そして
ひ孫のために 必ずこの土地を
守り抜きます

動画(全編21分) 

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