汚染地の子ども 病気になりやすい ウクライナの小児科医警告

【今、もう一度、読み返したいウクライナの小児科医警告】
汚染地域に住み続ける子どもたちは複数の病気にかかりやすく、治療効果が低い特徴があった。被ばく線量が高ければ高いほど、健康な子どもの割合が低くなっている。汚染地域で暮らす場合の対策として、「子どもには汚染のない食べものを与えること汚染地域を長期間離れる保養プロジェクトも必要

汚染地の子ども 病気になりやすい ウクライナの小児科医警告
(2011年12月15日 東京新聞)

汚染地の子ども 病気になりやすい ウクライナの小児科医警告

チェルノブイリ事故後の健康調査 治療効果も低下

チェルノブイリ原発事故が起こったウクライナの放射線医学研究センターで、子どもの治療や検診を続けるエフゲーニャ・ステパノワ教授が13日、東京都内で取材に応じ、「汚染地域の子どもたちは病気になりやすく、治りにくい傾向がある」と指摘。内部被曝を防ぐ対策や健康管理の重要性を訴えた。(中山洋子)

同センターは事故の翌1987年、キエフに説立。小児科医のステパノワ教授は当初から放射線による子どもの健康影響を調べてきた。国際環境保護団体グリーンピース・ジャパンの招きで初来日し、福島市で講演した。

ウクライナでは、土壌1平方メートルあたりの放射性セシウム濃度が3万7000ベクレル以上の「汚染地域」を4つのゾーンに区分。18万5000ベクレルまでを「管理強化」とし、さらに汚染度に従い「移住権利」「移住義務」「立ち入り禁止の30キロ圏内」がある。

福島原発事故の汚染度で見ると、福島県はもとより栃木や群馬なども含めた関東の広範な地域がこの「汚染地域」に当てはまる。

ステパノワ教授らの健康調査で、汚染地域に住み続ける子どもたちは複数の病気にかかりやすく、治療効果が低い特徴があった。当初は汚染されていない地域とほぼ変わらなかった胃腸の病気の発症率も、93年ごろから徐々に増加。「汚染された食物を取り続け、病気になる確率が高まったと考えられる」

汚染のひどい55万5000ベクレル以上の「移住義務」に住む子どもは、汚染の低い地域と比べて、肺炎や気管支炎など呼吸器系の病気が2倍、血液系障害が2.5倍になるなど、より病気にかかりやすい傾向が見られた。

ステパノワ教授は、汚染地域で暮らす場合の対策として「子どもには汚染のない食品を与えること。汚染地域を長期間離れる林間学校プロジェクトも必要だ」と話した。


チェルノブイリからの警告 〜5万人の子どもを診察した医学博士〜
(OurPlanet TV アップロード日:2011/12/15)

「チェルノブイリの事故では、被曝した子どもに何が起きているのか?」チェルノブイリ事故後にウクライナで5万人以上の子どもを健診したウクライナ放射線医学研究センターのエフゲーニャ・ステパノワ博士に子どもたちへの健康影響について話を聞く。

ゲスト:エフゲーニャ・ステパノワ博士(ウクライナ放射線医学研究センター)


「被ばくの症状と予防対策」エフゲーニャ・ステパノワ博士OurPlanetTV
(内容書き出し)
(2011年12月 みんな楽しくHAPPYがいい)から抜粋

●1986年事故当時ウクライナの子どもが訴えた症状
疲労が激しい 衰弱 神経不安定 頭痛 めまい 不眠、首の部分の痛み 
喉がいがらっぽい 咳 失神 吐き気と嘔吐 便通不順 鉄の味がする

●典型的な反応
呼吸器症候群 リンパ組織の過形成 胃腸管活動障害 心臓血管系の機能障害
血液データの変化 バセドー氏病の臨床兆候が無い「甲状腺肥大」 肝臓と脾臓肥大

●1987-1991年にみられた症状
極度の疲労 衰弱 精神不安定 頭痛 めまい 不眠 胃腸不調 心臓あたりの不快感

●90年代にかけての症状
動脈圧の不安定 肺の呼吸機能障害 心臓の機能変化 胃の機能障害 運動後の疲れやすさ
免疫力の低下 肝臓機能の一時的障害 呼吸器官の疾患 消化器系の疾患

●91-93年にかけて慢性的な傾向を示すようになる
肺・肝臓・脾臓、胃などの慢性的な病気の症状

●ウクライナの子どもたちは1年に1回、各専門家の医者のもとで、総合的な健康診断を受ける
小児科 血液科 内分泌科 神経科 咽頭科 眼科 外科 
歯医者 血液検査と尿検査 甲状腺超音波検査

●予防対策
汚染されていない食品を食べ物を摂る
充分なビタミンをとる
体力増進に努める
汚染地域から離れて保養施設などで休む(最低でも4週間)

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【チェルノブイリからの警告 〜5万人の子どもを診察した医学博士】

ゲスト:エフゲーニャ・ステパノワ博士(ウクライナ放射線医学研究センター)

OurPlanetTVの白石草です。
今、年間20ミリシーベルトという放射能基準は安全なのか?
チェルノブイリ事故で被ばくした子供たちに何が起きているのか?
今、福島第一原発事故により子供への健康被害が懸念されています。
今日の特集はチェルノブイリからの警告
25年間現地で子どもたちを見てきた専門家にお話を伺います。

5万人の子どもを診察した医学博士、エフゲーニャ・ステパノワ博士
ウクライナ放射線医学研究センターの放射線小児先天遺伝研究室長です。
今年10月には文部科学省の森裕子副大臣がウクライナを訪れ、
アドバイスを受けたことでも知られています。

25年間で5万人以上の子どもたちを診察した経験がある博士は、
チェルノブイリ事故後に起きた子どもに対するの影響に関して、最も詳しい一人と言われています。
今回は国際的な環境NGOグリンピースの招へいで来日しました。

白石:
ウクライナの子ども 健康影響は?
博士は25年間5万人に及ぶ子どもたちをウクライナで見ていらしたということなんですけれども、今日本でも、子供たちに対する健康への影響というのが一番の関心事となっています。
まず25年前、事故直後から、どのような影響が子どもたちに出てきたのか、今までを振り返って、まずお話を頂きたいんですけれども。

ステパノワ:
私たちはチェルノブイリ事故からずっとこれまで、チェルノブイリの被災地域から避難した子どもたちの状況と、そして避難していない、汚染地域に残っている子どもたちの健康状況というものをずっと調査してまいりました。その時に子どもたちが、一番どのような症状を訴えたかというと、いわゆる疲労が激しいとか、衰弱、それから神経不安定、頭痛、めまい、不眠、それから首の部分、特にそこには甲状腺がありますので、首の部分の痛みとかを訴えることになりました。

1986年当時、チェルノブイリ周辺の子どもたちは、喉がいがらっぽい、鉄の味がする、咳が止まらない、疲れやすいなど、さまざまな症状を訴えていました。

その後90年代にかけて子どもたちの間には、極度な疲労、衰弱、頭痛、めまい、不眠など、さらに深刻な症状が見られました。

ステパノワ博士は、動脈圧の不安定、肺の呼吸器機能障害、心臓の機能変化、胃の機能障害などがあらわれたといいます。

ステパノワ:
そういった子どもたちの動脈圧の低下というもの、ま、不安定なんですね。動脈圧が上がったり下がったりするというのも私たちは発見いたしました。
心臓のあたりの不快感、それから免疫システムの障害、それから呼吸器官の疾患というものも私たちは気が付きました。たとえば運動とか勉強とかをすると、かなり抵抗力が無いというか、我慢が出来ない。いつもではありませんが、肝臓障害も時々見られることになりました。

91年92年93年にかけて、そういった症状というものが次第に慢性的な傾向を示すようになりました。どんな慢性的な病気が見られるか?というと、たとえば肺とか、肝臓それから脾臓、胃などの慢性的な病気の症状が見られるようになりました。慢性的な病気を持った子どもたちの数というものがだんだん増えていき、そして健康な子どもたちの数が減って行きました。健康的な子どもの数が減り、慢性病を持った子どもたちの数がすごく増えているのがこのグラフから分かると思います。

慢性病の子ども グラフ

この表から分かることは、甲状腺に被曝をうけた線量が高ければ高いほど、要するに甲状腺への被ばく線量が高ければ高いほど、健康な子どもの割合というものが低くなっている、小さくなっているというのがこの表から分かると思います。

【ウクライナの避難対象区域】

白石:
いま、プリピチェから避難した子どもというのが、先程、4万5000人のうち1万7000人いるとお話しいただいたお思うんですけれども、ウクライナでは4つのゾーンで避難だったりとか、あるいは放射線を管理していたりするというふうに聞いているんですけれども、一番最初の立ち入り禁止区域というのはすぐに実行されたと思うんですけれども、その他の子どもの線量を測ってから避難というのは、大体いつごろ行われたのか、という事はお分かりになりますか?

ステパノワ:
私たちのところでは、避難というのが行われたのは、1986年でもすでに第一地域以外もすべて行われていました。それは放射線を測った結果、高濃度であるというのが分かった場所から避難が始まりました。それは555kベクレル/平方メートルあたりの汚染度があったところであります。
そこからの人々がまず避難させられました。

放射能の雲というものは、様々なところに点在して行ったわけで、第二区域の人達も年間5ミリシーベルト以上の被ばく線量があるところの人達も強制移住の対象になりました。

それから第三区域に住んでいる人々というのは、自分たちが避難したければ避難するという地域でありまして、受ける年間線量の割合で言えば1ミリシーベルト/年間であります。

そして第四区域の人達というのはどこにも移住をするわけではなくて、そこに住んでいますが、ただ、健康管理の観察対象にはなるという事です。この地域は放射線の環境状況は、ずっと管理対象になるということです。

【増える子どもの消化器系疾患】

白石:
一つ気になるのは先ほどプリピチェから避難された方とか、あるいは消防作業に関わったお子さんたちに、非常に健康が不調だという事がわかるんですけれども、それ以外のたとえばですね、この2番、3番の地域に暮らすような子どもたちの間で、健康上でなにか観察されるような事があるのか、という事が日本の中では関心があるんですけれども、そこらへんはどうなるんでしょうか?

ステパノワ:
もちろん同じように健康の悪化は見られますし、慢性病の傾向というのももちろん高くなっています。特に私が指摘したいのは、そういった子どもたちの中で一番症状が悪く見られる場所というのは、胃腸系です。
それはどうしてかというと、汚染地域というのは基本的には農村地域です。ですから、地元産の汚染されたところで出来た、自分たちの親たちが作った野菜とかそういうものを食べている訳であります。

それと同時にもうひとつ言えることは、牛の問題があります。汚染された地域で牛を放牧していると、汚染された草を食べた牛から出てくる牛乳というのは当然のごとく汚染されています。そしてウクライナでは牛乳が最もウクライナの子どもたちの主要な栄養源になっています。

白石:
じゃ、ちょっとこちらの方で説明して頂きたいんですけれども、これは
これが消化器系の疾患が増えているという、

エフゲーニャ・ステパノワ博士18

ステパノワ:
その説明を簡単にしますと、まず一つ目は折れ線グラフが見えますよね、
折れ線グラフの黄色の部分。その部分というのはウクライナの子どもたちの、被ばくしていない子どもたちに見られる消化器官の疾患レベルを示しています。で、これを見ると残念ながらウクライナの被ばくしていない子どもたちは、かなり消化器官系の病気が多いという事が分かりますが、それと比較しますと今度は上の方ですけれども、上の方(棒グラフ)は最も汚染された地域の子ども達に見られる消化器官の疾患レベルであります。

これを比較してみると、汚染された地域からの子どもたちのレベルというのがかなり高いことが分かります。

白石:
消化器系の疾患が増えているという事なんですけれども、ウクライナ全体で見た時に、もちろん甲状腺がんの人数などというのはハッキリ出ているんですけれども、ざっと見て、たとえば今保養が必要だったり、保養は必要ないけれども若干体調が不調だったり、感染症に弱いとか、たとえば、こう何らかの健康上の問題、いわゆる元気な子ではない子というのは、どのぐらいの割合というか、

ステパノワ:
現在ではデータとしては健康な子どもが27%で、何らかの病気を抱えているという子どもたちは70%もいるわけですね。ですから、これは私たちのウクライナの状況にかかっているのかもしれませんけれども、残念なことにウクライナの子どもたちは、あまりいい環境にいるとは言えないですね。
被災した子どもたち、人達から言えば、多分この健康な子どもたちの数というのは27%よりももっと低くて、その二分の一になるでしょう。
もし私たちがなにも手立てを施さなかったら、健康な子どもの数はもっと悪くなっていたでしょう、少なくなっていたでしょう。

【内部被ばくを低減へ ウクライナの食品対策】

白石:
ウクライナではそういった子どもたちのために、いまどのような事の対応・対策が取られているのか、今後私たちも参考になると思うんですけれども、

ステパノワ:
まず第一に汚染されていない食品をなるたけ摂るようにしています。私たちの国では幼稚園とか学校に於きましては、食事は全て無料で提供されております。
それぞれの行政地区に於きまして、自分たちの菜園で採った、つくった食品など、放射能の検査をする放射能検査センターというのがあります。
自分たちが作った野菜をそこに持ってきて、無料で数値を測ることが出来ます。
食料に対しての許容基準というものが決められていて、その基準よりも高い場合には食べてはいけないというふうになっている訳であります。
特に厳しい基準が取られているのが、子どものための食品であります。小さければ小さいほど、その身体というものは放射能に対して敏感に反応をしてしまうからであります。

日本の食品の暫定基準値は20012年4月から一般食品100ベクレル、乳児用食品50ベクレル、牛乳50ベクレル、水10ベクレル

これに対しウクライナでは果物は70ベクレル、ジャガイモは60ベクレル、野菜は40ベクレル、パン、パン製品は20ベクレル、卵は6ベクレル、水は1リットル当たり2ベクレル牛乳は1リットル当たり100ベクレル、子どもは1リットルあたり40ベクレル

ウクライナの健康診断 7つの専門家が実施

健康診断について

ステパノワ:
まずウクライナでは法律が採択されています。そこに何が書かれているかというと、「汚染地域に住んでいる人たちの健康に対するモニタリングを行う、国、及び地方自治体、医療関係者、社会保障分野の関係者が行うべき義務及びその権利」について詳しく書いてあります。この法律にしたがいまして、子どもたちは1年に1回、それぞれの各専門家の医者のもとで、総合的な健康診断を受けることになります。

小児科、血液科、内分泌科、神経科、咽頭科、目、外科、歯医者です。
その他に子どもたちは必ず血液検査を受けます。
それから尿検査も行います。
そして甲状腺などに関しましては超音波診断が行われますし、それと同時に体内の放射性物質の活動がどのように起こっているか、という事についても調べます。そして子どもたちに何か変化が見られたら、悪い傾向が見られたら、子どもたちは治療に送られます。

チェルノブイリ事故の被災した州というのがちゃんと決まっていまして、その被災した州は特別にチェルノブイリの事故被災者たちを治療する病院があります。そしてもっとより深刻な病気が見つかった場合、それから放射性セシウムの量がかなり高いレベルで見つかった場合には、そういった子どもたちは私たちのウクライナ医学アカデミーの放射線医学研究所の方に送られてきます。ウクライナの憲法によりまして、大人も子供も医療に関しては無料になっています。

<汚染地域の子どもの健康を守る対策は?>

白石:
今、多くの親たちが心配しているのが、年間20ミリシーベルトよりも低い地域というのは避難させてもらえない地域ですから、そこの地域の中で、チェルノブイリの汚染地帯の子どものように、将来さまざまな健康の被害が出るのではないかと、そういうものを防ぐためにいったい何が出来るのか・・・

ステパノワ:
まず、一番重要なのは健康的な生活を送ることです。
どういう事かというと、汚染されていない食品を食べ物を摂ること充分なビタミンをとること。体力増進に努めること。もうひとつ重要なことは、1年に1回でもいいですから汚染地域から離れて保養施設などで休むこと

私たちの経験から言いまして、子どもたちが汚染されていない地域に保養に行く時ですが、まず、新しい先に適応するには時間がかかるし、そこで健康増進を図って、そこで、治療みたいなものをするわけですが、そのためには最低でも4週間は必要ではないかなと私たちは思っております。

保養施設でありますけれども、事故直後といっても事故直後1ヶ月の場合もありますけれども2ヶ月の場合も3ヶ月の場合もあります。いろんな場合がありますが、保養に行く時は子どもたちが通っている学校単位で行く訳です。
つまり、教師が一緒についていって、保養施設で健康増進を図ると同時に勉強もするわけです。だから勉強が遅れるという事はありません。

で、今は25年経過しておりまして、大体4週間ぐらいであります。まあ、経済的な問題というのもあるから4週間になっていますけれども、線量も低くなっているという事もあります。

もし、子どもたちを汚染されていない地域に保養に送ったとすると、1年間に受ける年間線量の10%は少なくすることができるわけです。

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