2012/07/25

エネルギー地産地消 脱原発政策 実施するドイツの村

エネルギー地産地消 脱原発政策 実施する村
(2012年7月23日 東京新聞)

 名古屋大環境学研究科の元特任准教授、杉山範子さん(42)は、1~7月にドイツのベルリン自由大で、欧州連合(EU)の環境政策を研究した。この間、メルケル政権が打ち出した脱原発政策、再生可能エネルギーの普及政策が、小さな村にまで浸透し、住民が当たり前のようにエネルギーを地産地消している現場を目の当たりにした。そんな「エネルギー自給自足の村」の一つを、杉山さんにリポートしてもらった。 
(聞き手 論説委員・飯尾歩)

 再生可能エネルギーの導入に取り組む地域は、近年珍しくなくなった。しかし、独自にエネルギー供給網までつくった村があると聞き、ぜひ訪れたいと思った。

 ブランデンブルク州フェルトハイム村は、ベルリンから南西に約60キロ。アウトバーンを走り、森を抜けると、遠くに風車群が見えてきた。

 人口約140人。一本の通り沿いに家々が立ち並ぶだけの、村というより小集落。村の入り口には「エネルギー自給自足地域」のプレートが掲げてあった。

 村の中心部に置かれた小さな貨物コンテナが、エネルギー・クエレ社(エネルギーの泉の意)の現地レクチャールーム。そこで広報担当のヴェーナー・フォーヴィッターさんから説明を受けた。

 同社は村と共同で、エネルギー自給自足システムを設置、運営する企業。1995年、当時24歳だったクエレ社創設者のミヒャエル・ラッシェルマンさんが、この村の地理的条件(標高140メートル、風速毎秒5.5メートル)に目を付け、4基の風力発電機(出力計500キロワット)を建てたのが始まりだった。

 5基目は、村人がお金を出し合ってクエレ社に建設を依頼した。村は今、43基を持ち、年間1億4000万キロワット時を発電している。

 当初、つくった電気はすべて売電していたが、住民はグリーンでクリーンな電気をつくりつつ、自分たちは原子力などでつくった電力を使っていることに疑問を抱いた。2006年ごろのことである。村の電気は風力発電機一基で賄える。ところが送配電会社に村内への供給を断られたため、独自に送電線を引くことにした。住民の意思は3回の会合でまとまった。

 州の担当者は「禁じられているわけではない」と法的手続きを進めてくれた。連邦政府や州の政策転換を背景に、むしろ積極的だった。EUと州からは十分な補助金も交付された。

 09年には各家庭につなぐ配電網が完成。風力発電機がつくった電力は、延べ2キロの地下ケーブルを経て、希望する家庭に直接供給されている。木くずや畜産ふん尿などバイオマスで沸かした温水も併給(コージェネレーション)されている。この秋には、村全体で必要な電力を約2日分賄える蓄電池も設置されるという。

 村の電気料金は、1キロワット時当たり約18セント(約18円)。ベルリンに比べ2、3割ほど安い。電気代の安さから移転してくる製造業もあり、新たに30人の雇用が生まれたという。

 フェルトハイムの成功の秘訣(ひけつ)は、熱電併給の仕組みをつくったこと。再生可能エネルギーを電力会社に売電する固定価格買い取り制度だけに頼らずに、地元で使う地産地消を考えたことだろう。これなら政府の制度が変わっても、自給自足のメリットが残る。

 クエレ社広報のヴェーナーさんは「現世代だけでなく、将来世代が使う施設。将来世代への投資、脱原発、地球温暖化、化石燃料の枯渇など、さまざまな課題がある以上、私たちの進むべき方向は明らかだ」と力を込めた。

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