電力業界、発送電分離を容認へ 「地域独占に限界」 強い批判を意識

電力業界、発送電分離を容認へ 「地域独占に限界」 強い批判を意識
(2012/7/13 14:40 日本経済新聞)

 電力各社でつくる電気事業連合会は13日、発電事業と送配電事業を分ける「発送電分離」を容認する方針を固めた。経済産業省が同日開く「電力システム改革専門委員会」で表明する。電事連は「電力の安定供給を損ないかねない」と発送電分離に強く反対していたが方針を転換する。

 専門委は13日の会合で電力システム改革の基本方針案をまとめる。電事連は専門委に方針案への対処方針を盛り込んだ文書を提出する。

 文書によると「電力の送配電部門の広域化・中立性確保を進めていくことが重要」と表明。電力自由化で今後、新電力(特定規模電気事業者)のシェアが拡大した場合に「現行の体制のままでは電力供給の安定性や品質の維持が困難になるおそれがある」として、現在の「地域独占」体制の限界を認めている。

 専門委は発送電分離について送配電網の運用を外部に任せる「機能分離」か、送配電部門を分社化する「法的分離」のいずれかの形態にする方針で年内に詳細を詰める。電事連は「機能分離型または法的分離型についても、広域化とあわせて詳細検討する」として、発送電分離を事実上、容認する方針を打ち出す。

 電事連はこれまで「電力の安定供給を損ないかねない」として発送電分離に強く反対してきた。方針転換は、東京電力福島第1原発事故後の電力業界への強い批判を意識した可能性がある。発送電分離の類型のなかでも、送配電部門の資本関係までなくす「所有権分離」を避ける思惑もあるとみられる。


経産省委、家庭向け電力自由化を容認 
(2012年7月13日 21時57分 中日新聞)

 電力改革に関する経済産業省の専門委員会は13日、電力小売りを全面自由化する基本方針を決め、大手10社が独占している家庭向け市場への新規参入を容認した。必要経費を電気料金に上乗せできる「総括原価方式」や料金の認可制も競争の進展に応じて撤廃。電力会社から送配電部門を切り離して中立性を高める「発送電分離」の実施に向け2案を明記した。

 一般の家庭でも契約する電力会社を自由に選べるようにして業界の競争や料金引き下げを促す狙い。コストの高い離島やへき地で料金が高騰しないよう全国の利用者に負担金を求め全国サービスを提供する電力会社などを支援する制度も盛り込んだ。
(共同)


発送電分離、電力会社は反発も 「安定供給は一貫体制で」
(2012.7.13 22:11 産経ニュース)

 電力市場の自由化を検討している経済産業省の有識者会議の報告書は、発電事業と送電事業を分ける「発送電分離」を促し、電力会社の地域独占からの脱却を求めた。発送電分離によって発電事業の競争を促し、低料金で安定的な電力を供給することが狙いだ。ただ、すでに自由化を進めた国では必ずしも低料金化や安定供給にはつながっておらず、新たな仕組みづくりには課題が残されている。

 有識者会議が発送電分離を促したのは、電気料金の引き下げにつながるとの期待があるからだ。電力会社から送電網を切り離し、誰でも公平に使えるようにすれば、新規事業者も電力会社と対等の条件で発電事業で競争できる。

 これに対して、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は「電力の安定供給を長期的に果たすためには発送電の一貫体制が必要」との立場だ。

 日本は欧米に比べ、季節や時間帯で電力需要変動が起きやすい。このため、電力各社は、発送電分離で多種多様な発電事業者が送電線に接続すれば、送電に技術的なトラブルが増え、安定供給に支障をきたす恐れがあると主張する。

 実際、発送電分離で先行する英国や米国の一部では、低料金競争が激化。このため、事業者は設備投資を抑え、大規模停電が頻発した。送電事業では、トラブルを防ぐためのコストが膨らみ、結果として電気料金が下がらないケースも見受けられる。

 経産省は秋以降、具体的な仕組みづくりに着手するが、実効性を高めるには緻密(ちみつ)な制度設計が不可欠だ。

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