活断層も調べず原発再稼動を強行 → 火力発電の運転停止

信じがたい話が報道されている。これまでの政府の原発再稼動の強行は、「停電の恐れを何としても回避したい。だから、免震棟もベントも防潮堤のかさ上げも先送りで、安全が確保されないないまま再稼働に踏み切ったのだろう」と多くの国民がとらえていた。特に、最大の問題である大飯原発敷地内の破砕帯(断層)を検査せずに強行した行為は犯罪的である。

わずか数日でできる活断層の検査もしないまま再稼動させたのも「絶対に停電を起こさない」ためだろうと多くの国民はとらえていた。ところが、原発を再稼動させた関西電力は、大飯原発3号機がフル稼働に達したら、最大8基の火力発電所(計384万キロ・ワット)の運転を停止する計画だという。この報道には、本当に驚いた。

出力118万キロ・ワットの大飯原発3号機をフル稼働させたら、最大384万キロ・ワットの火力発電所を運転停止させる、というのだ。384―118=266万キロ・ワット。つまり、当面は原発を再稼動させなくても200万キロ・ワット以上の余裕があり、大飯原発の再稼動を数日遅らせて、破砕帯(断層)が活断層であるかどうかを検査してから再稼動を検討してもまったく問題なかったということである。

もちろん、火力発電所を止めなければ、今から大飯原発を止めて活断層の検査をしても停電は起こらない。

関電、来週85~88%…でんき予報
(2012年7月7日 読売新聞)から抜粋

 関西電力は6日、節電要請期間2週目となる、来週の「週間でんき予報」(9~13日)を発表した。大飯原子力発電所3号機(福井県おおい町、出力118万キロ・ワット)の再稼働で供給力が増強されることから、電気使用率は85~88%の「安定」で推移する見通しだ。

 日本気象協会によると、大阪市内の最高気温は30~31度と平年並みの見通し。予想気温や直近の需要を基に、需要は2080万~2170万キロ・ワットにとどまると見込んだ。

 供給力は、大飯原発3号機が9日未明にもフル稼働に達することで、2421万~2466万キロ・ワットを確保できるとし、最大8基の火力発電所(計384万キロ・ワット)の運転を停止する計画だ。


大飯原発3号機フル稼働で火力発電8基を停止!-関西電力が主張した「電力不足」とは何だったのか?
(2012年7月9日 ベスト&ワースト)から抜粋

フル稼働が実現した場合、関西電力は最大8基の火力発電所を停止することが報道により明らかとなった。大飯原発3号機のフル稼働で関西電力は2421万~2466万キロワットの供給が可能となるというのが、火力発電所を停止する理由となっている。

必死に節電し、電力供給に努力しなければ夏場の電力供給を乗り越えることが不可能であるという「必要性」から大飯原発再稼働は政治決断されたのではないか。


大飯原発再稼働 論点のすり替えに批判を
─福島の現実 倫理的出発点に 金子勝慶應大教授に聞く

(2012年7月3日 京都新聞朝刊)

 夏の電力不足などを理由に関西電力大飯原発の再稼働を決めた政府。金子勝慶応大教授に、その背景にある「本質的な問題」を聞いた。
         ×   ×
 政府や電力会社が再稼働を急ぐのは、無理やりにでも動かさないと経営が持たないからです。安全性が怪しくて動かせない原発は多額の減価償却費と維持管理費だけを生み、赤字を膨らませる「不良債権」なのです。

 一方、減価償却を終え、安全対策に投資をしていない原発ほどコストが安く、利益が上がる仕組みになっている。危険な原発に依存するビジネスモデルを続けてきたことに問題の根があります。

関電は発電総量の約5割を原発が占め、40年で廃炉となると8年以内に全11基の原子炉のうち7基が止まる計算です。再稼働は、実はエネルギー不足問題ではなく電力会社の経営問題なのです。

 東京電力の総合特別事業計画をよく読むと、年間20ミリシーベルト未満の地域の住民は帰宅することにして賠償費用を計上していません。また除染費用も計上していません。この賠償費用の「値切り」で放射線被害者を切り捨てる一方、経営責任も貸し手責任も問わずに家庭用電気料金の値上げで賠償費用を国民に払わせようとしている。そこに財政赤字を膨らませたくない国と、貸し手責任を問われたくない金融機関の利害が絡み、柏崎刈羽原発の再稼働への圧力になっている。

 注視すべきはこうした「論点のすり替え」です。エネルギー不足、燃料費上昇、安価な原発…。いずれも、政策を正々堂々と展開できないため、ロジックをごまかし、国民世論をトリックにはめるための論点設定です。

 それは税と社会保障の一体改革も同じ。最初は社会保障を充実させるから増税を受け入れろ、だったのが、いつの間にか消費税増税だけが先行している。そうなると今度は「『決められない政治』からの脱却」と言う。私たちはそうしたすり替えを見抜き、厳しく批判しなくてはなりません。

 今行われている政治は、旧来型の永田町のパワーバランスの下で「失われた20年」に戻ろうとする″先祖返り″です。このままでは「失われた30年」に向かってしまう。

 しかし、国民世論のスタンスはぶれていません。原発の即時停止は2割強、漸進的な脱原発は4割強で、再生エネルギーヘの期待も約7割で安定している。消費税増税も社会保障が充実するならいいと一貫している。そして、原発問題も含めて、市民の側から今の社会を変えようという動きも各地で起こっています。

 政党政治が壊れつつある中、政策に従って市民が個々の政治家を選別する状況が生まれてくるでしょう。小泉純一郎や橋下徹のような「劇場型政治」の観客にならず、いかに地に足のついた政治とコミットしていくかに今後がかかっています。

 電力会社は地域独占や総括原価方式で守られ、政治家には献金、官僚には天下りがある。原発は旧来型の政財官一体構造の「ど真ん中」にあります。簡単に手放すはずがない。この「ど真ん中」に対抗するには強いロジックが必要です。その出発点は何か。『フクシマ』以外にありません

 被害に苦しむ福島の人々の現実を、われわれの倫理的な出発点にする。その場所から訴え続ける限り、あらゆるロジックに負けません。そういう意味で、私は現状に悲観していません。


大飯フル稼働 火力8基停止 関電に怒り “電力不足ウソか
(2012年7月8日しんぶん赤旗)

 多くの国民が連日、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働に強い反対の声をあげる中、関西電力は再稼働を強行、5日には同原発3号機が発電を再開、送電も始まり、9日にはフル稼働する見通しです。

 こうした中、“フル稼働すれば、代わりに燃料費が高い火力発電所を8基止める”と一部で報道され、国民から大きな怒りがあがっています。

 関西電力の「需給予想」によると、9日の需要を2080万キロワットと予測。それにたいする総供給量は、大飯3号機の再稼働で118万キロワットを得ることができ、火力や水力などを合わせて2434万キロワットになると試算。電気使用率は85%にとどまり、「安定」としています。

 このため、現在もっとも供給力の大きい火力発電(9日の試算は1088万キロワット)を一部停止しても「安定」供給が可能という計算です。

 報道を知った大阪市民からも「大飯再稼働は関電の利益が目的だった。これで電力不足は全くのうそであることが明らかになった」「詐欺かペテンか。あまりに腹が立って言葉がみつからない」との憤りの声があがっています。

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