原発の再稼動決定を「判断する時期は近い」という野田首相

昨夜のNHK「ニュースウオッチ9」に生出演した野田首相は、大飯原発の運転再開を「判断する時期は近い」と発言した。福島の人はこう言っている。「フクシマはまだ終わっていないし、政府はその深刻な被害をまったく理解していない。そして、次のフクシマを生むかのようなことを平気で進めている。理不尽です」

日本は、福島原発事故によって世界に迷惑をかけた。今も事故は収束せず、迷惑をかけ続けている。一番の被害を受けているのは、福島の子どもたちであり、今も日々放射線を浴び続けている。その対策も進んでいない。そうした状況の中で、事故原因の究明もされていないのに、大飯原発再稼動の決定を「判断する時期は近い」という野田総理大臣。

世界が日本の動向を見守る中、子どもたちが大人の生き様を注視している中で、これほど倫理観のない、人間性が欠如した言動に対し、私たち日本の市民はどう対応するのか、ということが問われている。

首相 大飯原発運転再開“近く判断”
(5月17日 23時14分 NHK)から抜粋

野田総理大臣は、NHKの「ニュースウオッチ9」に出演し、関西電力大飯原子力発電所の運転再開の決定について、「判断する時期は近い」と述べました。

この中で、野田総理大臣は、福井県にある関西電力大飯原子力発電所の運転再開の決定について、「最後は私のリーダーシップのもとで、関係4閣僚で意思決定をしたい。もうそろそろ、その判断の時期は近い。その判断をした暁には、安全性、必要性、万全を期す態勢を私を先頭に作っていく」と述べました。


特集ワイド:これだけは見過ごせない 原発再稼働の問題点とは
(2012年04月24日 毎日新聞)

 ◇「対策先送り」「命の軽視」

 政府が大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に突き進んでいる。今は「地元同意」のとりつけに懸命だが、原発のシビアアクシデント(過酷事故)防止策に問題はないのか−−聞いて回ると、関係者から「真剣に取り組んだ結果とは思えない」との声まで飛び出した。原発再稼働の問題点、これだけは見過ごせない。【戸田栄】

 再稼働への憤りは、どこあろう与党内部でも渦巻いている。「小中学生でもおかしいと思うでしょう。それで、やむにやまれず待ったをかけているんです」。民主党の原発事故収束対策プロジェクトチーム(PT)座長、荒井聡元国家戦略担当相は、そう語気を強める。

 同PTは再稼働にあたっての5条件を政府に突きつけた=別表。荒井座長が真っ先に批判の矛先を向けたのは、まだ原子力規制庁が発足していないことだ。「3・11後にずっと原発の安全性の議論をしてきて、日本の原子力政策は欠陥だらけと分かりました。その原因は、安全神話の中に身を置いた原子力ムラの一部の人たちだけで政策を主導してきたことです。枝野(幸男経済産業相)さんは本来、脱原発よりもっと厳しい立場だったんですよ。それが原子力安全行政も電力需給もと1人でやると、十分な安全対策もないのに再稼働もやむなしとなってしまう」

 再稼働の前提条件としては、同PTのほか、橋下徹・大阪市長、松井一郎・大阪府知事が8条件、嘉田由紀子・滋賀県知事と山田啓二・京都府知事が7条件を示した。共通するのが、原子力規制庁の発足。14日に枝野経産相の協力要請を受けたおおい町長も、早期設置を求めた。

 原子力規制庁は、4月から環境省の外局として設置される予定だったが、野党から位置づけに異論が出て発足が遅れている。荒井座長はそもそも政府の姿勢を疑問視する。

 「普通なら、政府側や担当官が野党に日参して法案成立に努力するが、そんな様子が見られない。原子力安全・保安院が経産省にあるうちに、再稼働の道をつけたいとの思惑がどこかにあるんじゃないかと勘繰りたくもなります」

 さらに最重要として挙げたのが、政府の原発事故調査・検証委員会や国会の事故調査委員会の結論を待つことだ。「なにが事故の原因かをはっきりさせなきゃいけないのは、当たり前ですよ。(政府見解で)一番恥ずべきことは、津波だ、津波だと、全部を津波のせいにしていること。最初に鉄塔が倒れ、外部電源を喪失した。その耐震性だって問題なんじゃないですか」。当の国会事故調でも、元日本学術会議会長の黒川清委員長が、政府の再稼働の判断基準について「暫定的な原因究明に基づいている。必要な対策が先送りされ、想定を超える災害に対応できていないことも明らか」と批判している。

  ■

 考えたくはないが、万が一の備えは欠かせない。その筆頭が、事故収束作業の拠点となる免震重要棟だ。福島第1原発で、同棟が10年7月から運用開始されていたのは、「不幸中の幸い」とされている。ところが、大飯原発3、4号機など関西電力の原発にこの施設はない。また、原子炉内の圧力を下げるため、弁を開くベントを余儀なくされた場合、放射性物質の大気中への流出を防ぐフィルター付きベントの設置もない。ともに3年後の設置を目指す。リスクコミュニケーションの専門家で、原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会の委員を務めた土屋智子さんは「住民を守ることを真っ先に考えなくてはいけないのに、何も動いていない」と表情を曇らせる。

 土屋さんは、99年の茨城県東海村のJCO事故以来、住民の避難などについて研究してきた。「非常時の指令所(オフサイトセンター)は、発電所以上にしっかりしたものがほしい。ところが、東日本大震災では福島どころか、茨城でもオフサイトセンターは被害を受けて使えなかった。おおい町では海抜2メートルの海辺にあり、津波で使用不能の場合は福井県の敦賀、美浜、高浜の別のセンターで対応するとしていますが、広域地震ではいっぺんに被災する可能性がある」と指摘する。

 このほか、緊急時の住民連絡体制の再整備、避難路の再検討などもできていない。細かい課題も山ほどある。例えば、被ばくが懸念される際には安定ヨウ素剤が配布されるが、乳幼児への投薬が難しかったという問題が今回、明らかになった。錠剤だったため被災時に水に溶かして正確な量を飲ませることができなかったのだ。

 同部会では今年3月、課題と対応策の議論の結果を「中間とりまとめ」とした。しかし、その対応策を決定するはずの原子力規制庁は設置されておらず、現在、「とりまとめ」がどう扱われているのかは委員にも連絡がないという。思わず「は?」と声が出そうになった。

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 こんな状況では、そもそも脱原発を目指す人々が猛反対するのも当然だ。原子力資料情報室の西尾漠共同代表も「規制庁の発足と事故原因の究明」最優先課題に挙げる。

 「原子力安全委員会も原子力安全・保安院も、まったく国民から信頼されていない。だから、規制庁をつくると国が考えたわけでしょう。原因をしっかり突き止めなくてはならないのも当然。なんで、再稼働をこんなに急ぐのか。かえって不信を大きくするだけです」。加えて西尾共同代表は、誰もが福島原発事故を最大の想定としていることに注意を促す。「それ以上の惨事があり得るのですよ。甘くみてはいけません」

 経産省前では、再稼働に反対する市民らのハンガーストライキが行われている。座り込みをしている市民グループ「経産省前テントひろば」の淵上太郎代表は「規制庁発足と事故原因究明ぐらいは最低のこと。経済にかこつけて命を軽く見ていることが許せない。それがわからないほど、国民はバカじゃないですよ」と話した。

 やはりテント村で出会った「原発いらない福島の女たち」世話人の椎名千恵子さんの憤りに満ちた目が忘れられない。

 「フクシマはまだ終わっていないし、政府はその深刻な被害をまったく理解していない。そして、次のフクシマを生むかのようなことを平気で進めている。理不尽です」

 再稼働を焦る国の姿は、フクシマをすっかり忘れているようにも見える。


大飯原発近くの斜面が崩落の恐れ 関電解析、14年度に工事へ
(2012/05/14 20:31 共同通信)から抜粋

 経済産業省原子力安全・保安院は14日に開いた原発の耐震性を検討する専門家会議で、関西電力大飯原発1、2号機(福井県)の近くにある斜面が地震で崩落する可能性を否定できないとする関電の解析結果を明らかにした。関電は崩落防止のため、表面の一部を削り取る工事を2014年度に始めるという。

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