2013/10/29

放射能汚染水―海外では「世界最大のスキャンダル」

汚染水に厳しい世界の視線
(2013年9月3日 朝日新聞 声欄)

ドイツ 汚染水に厳しい世界の視線

ピアニスト デットバイラー 扶美 (ドイツ43)

 最近、ドイツでは毎日のようにトップニュースで、日本の福島第一原発の汚染水漏れが「世界最大のスキャンダル」として報道されています。日本に一時帰国していますが、日本政府の反応の鈍さに愕然(がくぜん)としています。

 2年半前の東日本大震災の時には、ドイツ人や隣国のスイス人の見知らぬ人からも、励ましの言葉をかけられ、募金をしてもらいました。そして、日本国民の震災後の対応に感動している、とニュースでも報じられました。

 ところが、今では原発再稼働、推進、諸外国への売り込みなど、被害に苦しむ国民を抱え、同原発周辺を放射能で汚染している国とは思えない無責任な決断をしている日本政府とそれを許している国民は、ドイツでは理解されません。

 日本が地球と人間、生物を放射能で汚染していることに世界中が注視し、恐怖を抱いています。日本政府は有効な対策を取り、脱原発に向け信用を取り戻さねば、世界は日本を同等の相手としては見てくれないでしょう。一日本人として、心配でたまりません。


汚染水漏れ「福島の状況は深刻」英独の専門家
(2013年9月6日 HUFF POST)から抜粋

福島第一原発事故をめぐっては、矛盾する報告書が飛び交って混乱を招いてきた。原子力の専門家たちは、「汚染水が漏れた問題の深刻度については、誰にも本当のところがわからない」と強調している。

福島第一原発は、2011年3月に発生した地震と津波によって電源を喪失して冷却が止まり、原子炉のメルトダウンが起きた。同原発を運営する東京電力は、溶けた核燃料を冷やすべく必死で注水作業を行っている。

汚染水は1日400トンの割合で増加し、発電所に設置された1000個以上のタンクには、現在合計で33万5000トンの汚染水が貯蔵されている。そして、これらのタンクのいくつかから、汚染水が地上に漏れ出している。

東京電力は先月、2011年3月の事故以来これまででもっとも深刻な状況として、敷地内にある貯蔵タンクから300トンの高濃度放射能汚染水が漏れたことを認めた。

ドイツ出身で、フランス政府やドイツ政府への助言も行ってきたエネルギー問題のコンサルタント、マイケル・シュナイダー氏は、事態は「われわれが実際に認識しているよりもはるかに悪い状態」に発展していると述べている。

シュナイダー氏はハフィントンポストUK版の取材に対して次のようにコメントしている。「現在、数百という問題が山積みになっている。温度、被ばく線量、被ばくした人数、これらすべてのデータに不備がある。われわれはまだ何も把握できていない。一般市民が理解しているよりも、はるかに悪い状態だ」

シュナイダー氏は、現在の状況を引き起こしている原因は、日本政府と東京電力が、問題の深刻さを認めることを拒否していることにあると主張する。

現在の課題は、彼らの現実逃避的な姿勢を崩すことだ。これは組織的な現実逃避だ。ここでは日本の持つプライドが問題になっているが、プライドが現実逃避の態度へと変わってしまうと、このような問題は本当に危険なものとなる。彼らは人々を、高まり続けるリスクにさらしている

日本政府は5日、原発のタンクからの漏えいを阻止し、高濃度汚染水を処理するための対策に470億円を投入すると発表した。投入資金の大部分は、摂氏マイナス40度の冷却材を入れた管を使って最深30メートルまで地盤を凍らせる「遮水壁」(日本語版記事)の建設に使用される。

理論的には、この遮水壁が汚染水の漏えいを阻止するほか、放射性物質が大量に検出されている原子炉とタービン建屋に地下水が流入するのを防ぐ役割を果たすことになる。

しかし、今回の決定は、国際オリンピック委員会(IOC)が2020年夏季オリンピックの開催地を東京、イスタンブール、マドリードの中から選定する数日前に発表されたこともあり、「原発事故による安全性の心配はない」とアピールするためのものではないかと見られている。

シュナイダー氏はこう述べている。「遮水壁のプロジェクトは、画期的な対策案が存在するとアピールするために考え出されたものだ。日本政府はオリンピック開催地決定の数日前になって、このプロジェクトに470億円もの資金投入を決定した。しかし、実用的な面から考えれば、この対策は非常に疑わしく、信頼性が高いとはいえない。長期的に持続可能とはいえず、この壁に効果があるかどうかは誰もわかっていない。パニックが引き起こした反応と言える」

氷壁の維持は非常に難しく、ひとたび停電が起きれば「すべてだめになってしまう」可能性がある、と専門家たちは指摘する。

原子力のエンジニアでコンサルタントも務める英国のジョン・ラージ氏は、この技術は小規模な汚染を管理するためにしか使用されたことがないと指摘し、今回の頼みの綱とするのはリスクが高すぎると述べる。

「彼らは放射性物質を貯蔵する巨大なタンクの建設を計画しているが、この氷壁が崩壊してしまえば汚染水は自由に動き回ることになる。氷壁は脆弱であり、ましてこの規模のものは前例がない

ラージ氏は、矛盾した報告書が「飛び交ってきた」原因について、東京電力と日本政府という2つの情報源だけに頼っていることだと指摘する。「これらの情報は矛盾を含み、混乱している。それに、信用できないと感じる。彼らの真意が何であるか、疑わざるを得ない

シュナイダー氏も、問題はもはや誰も東京電力や日本政府を信頼していないことだと話す。「日本の人々が、彼らの主張は信用できないと感じるのはもっともなことだ


汚染水漏れ 「Nature(ネイチャー)」が日本政府の福島第一原発の対応を批判
(2013年9月7日 The Huffington Post)から抜粋

科学雑誌のネイチャー(Nature)が、9月3日に掲載した福島第一原発に関する論説が話題になっている。日本政府の行動の遅さと、情報公開のおそまつさを指摘する厳しい内容だ。思想家の内田樹氏は、「自然科学のジャーナルが一国の政府の政策についてここまできびしい言葉を連ねるのは例外的なこと」と、同記事の内容を紹介している。

ネイチャーの指摘する内容はどのぐらい厳しいものなのか。

記事は「Nuclear error」と題され、「日本はもっと世界に助けを求めるべきだ」という副題がついている。福島第一原発事故の事故は東京電力の手に負えないほどのものとした上で、政府が先頭に立って対応するということを決めた時期が遅すぎると非難している。また、漏れた汚染水の放射線量が、最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったことや、報道が遅れたこと、監視体制の甘さなどを挙げ、情報に精通した海外の専門家に助けを求めるべきと助言している。

日本が海外の力を借りるべきとする意見を出しているのは、ネイチャーだけではない。

アメリカの科学者、チャールズ・ファーガソン氏も、ロシアやノルウェーには、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家がいることなどを挙げ、日本が他の国から多くの専門家を呼び込むべきだということに同意している。

全文

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安倍首相「汚染水の影響は・・・完全にブロック」

汚染水:カリフォルニアの海岸沿いの市民は非常に不安

英エコノミスト特派員「水位計がないのは理解できない」

ドイツ新聞 汚染水反応:政府信用できない


首相「遮断」発言 汚染水 外海に流出中


流出ずっと続いていた 泥に蓄積 魚に影響


原発輸出 平和より「金もうけ」


反省なき原発輸出行脚

安倍首相、トルコに出発 原発輸出やシリア情勢など協議
(2013年10月28日12時05分 朝日新聞)

 安倍晋三首相は28日午前、トルコ・イスタンブールを訪れるため、政府専用機で羽田空港を出発した。訪問は5月に続き2回目。エルドアン首相と、前回訪問時に日本が排他的交渉権を獲得したトルコへの原発輸出を前進させるため協議をするほか、シリアやイラン情勢なども話し合う。

 イスタンブールのアジア側と欧州側をつなぐボスポラス海峡の地下鉄の開通式典にも出席し、30日に帰国する。

 国会中の平日に、首相が国際会議以外の目的で外遊するのは異例だ。首相は出発に先立ち、記者団に「先週は毎日国会に出て政府の方針・政策を説明した。安倍政権は国会での議論をたいへん重視している。一方、首脳外交で国益を確保することも大事だ」と語った。

2013/10/22

イラク戦争の犠牲者 推定50万~65万5千人 7割以上が民間人

イラク戦争の犠牲者は推定50万人(ナショナルジオグラフィック)
(2013年10月17日 headlines.yahoo)から抜粋

 2003~2011年のイラク戦争によって、イラクでは約50万人の命が直接的、間接的に奪われたことが、同国の1960世帯を対象とした画期的調査によって明らかとなった。公衆衛生専門家が行った同調査によると、戦争による暴力行為は2006年と2007年がピークだったという。

 シアトルにあるワシントン大学の公衆衛生専門家エイミー・ハゴピアン(Amy Hagopian)氏率いる国際チームは、イラク全土の世帯で家族やきょうだいに関する調査を実施した。イラク保健省の関係者も参加したこの調査は、イラク戦争に関連して、過去の調査より新しく正確な推定死者数を導きだすことを目的に行われた。

死者は約50万人と推定している。これはおそらく控えめな数字だ」とハゴピアン氏は述べる。「戦争という決断がどれほどの人的被害をもたらすのか、我々は知る必要がある」。

子どもたちの遺体を前に涙をぬぐう男性

調査によると、2003~2011年に犠牲となった男性、女性、子どもの60%以上は、銃撃や爆破、空爆といった直接的な攻撃によって命を落としたという。それ以外の人々は、ストレスによる心臓発作、衛生設備や病院の破壊といった間接的な原因によって亡くなっている。

「これは非常に重要かつ信頼性の高い調査だ」と、ニューヨークにあるコロンビア大学の疫学者レスリー・ロバーツ(Leslie Roberts)氏は述べる。ロバーツ氏自身、コンゴやジンバブエ、そしてイラクで戦時中の死者数の調査を指揮した経験をもつ。「実際に起きたことを正確に記録するのは非常に重要なことだ」とロバーツ氏は述べ、2005年に当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領が行った、戦闘によるイラク市民の犠牲者数はわずか3万人ほどだという発言を引き合いに出した。

 戸別調査に基づく推定死者数は、おそらく控えめな数字だという点については、ロバーツ氏もハゴピアン氏と同意見だ。この数字は家族の不完全な記憶に基づいたものであり、また、難民キャンプや国外で生活していたイラク人110万人はほとんど計算に入っていないためだ。


◆イラク戦争終結を宣言=「歴史の一部に」米大統領
※記事などの内容は2011年12月掲載時のものです

【ワシントン時事】オバマ米大統領は14日、ノースカロライナ州フォートブラッグ陸軍基地で、イラク駐留米軍部隊が間もなく撤退を完了するのを前に演説し、「イラクの将来はイラク国民の手に委ねられ、イラクでの米国の戦争は終結する」と宣言した。ブッシュ前政権が2003年に国連安全保障理事会の討議を打ち切る形で開戦、「違法な戦争」と国際批判も浴びた戦争が、約9年ぶりに正式に幕を閉じる。

【ワシントン時事】オバマ米大統領は31日、イラク駐留米軍の戦闘任務が終結したことを正式に国民に宣言した。2003年3月の開戦から7年5カ月。ブッシュ前大統領が開戦の大義名分にした大量破壊兵器は見つからず、米軍死者は約4400人に達した。ブッシュ前大統領は圧倒的な軍事力を背景に、国際世論を無視してイラク戦争に突き進んだ。短期間で首都バグダッドを陥落させたものの、フセイン政権崩壊後の統治機能の確立や治安維持計画はずさんで、宗派間の抗争をあおる結果を招き、治安は悪化した。


イラク戦争で奪われた莫大な人命の犠牲- 総括をしないのは人類の汚点 
(2013年3月20日 yahooニュース)から抜粋

2003年3月20日にイラク戦争が開始されてから10年がたつが未だこの戦争の過ちについて十分な総括が国際的になされていない。イラク戦争は、国連安保理の許可を得ない武力行使であり、明らかに国連憲章違反であったし、その理由とする「大量破壊兵器」は存在しなかった。この誤った戦争により、イラクはあまりにも壊滅的な打撃を受け、人命を奪われた。

アメリカ、ジョンホプキンズ大学ブルームバーグ公共衛生大学院の研究では、2003年のイラク戦争の結果として約65万5千人のイラク人が死亡したと推定、WHOはイラクで2003年3月から2006年6月までに15万1千人が暴力によって死亡したと推定している。

2004年4月と11月の米軍によるファルージャ総攻撃では、戦争犯罪に該当する「民間人攻撃」が行われたとされ、多数の民間人が殺害されたという。白リン弾や劣化ウラン弾等残虐兵器が民間人の居住地で、市民に対する危害を最小限に抑える手段を一切講ずることな大量に使われ、おびただしい死者が出た

白リン弾使用については、イタリアのドキュメンタリーでその残虐性、極めて残酷で深刻な被害が暴露されている。アメリカ軍がアブグレイブやその他の刑務所で、拷問・非人道的取り扱いに該当する身体的虐待や侮辱などの行為をイラク人拘留者に対して行ったことは多くの証拠に裏付けられている。

こうした行為は何より戦争犯罪の可能性が高いが、きちんとした調査は行われず、ほとんど誰も責任を問われていない。訴追されるのは少数の末端の兵士だけ。意思決定に関わったトップレベルの人々、ブッシュ元大統領やラムズフェルド元国防長官、拷問を正当化した司法省、国防省関係者等の責任は全く問われていない

超大国が大規模かつ残虐な人権侵害をして幾多の罪もない人を殺害しても誰も責任を問われない、そのようなことでは、大国の都合でおびただしい虐殺が今後も果てしなく繰り返されるだろう。

イラクにおける人命の被害は決して過去のことではない。戦争後、戦争当時生まれてすらいなかった子ども、何の罪もない子どもを今も残酷に苦しめている。イラク戦争で米軍等が使った大量の有害兵器が環境汚染を引き起こし、それは特に子どもたちの生命と健康を危機にさらし続けている。

英インディペンデント紙によると、「イラクの医者たちは、2005年以来深刻な先天的障害を負った乳幼児の数の著しい増加を訴えている。先天性障害は頭が先天的に二つの頭をもった赤ちゃんから、下肢の傷害を負った赤ちゃんまで多様な症例がある。彼らは、ファルージャでのアメリカ軍と反乱軍の間の戦い後、がんの発症率が以前よりもはるかに高くなったとも話している」と述べている。

ファルージャにあるファルージャ総合病院。その関わった調査・分析によれば2003年以来ファルージャで生まれた15%の乳幼児に先天的異常があるという。

こうした先天性異常の原因の一つの可能性として考えられるのは、劣化ウラン(DU)弾である。国連環境計画(UNEP)の情報公開要請にも関わらず、アメリカ政府が2003年のイラク戦争で使用されたDU弾の具体的な量や投下位置を情報公開しないため、使用量や投下位置は今も特定されていない。2003年のイラク戦争においては約1.9トンのDU弾が使用されたと公表しているが詳細は不明である。

これ以上子どもたちを苦しめないために、なぜ先天性異常が頻発しているのか、原因を特定し、原因を除去する等効果的な予防方法を打ち立て、健康を守り治療をする政策が必要であり、被害者は補償を受けるべきだ。有害物質を大量に垂れ流したまま、環境汚染の責任を全くとらず、どんな有害物質をどの程度どこに使ったかも公開しないまま、子どもたちが死んでいくのに何の責任も取らない、これは今も続く米国等の重大な人権侵害だと思う。

伊藤 和子
弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長

2013/10/20

甲状腺被曝、公表の10倍 福島第一作業員、半数未受診

甲状腺被曝、公表の10倍 福島第一作業員、半数未受診
(2013年7月19日5時43分 朝日新聞 WEB)

作業員の甲状腺局所の線量(100mSv以上)

【大岩ゆり】東京電力福島第一原発事故で、がんが増えるとされる100ミリシーベルト以上の甲状腺被曝(ひばく)をした作業員が、推計も含め2千人いたことが分かった。対象を広げ詳しく調べ直したことで、昨年12月の公表人数より10倍以上増えた。東電は、大半の人に甲状腺の異常を調べる検査対象となったことを通知したというが、受検者は半数程度にとどまるとみられる。

 作業員の内部被曝の大部分は事故直後の甲状腺被曝だ。だが、厚生労働省も東電も、全身の線量だけで作業員の健康を管理しており、甲状腺被曝の実態把握が遅れている。国の規則が全身の被曝線量の管理しか求めていないためだ。

 東電は昨年12月、一部の作業員の甲状腺被曝線量を初めて公表した。世界保健機関(WHO)に報告していた、実測値のある522人のデータで、100ミリシーベルト以上の人は178人、最高は1万1800ミリシーベルトとしていた。

 東電はこれをきっかけに、対象を広げ、甲状腺の線量をきちんと実測しなかった作業員についても、推計した。さらに今年に入り、東電からデータの提供を受けた国連科学委員会が、作業員の甲状腺被曝線量の信頼性を疑問視していることが判明。厚労省も、東電と関連企業に内部被曝線量の見直しを指示した。

 実測値を再評価したほか、体内に入った放射性ヨウ素の量がはっきりしない場合、セシウムの摂取量をもとに、作業日の大気中のヨウ素とセシウムの比率などから推計した。この結果、100ミリシーベルトを超えた作業員は1973人と分かった。中には、線量見直しで甲状腺被曝が1千ミリ以上増えた人もいた。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の経験などから、甲状腺に100ミリ以上の被曝をすると、がんのリスクが高まると考えられている。従来は、40歳以上はがんが増えにくいとされていたが、最近は40歳以上でもリスクが増えるとの報告も出ている。

 東電広報部は「甲状腺被曝線量が100ミリを超えていた作業員全員に対し、東電の負担で生涯、年1回の甲状腺の超音波検査を行う。検査対象者にはすでに通知した」としている。検査を受けた作業員の割合は確認中というが、関係者によると、甲状腺検査を受けた作業員は半数程度にとどまっている。

     ◇

 〈甲状腺被曝(ひばく)〉 主に吸入などで体内に入った放射性ヨウ素による内部被曝。100ミリシーベルト以上被曝するとがんが増えるとされるが、チェルノブイリ原発事故では50ミリシーベルト以上でがんが増えたとの報告もあり、予防目的で甲状腺被曝の防護剤を飲む国際基準は50ミリシーベルトだ。

     ◇

▽作業員の健康相談窓口

 東京電力は、作業員のための、福島第一原発事故の被曝による甲状腺をはじめとするがん検診や、健康不安に関する相談窓口を設けている。

 原子力・立地業務部 健康相談窓口(電話:03―6373―1111。受け付けは平日の就業時間帯


◆お知らせ 2013年
当社関連報道平成25年7月19日 
朝日新聞1面 「甲状腺被曝者 公表の10倍」他各社報道について

平成25年7月22日
東京電力株式会社

最大の被害者は、福島原発の事故処理作業員と子どもたち

白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝をした作業員が約1万人もいるが、作業員の多くは労災基準を知らず、支援体制の整備が課題だ―と朝日新聞が報じている。一方で、原発事故の後、「非常時の年間被ばく限度量」として設定した20ミリシーベルトを未だに1ミリシーベルトに戻していないため、多くの子どもたちが、避難すべき地域に留まり続け、原発作業員の白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝をしている

9460人、白血病労災基準超える 福島作業員


1万人、白血病労災基準超す 福島第一で被曝の作業員
(2013年8月5日 朝日新聞)

 【青木美希】福島第一原発で事故から9カ月間の緊急作業時に働いた約2万人のうち、白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝をした人が約1万人にのぼることが、東京電力が7月に確定した集計から分かった。作業員の多くは労災基準を知らず、支援体制の整備が課題だ。

 原発作業員は年50ミリ超、5年で100ミリ超を被曝すると働けなくなる。これとは別にがんの労災を認定する基準があり、白血病は年5ミリ以上被曝した人が作業開始から1年過ぎた後に発病すれば認定される。原発事故後には胃がんなどの労災基準もできた。

 東電の集計によると、福島第一原発で2011年3月11日の事故から同年12月末までに働いた1万9592人の累積被曝線量は平均12・18ミリで、約5割にあたる9640人が5ミリ超の被曝をした。この人たちは白血病を発病すれば労災認定される。今年6月末には累積で5ミリ超の被曝をした人は1万3667人になった。今後も汚染水対策など被曝の恐れが高い作業が予定され、白血病の「年5ミリ以上」の労災基準に該当する人は増え続けるとみられる


原発作業3カ月、20年後に白血病判明
5.2ミリシーベルト被曝 労災認定の男性語る

(2013年8月5日 朝日新聞)

原発作業3ヶ月 20年後、白血病判明


甲状腺被ばく、公表の10倍 福島第一作業員

2012年12月に公表された福島原発作業員の被ばく線量の多さ(以下のグラフ)に驚いたが、実態はその10倍もあった。しかし、政府や自民党は、汚染水問題の悪化で原発敷地内の放射線量が高まる中、「命を削って事故処理にあたっている作業員」の被ばく問題を改善するどころか、原発の再稼動を急いでおり、ますます事故処理作業員を不足させる方向に動いている。(原発の再稼動で、技術や知識のある作業員が全国に分散する)

作業員の甲状腺局所の線量(100mSv以上)

甲状腺被曝、公表の10倍 福島第一作業員、半数未受診
(2013年7月19日 朝日新聞)から抜粋

 東京電力福島第一原発事故で、がんが増えるとされる100ミリシーベルト以上の甲状腺被曝をした作業員が、推計も含め2千人いたことが分かった。対象を広げ詳しく調べ直したことで、昨年12月の公表人数より10倍以上増えた。東電は、大半の人に甲状腺の異常を調べる検査対象となったことを通知したというが、受検者は半数程度にとどまるとみられる。

 作業員の内部被曝の大部分は事故直後の甲状腺被曝だ。だが、厚生労働省も東電も、全身の線量だけで作業員の健康を管理しており、甲状腺被曝の実態把握が遅れている。国の規則が全身の被曝線量の管理しか求めていないためだ。

 東電は昨年12月、一部の作業員の甲状腺被曝線量を初めて公表した。世界保健機関(WHO)に報告していた、実測値のある522人のデータで、100ミリシーベルト以上の人は178人、最高は1万1800ミリシーベルトとしていた。

 東電はこれをきっかけに、対象を広げ、甲状腺の線量をきちんと実測しなかった作業員についても、推計した。さらに今年に入り、東電からデータの提供を受けた国連科学委員会が、作業員の甲状腺被曝線量の信頼性を疑問視していることが判明。厚労省も、東電と関連企業に内部被曝線量の見直しを指示した。

 実測値を再評価したほか、体内に入った放射性ヨウ素の量がはっきりしない場合、セシウムの摂取量をもとに、作業日の大気中のヨウ素とセシウムの比率などから推計した。この結果、100ミリシーベルトを超えた作業員は1973人と分かった。中には、線量見直しで甲状腺被曝が1千ミリ以上増えた人もいた。

全文


ノーベル平和賞の「社会的責任を果たすための医師団」が警告

米国科学アカデミーによれば、安全な放射能の線量というものはない。過去数十年にわたる研究から、放射線はどんなに少ない線量でも、個々人の発がんリスクを高めることがはっきりと示されている。

日本で危機が続く中、人に発がんの危険が生じるのは最低100ミリシーベルト(mSv)被曝したときだという報道が様々なメディアでますます多くなされるようになっている。これまでの研究で確立された知見に照らしてみると、この主張は誤りであることがわかる。100 mSv の線量を受けたときの発がんリスクは100人に1人、10 mSv では1000人に1人、そして1 mSV でも1万人に1人である


<<< 子どもたちの被ばく問題 >>>

チェルノブイリ法」では、年間被ばく線量が0.5ミリシーベルト(土壌汚染が37kベクレル/m2)以上の地域で、医療政策を含む防護対策が行われる。1ミリシーベルト以上であれば、避難の権利があり、5ミリシーベルト以上の地域は、移住の義務がある

チェルノブイリ法の避難基準

福島の帰還基準、避難者と賠償額の増加を恐れて「年5ミリ」とせず

原発事故で避難した住民が自宅に戻ることができる基準を「年20ミリシーベルト以下」から「年5ミリシーベルト以下」にする案を政府が検討したが、避難者が増えることを懸念して見送っていた。

「多くの医者と話をする中でも5ミリシーベルトの上と下で感触が違う」と5ミリ案を検討。チェルノブイリ事故では、5年後に5ミリの基準で住民を移住させた。年換算で、5.2ミリ超の地域は 放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝で白血病の労災認定をされたこともある。ところが、5ミリ案は実行されなかった。「20ミリ案は甘く、1ミリ案は 県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」 「賠償額の増加も見送りの背景にある」(2013年5月25日 朝日新聞)から要約

記事全文


「5ミリシーベルト以上は強制移住」西尾正道

この5ミリシーベルト以下のエリアでも26年後のチェルノブイリでは、75%以上の子どもたちが病気になっている

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

(2012年9月にNHKで放送されたドキュメンタリー番組の書籍版 NHK出版)
ウクライナのコロステンの市内は、年0・5~1ミリシーベルトの放射線管理区域と年1~5ミリシーベルトの移住権利区域が半分ずつ占めている。日本でも同程度の汚染地域は広く分布しており、年0・5ミリシーベルト以上の汚染地域ならば1千万人以上が暮らしているだろう。チェルノブイリから26年後のコロステンの現状は、目をそらすことなく凝視すべきだろう。子供たちの75%以上が何らかの疾患を抱えているという「現実」はあまりにも重すぎる。

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

2013/10/19

『福島原発事故被害は過小評価されてる』 国連科学委員会(UNSCEAR)ベルギー代表

UNSCEAR、怒るベルギー代表:
『福島原発事故被害は過小評価されている』

mardi 20 août 2013 Canard Plus

原子力事故や放射能の被害を評価する任務を負う国連機関 UNSCEAR内部で議論に火花が散っている。UNSCEARは最近ウィーンで開催された会議において用意された暫定報告書を、各国専門家の議論に委ねた。この報告書がベルギー代表団を激怒させたのだ。ベルギー代表団メンバーによれば「報告書全体が福島原発事故の被害を過小評価するために執筆、作成されている感が否めない。チェルノブイリやその他の研究から得られた情報のレベルからさえも後退している。」と言う。

ベルギー代表団を構成しているは、モル核エネルギー研究センターやさまざまな大学の専門家たちである。他国の多くの専門家たちとともに、彼らは五月にウィーンで開催された会議に参加した。UNSCEARは来秋、国際連合総会に報告書を提示しなければならない。

ブリュッセルに帰国後、ベルギー放射線防護協会(ABR)でのプレゼンテーションにおいて、代表団団長ハンス・ファン=マルケはUNSCEARの暫定結論に対する非常に批判的な意見を明らかにした。この批判はグリーンピースや反原発派からではなく、”原子力推進派内部”から噴出しただけに衝撃的である。我々の得た情報によると議論は過熱を尽くし、ベルギー代表団のショックはあまりに大きかったため、報告書への署名拒否さえちらつかせているそうだ。また何人かのメンバーは会議からの退場も考えたと言う。ベルギー代表団の発言と、またイギリスの専門家やその他何人かの専門家の発言の行われた結果、彼らの見解も改訂版を編集するうえで考慮に入れられる可能性はあると言う。しかし過去の歴史からこの手の組織においては、プログラムや文書の最終的な方向性は事務局と報告官によって決定されることがわかっている。最終稿が議論をきちんと反映しているかどうか、最大の注意が支払われることになるだろう。

批判

一般的な見解については誰も異論はない:日本は幸運に恵まれており、放射能の大部分は太平洋の方向に流れた。住民の避難は比較的速やかに行われ、食品の検査は満足できるレベルである。従って被害はおそらくチェルノブイリよりは少なくてすむだろう。

しかし地上への放射性物質降下量は無視できる量ではなく、従って住民の健康や将来への被害も無視できるものではない。その上、放射性物質の降下は福島市や郡山市(人口30万人)のように人口密度の高い地域で起こっている

UNSCEARの報告書が提示しているデータの多くは不完全であり、また提示の方法に問題がある。一般市民が受けた被曝量は不適切な方法を使って少なく見積もられている。これは事故現場で働いている作業員数万人の被曝量に関してもまったく同様である。そして日本政府も東電もこの件に関する詳細の公表を拒んでいる。安定ヨウ素剤が配られなかったことも明白であり、甲状腺検査の実施は一般に遅すぎた。そのために現時点でUNSCEARの報告書が主張しているように将来事故の影響はほとんど現れないだろうと断言することはできない。

またUNSCEARによる分析は、速断で胎児や遺伝を脅かす潜在的な危険を強制的に除外してしまっている。発癌リスクに関しては、明白な病変を引き起こすには放射線量が低すぎるため、懸念をする必要はないと評価している。このような仮説はベルギー人も含め多くの専門家を激怒させた。というのも上記の通り、一方では被曝量の評価が適切でないうえ、他方ではチェルノブイリの情報や近年行われた数多くの研究から低い線量でも健康に影響の現れ得ることが示されているからである。しかしながらUNSCEARはこのような放射線科学の発展から明らかに後戻りをしようとしている。各国からの代表者たちの一部は、今回の会議においてだけでなく、ここ数年間繰り返し、年間100ミリシーベルトという敷値の下ではいかなる健康被害も起こらないという考えを通そうと試みている。しかし国際放射線防護委員会(ICRP)は、平常時においては一般市民は年間1ミリシーベルト、原子力産業従事者は年間20ミリシーベルトの被曝量を越してはいけないと勧告しており、また事故時においては、一時的な基準の超過は大目に見られるものの、超過は持続的であってはならないとしていることを今一度確認しておきたい。

最新の研究では様々な分野において年間10から100ミリシーベルトの間の低線量被曝でも、健康に影響のあり得ることが示されている。被害は癌だけではない。胎児への影響、遺伝のかく乱、心臓血液疾患や白内障なども問題となる。

チェルノブイリと同じ被害の否定が福島でも行われるのか?

いくつもの報告書が机上にあり、完成を待っている。そのひとつは子供たちについての報告書だ。子供は被曝が起こった場合、特別に保護し、監視しなければならない対象である。この子供たちについての報告書はフレッド・メットラー教授率いるアメリカチームが請け負ったのだが、メットラー教授と言えば、チェルノブイリ・フォーラムで公表された報告書の著者の一人である。当時の報告書はチェルノブイリ事故被害を過小評価しているとして、大変に議論を沸かし、批判を浴びたものである。彼はまたも臭いものに蓋をしようとしているのか? 少なくともメットラー教授による今回の子供についての報告書では、低線量被曝が子供たちにもたらす健康被害に関する一連の研究や発見、論点が先験的に除外されてしまっている。このテーマに関する欧州原子力共同体(ユーラトム)の専門家グループによる報告書さえ、メットラー教授は考慮に入れようとしなかった。

もうひとつ関連する報告書の中で無視され、ほとんど議論されていない非常に重大な問題がある:それは持続的な慢性被曝のケースである。これは例えばある身体器官が内部から被曝を受ける場合に起こるものだ。実際、放射性物質が体内に均等に分散するか、あるいは逆に特殊な部位に蓄積するかによって、現れる健康被害は異なるらしいことがますます明らかになっている。つまり同じ被曝量でも被曝が起きている部位によってその影響は異なるということだ。このことは既に何年も前にチェルノブイリ事故における数々の影響を研究したベラルーシの科学者ユーリ・バンダジェフスキーが発表した仮説と一致する。

分裂・・・

福島原発事故(そしてチェルノブイリ原発事故)の被害を過小評価し、放射線防護に関する最新研究がもたらした結果から後戻りしようとする試みはいったいどこから発生しているのか? それは主にロシア、ベラルーシ、アメリカ、ポーランドそしてアルゼンチンの専門家によって構成される派閥からなのである。彼らの多くはUNSCEARだけでなくIAEA、そしてICRPの中心人物でもある。その一人、アルゼンチン人のアベル・ゴンザレスの就いている役職はアルゼンチン国内の原子力産業のものも含めて数知れず、前回のセッションでは、ベルギーの専門家が利益の混同を批判する書面を送ったほどである。しかしUNSCEARはこの批判書を議事録に記載することを拒否した。ゴンザレス、メットラー、ロシアのベラノフ(元IAEA職員であり、UNSCEAR報告書の一つの編集長)それに数人のポーランド人が、フランスのチュビアナ教授に代表される派閥とダイレクトにつながって、低線量被曝が起こしうるあらゆるネガティヴな影響に関する考えを頑なに拒絶しているのである。彼らは一丸となってこの路線を堅守しようとし、非常に活発な国際的拠点を築き上げている。彼らはUNSCEARやIAEA(UNSCEARの会議はIAEAの建物内で開催される)の事務局における戦略的なポストを占拠している。そして今日では日本人も彼らと見解を分かち合うようになっている。福島原発事故による影響を最小限に抑え、停止中の原発を再稼動させるのに懸命だからだ

その他の原子力大国、例えば中国やインドの代表は何も口出しをすることなく、UNSCEARの文書を黙認している。フランスのCEA(フランス原子力庁)やIRSN(放射線防護・原子力安全局)の専門家たちは、過去には日本が情報を滞らせていることを嘆いていたのに、今回はほとんど意見を発しなかった。スウェーデン、ドイツの専門家たちも言葉少ない。当然各国内の専門家たちの間でも異なる意見が存在するのだろうが、やはりUNSCEARが出した結論と原子力エネルギーの地政学との間に類似性を認めたくなるものである。ここで問題となっているのは各国の公式の代表専門家たちだからである。

かくして、一石を投じたのはベルギーの専門家たちだったのだ。イギリスの専門家たち、それにオーストラリア人の議長が彼らを支持した。またユーラトムの会議に参加しているヨーロッパの専門家たちは、UNSCEARの《過小評価派》に比べて、低線量被曝の影響をずっと気にかけている

いったいこれらの問題についての議論や科学的疑問はどこに行ってしまったのかと思わざるを得ない。少なくとも低線量被曝の影響を否定する一派は、来秋提示されるUNSCEARの報告書に彼らの見解が反映され、国連によって有効とされることを熱望している。それに対してベルギー人をはじめとするその他の専門家たちにとっては、それは放射線防護知識に関する最新の進歩に対する許しがたい後退を表すことになるだろう。

マルク・モリトール記
Marc MOLITOR
ベルギーRTBF(フランス語圏ベルギーTVラジオ局)


安心強調は早計 国連科学委

福島事故・国連科学委会報告をどう読むか
安心するのは早い 疫学調査の積み重ね必要

(2013年6月15日 東京新聞)

 福島原発事故の健康影響について、国連科学委員会は先月末、「被ばく線量は少なく、健康への明確な影響はないとみられる」ことを骨子とする報告書案を発表した。これまでも、世界保健機関(WHO)や民間団体が影響の推測をまとめてきたが、今回の報告は他と比べても「安心」の度合いが高い。この報告書をどう読むべきか。京都大原子炉実験所の今中哲二助教らに聞いた。(出田阿生、中山洋子)

 「国連科学委の報告書案に記された数字で計算すると、福島原発事故により、少なくとも日本全体で2050人のがんによる死亡が増えることになる。これを多いとみるか、少ないとみるか」

 京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)の今中哲二助教はこう語る。今中助教は、原発事故直後から福島県飯舘村に入って放射性物質の測定などの調査を続けてきた。

 今中助教が注目したのは日本全土でどれだけ被ばくしたかを表す「集団実効線量」の推計だ。甲状腺の集団実効線量は11万人・シーベルト(生涯の被ばく線量)、全身でみると4万1000人・シーベルトとなっている。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は「1万人・シーベルトで500人のがん死が起きる」とみている。全身の集団線量に当てはめると、がん死の増加は2050人だ。

 この数値をチェルノブイリ原発事故後の旧ソ連や欧州諸国の約六億人分のデータと比較すると、福島原発事故による被ばく量は甲状腺は約20分の1、全身が約10分の1という結果になる。

 「大したことはない」と安心したくなるが、こうした一連の数字をどう読むべきだろうか。
 「無視できる数とは言えない。当てはまった人は、事故という人為的な原因で死を迎えるのだから」(今中助教)

 健康影響を語る際、被ばくとの因果関係が明白ながんや白血病のみを取り上げがちだ。この報告案もそれを踏襲する。

 しかし、被ばくによる健康影響には、いまも不透明な部分が大きい。チェルノブイリ原発事故後には、子どもの免疫低下や心臓疾患の発生が見られた。今月初旬、ウクライナを視察してきた今中助教は「被ばくの人体への影響は多様だと実感している」と話す。

WHO報告は対照的な視点

 国連科学委の報告書案と対照的なのが、今年2月末にWHOが発表した報告書だった。

 「大半の福島県民にがんが明らかに増える可能性は低い」と結論する一方、一部の乳児は甲状腺がんや白血病などのリスクが生涯で数%から約70%増えると推計。15年後は1歳女児の甲状腺がんの発生率が浪江町で約9倍、飯舘村で約6倍になると予測した。

 WHOは前提条件を「計画的避難区域で事故後4カ月避難せず、県内産の食物だけを口にした」とした。この想定は論議を呼んだが、飯舘村では近い実態もあった。
 「想定は過大評価になるかもしれない。だが、過小評価よりも良い。過小評価の危険を最小化したかった」(WHOの公衆衛生環境担当マリア・ネイラ氏)という。

 国連科学委の報告書案でもう一点懸念されるのは、この推計の根拠とされたデータの信頼性だ。一例として、子どもの甲状腺被ばくについての数値がある。

 この数値は政府が2011年3月下旬、飯舘村や川俣町、いわき市などで、事故当時に県内に住んでいた15歳以下の子ども1080人を対象に実測し、まとめた。

 今中助教は同時期に飯舘村に入って調査していたが、空間線量を測定すると村役場の屋外で5マイクロシーベルト、室内で0.5マイクロシーベルトだった。ところが、政府の調査で子どもの首に測定器を当てて測った数値は「0.01マイクロシーベルト」などと記されていた。

 今中助教はこれほど周囲の放射線量が高い場合には、そうした微量の放射線は測定することは不可能だと指摘する。

 甲状腺に集まる放射性ヨウ素の半減期は8日。事故直後に測定しないと測れなくなる。今中助教は「真っ先に取り組むべきは、最も影響を受けやすい子どもの甲状腺被ばくなのに、検査数があまりに少なすぎる。旧ソ連でさえ、約40万人の子どもの甲状腺被ばくを調べた」と振り返る。

 健康影響に否定的とみられる報告書案だが、一方で100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでも「がんの増加について科学的根拠が不十分でも、調査を長期間継続すべきだ」としている。今中助教は「被ばくの影響が完全に解明されていない以上、この姿勢は重要」と話す。

 「国連科学委員会は厳密さを追求する組織。だが、行政には健康を守るための予防原則が求められる。科学的な厳密さより、これからどんな影響が出てくるか分からないという視点が大切だ」

<デスクメモ> 「白黒つけずにあいまいなままにしておくこと」。復興庁参事官がツイッターに書き込んだせりふだ。時間がたてば、国民はフクシマを忘れるという「解決策」が政府の本音と感じてはいたが、実際そうだったわけだ。その先にあるのは今秋からの再稼働だろう。都議選、参院選は忘却との闘いである。 (牧)

<国連科学委員会> 被ばくの程度と影響を調べるため、国連が設置した。各国の核実験で放射性物質が拡散し、被ばくへの懸念が高まっていた1955年に発足した。関係者の間には「核実験の即時停止を求める声をかわす目的だった」という指摘もある。報告書はICRPの基礎資料になる。ICRPのメンバーと重複する委員もいる。


福島事故の甲状腺集団線量「チェルノブイリの1/30」
(2013年5月27日 朝日新聞)から抜粋

 【医療・被曝(ひばく)担当=大岩ゆり】東京電力福島第一原発事故について、国連科学委員会が報告書案をまとめた。集団でみた日本国民の総被曝(ひばく)線量(集団線量)は、甲状腺がチェルノブイリ原発事故の約30分の1、全身は約10分の1と推計した。個人の被曝線量も推計し、多くが防護剤をのむ基準以下で、健康影響は「(6千人の甲状腺がんが出た)チェルノブイリとは異なる」「(がんの発生は少なく)見つけるのが難しいレベル」と結論づけた。

 報告書案は、国連科学委員会の専門家ら約85人が2年かけてまとめた。27日からウィーンで始まる科学委員会総会で議論され、9月の国連総会に提出される。

 朝日新聞が入手した報告書案によると、事故は、米スリーマイル島などの事故より「はるかに深刻」とした。ただし、チェルノブイリに比べて、放射性ヨウ素131の総放出量は3分の1未満、セシウム137は4分の1未満で、ストロンチウムやプルトニウムは「非常に微量」と評価した。

2013/10/17

鈴木真一教授、本当ですか?「子どもの甲状腺がん 他県も同じ」 

未成年の甲状腺がんに関するNHK報道と福島県立医大の鈴木真一教授の発言がまったく異なっている

NHKは、<平成18年(2006年)の統計で、甲状腺がんと診断された20歳未満の人は【全国で46人】>と報じているが、鈴木教授は、<今年7月までに【福島県で44人】の子どもにがんの症例またはその疑いが出た甲状腺検査について、「他県に比べ異常な数値は出ていないのか」と問いに、「他県も同じような割合だ」と答えた>と毎日新聞が報じている。

鈴木真一教授の発言が本当かどうか、かんたんな計算をしてみたい。
福島県の人口は、全国の約1.6%なので、全国で未成年の甲状腺がんが年間46人なら、46人の1.6%を計算すれば、福島の数値が出る。
【46人×0.016=0.736人】つまり、「他県に比べ異常な数値は出ていない」のなら、福島県では年間、甲状腺がんになる未成年者は0人か1人ということになる。

右:鈴木真一 左:山下俊一
(写真右:鈴木真一氏 左:山下俊一氏)


低線量汚染地域からの報告

26年後、【甲状腺がん、心臓疾患、 白内障、慢性疾患の増加】放射能汚染
(2012年9月にNHKで放送されたドキュメンタリー番組の書籍版)
ウクライナのコロステンの市内は、年0・5~1ミリシーベルトの放射線管理区域と年1~5ミリシーベルトの移住権利区域が半分ずつ占めている。日本でも同程度の汚染地域は広く分布しており、年0・5ミリシーベルト以上の汚染地域ならば1千万人以上が暮らしているだろう。チェルノブイリから26年後のコロステンの現状は、目をそらすことなく凝視すべきだろう。子供たちの75%以上が何らかの疾患を抱えているという「現実」はあまりにも重すぎる。

国際オリンピック委員会で、「健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ない」と発言した安倍首相や鈴木真一教授の言動によって対策が遅れ、子どもたちをますます苦境に追い詰めている

安倍首相:健康問題は今までも現在も将来もまったく問題ない

関東、東海まで子どもの体内被曝が判明

石原環境相:県立医大視察 県内甲状腺がん症例、「被ばく影響なし」全面支持 /福島
(毎日新聞 2013年09月29日 地方版)

 石原伸晃環境相は28日午前、自ら率いる自民党の派閥「近未来研究会」の国会議員8人と福島市の県立医大を視察。県内の甲状腺がんの症例が原発事故の被ばくの影響ではないと説く大学関係者の見解に特段の議論もせず、1時間ほどで学窓を後にした。

 一行は前夜、前派閥会長の山崎拓元衆院議員を講師に飯坂温泉で研修会を開き、その帰りに医大に立ち寄った。

 今年7月までに県内44人の子どもにがんの症例またはその疑いが出た甲状腺検査について鈴木真一教授が「超音波検査は性能が良く、通常は見つからない15ミリの腫瘍(しゅよう)も見つかるため」と説明。さらに「被ばくによるがんは小さな子どもに多いが思春期以降の子にも分布しているため被ばくの影響はない」と断定した。

 鬼木誠衆院議員が「他県に比べ異常な数値は出ていないのか」と問い、鈴木教授は「他県も同じような割合だ」と応じた。

 被ばくの影響は「近未来」にならないと断定できないという見方もあるが、石原環境相は教授らとの雑談で「(異論を唱える人には)説明してもわかんないから不思議だ」と「影響なし」を全面支持する見方を示した。【深津誠】


甲状腺がんの子ども 新たに6人
(2013年8月21日4時22分 NHK)から抜粋

原発事故を受けて、福島県が事故当時18歳以下だった子どもを対象に行っている甲状腺検査で、新たに6人が甲状腺がんと診断され、甲状腺がんと診断された子どもは合わせて18人となりました。

福島県の検討委員会は「現状では原発事故の影響とは判断できない」としながらも新たに専門の部会を設けて、原因などの検証を進めていくことを決めました。

原発事故で放出された放射性物質は子どもの甲状腺に蓄積してがんを引き起こすおそれがあるとされ、福島県は、事故当時18歳以下だったおよそ36万人を対象に検査を行っています。

20日開かれた福島県の検討委員会で、先月末までの検査結果が明らかにされ、これまでに21万人の検査が終わり、新たに6人が甲状腺がんと診断されたということです。

甲状腺がんと診断された子どもはこれまでの12人と合わせて18人となりました。このほか、細胞の検査で、がんの「疑い」がある子どもは、これまでより10人増えて、25人になりました。

乳児を含む子どもが甲状腺がんになる確率は通常、数十万人に1人とされ、国内では、平成18年の統計で、甲状腺がんと診断された20歳未満の人は46人でした。検討委員会は「現状では原発事故の影響とは判断できない」としながらも、この秋までに専門の部会を新たに設けて、原因などの検証を進めていくことを決めました。

——————————————

最後に、ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士の言葉を思い出したいと思います。
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です

「年間1ミリシーベルト以上の追加被ばくを受けない」ための署名

2013/10/15

関東、東海まで子どもの体内被曝が判明 【主食の米】要注意

子どもたちの体内被ばくが広がっている中で、福島県の米から基準値を超える120ベクレル/kgの放射性セシウムが検出された。一方、福島県やJA(農協)は「子どもたちが 福島の米を食べれば、安全性を全国にアピールできる」と、学校給食に福島米の導入を補助金まで使って推進している。

原発事故のあと、年間1ミリシーベルトの被ばく限度量を20ミリシーベルトに引き上げたまま2年半以上も元に戻さず子どもたちの外部被ばく量を増やし続け(呼吸などから内部被ばくも増える)更に、給食で汚染された食べ物を食べさせて、内部被ばくを増やし続けている

内部被ばく(体内被ばく)の話の前に、外部被ばくの状況を再確認しておきたい。 政府は、原発事故のあと「非常時の被ばく限度量」として設定した20ミリシーベルトを1ミリシーベルトに戻さないだけでなく、チェルノブイリ法では「移住義務エリア」となる5ミリシーベルトにすら下げていない。

福島の帰還基準、避難者と賠償額の増加を恐れて「年5ミリ」とせず

原発事故で避難した住民が自宅に戻ることができる基準を「年20ミリシーベルト以下」から「年5ミリシーベルト以下」にする案を政府が検討したが、避難者が増えることを懸念して見送っていた。

「多くの医者と話をする中でも5ミリシーベルトの上と下で感触が違う」と5ミリ案を検討。チェルノブイリ事故では、5年後に5ミリの基準で住民を移住させた。(日本では、原発事故による放射能汚染地以外は)年換算で、5.2ミリ超の地域は 放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝で白血病の労災認定をされたこともある。ところが、5ミリ案は実行されなかった。「20ミリ案は甘く、1ミリ案は 県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」 「賠償額の増加も見送りの背景にある」(2013年5月25日 朝日新聞)から要約

記事全文

その5ミリシーベルト以下のエリアでも26年後のチェルノブイリでは、75%以上の子どもたちが病気になっている。

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

(2012年9月にNHKで放送されたドキュメンタリー番組の書籍版 NHK出版)
ウクライナのコロステンの市内は、年間0・5~1ミリシーベルトの「放射線管理区域」と年1~5ミリシーベルトの「移住権利区域」が半分ずつ占めている。日本でも同程度の汚染地域は広く分布しており、年0・5ミリシーベルト以上の汚染地域ならば1千万人以上が暮らしているだろう。チェルノブイリから26年後のコロステンの現状は、目をそらすことなく凝視すべきだろう。子供たちの75%以上が何らかの疾患を抱えているという「現実」はあまりにも重すぎる。

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』


ウクライナ政府(緊急事態省)報告書
『チェルノブイリ事故から25年“Safety for the Future”』

(2011年4月20―22日、チェルノブイリ25周年国際科学会議資料)

セシウム検査で判明した子どもの体内被曝の深刻度
(週刊朝日 2013年10月4日号)

関東15市町で実施されている最新検査で、子どもたちの尿の7割からセシウムが検出されていたことがわかった。ジャーナリストの桐島瞬氏は、その被曝の深刻度を明らかにする。

入手したショッキングなデータをまず、ご紹介しよう。常総生活協同組合(茨城県守谷市)が、松戸、柏、つくば、取手など千葉、茨城の15市町に住む0歳から18歳までの子どもを対象に実施した尿検査の結果である。

「初めの10人を終えたとき、すでに9人からセシウム134か137を検出していました。予備検査を含めた最高値は1リットル当たり1.683ベクレル。参考までに調べた大人は2.5ベクレルという高い数値でした。いまも検査は継続中ですが、すでに測定を終えた85人中、約7割に相当する58人の尿から1ベクレル以下のセシウムが出ています」(常総生協の横関純一さん)

検査を始めたのは、原発事故から1年半が経過した昨年11月。検査対象全員の146人を終える来年明けごろには、セシウムが検出される子どもの数はさらに膨れ上がっているだろう。

セシウム134と137はウランの核分裂などにより生じ、自然界には存在しない物質だ。福島から近い関東の子どもたちが、原発事故で飛び散ったセシウムを体内に取り込んでいるのは間違いないだろう。副理事長の大石光伸氏が言う。

子どもたちが食べ物から常時セシウムを摂取していることが明らかになりました。例えば8歳の子どもの尿に1ベクレル含まれていると、1日に同じだけ取り込んでいると言われます。内部被曝にしきい値はないので、長い目で健康チェックをしていく必要があります

関東だけではない。放射能汚染による体内被曝が、東海や東北地方にまで及んでいることも分かった。福島を中心に200人以上の子どもの尿検査を続けている「福島老朽原発を考える会」事務局長の青木一政氏が、実例を挙げて説明する。

「昨年11月に静岡県伊東市在住の10歳の男児、一昨年9月には岩手県一関市在住の4歳の女児の尿からセシウムが出ました。この女児の場合、4.64ベクレルという高い数字が出たため食べ物を調べたところ、祖母の畑で採れた野菜を気にせずに食ベていたのです。試しに測ってみたら、干しシイタケから1キロ当たり1810ベクレルが検出されました」

食品に含まれる放射性セシウムの基準値は、1キログラムあたり一般食品100ベクレル、牛乳と乳児用食品50ベクレル、飲料水と飲用茶10ベクレルだ。ただし、基準そのものに不信感を持つ消費者も多い。検査もサンプル調査だから、東日本の食材を敬遠し、なおかつ1ベクレルでも気にする風潮につながっている。

体内にセシウムを取り込むと、どういう影響が出るのか。内部被曝に詳しい琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬氏が解説する。

セシウムは体のあらゆる臓器に蓄積し、子どもの甲状腺も例外ではありません。体内で発する放射線は細胞組織のつながりを分断し、体の機能不全を起こします。震災後、福島や関東地方の子どもたちに鼻血や下血などが見られたり甲状腺がんが増えているのも、内部被曝が原因です。怖いのは、切断された遺伝子同士が元に戻ろうとして、間違ったつながり方をしてしまう『遺伝子組み換え』で、これが集積するとがんになる可能性があります

矢ケ崎氏は、尿中に含まれるセシウム137がガンマ線だけ勘定して1ベクレルだとすれば、ベータ線も考慮すると体内に大人でおよそ240ベクレルのセシウムが存在し、それに加えてストロンチウム90もセシウムの半分程度あるとみる

体に入ったセシウムは大人約80日、子ども約40日の半減期で排出されるが、食物摂取で体内被曝し、放射線を発する状態が続くことが危険だと言う。

常総生協が昨年度、食品1788品目を調査した資料がここにある。結果を見ると、280品目からセシウムが検出されていた。米74%、きのこ63%、お茶50%、それに3割近い一般食品にもセシウムが含まれていたのだ。

※週刊朝日  2013年10月4日号


南相馬の玄米2袋から基準値超セシウム検出
(2013年10月9日 福島民友ニュース)

 県は8日、2013(平成25)年産米の全量全袋検査の結果、3年ぶりに作付けを再開した南相馬市原町区の旧太田村の農家1戸が生産した玄米2袋から、食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える同120ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。13年産米が基準値を上回ったのは初めて。基準値超の玄米は同市が隔離して処分するため、市場には流通しない。

 県によると、3日の検査でこの農家が生産した「ひとめぼれ」の玄米52袋(1袋30キロ入り)のうち、44袋がベルトコンベヤー式検査機器で設定した水準(同65ベクレル)を上回った。44袋の詳細検査を行い、2袋の玄米が基準値を超えた。基準値以下の玄米は出荷できる


給食に福島米を推進する中でセシウム基準値超え120ベクレル

南相馬市旧太田村産玄米の放射性セシウム濃度(2013年10月3日採取)
厚生労働省が2013年10月8日公表した食品中の放射性物質の検査結果データ45袋の玄米セシウム合計は、ほぼ60~80ベクレル/kg

2013年玄米のセシウム濃度グラフ:南相馬120?60ベクレル


国体などで福島県産米使い支援
(2013年10月3日 NHK)から抜粋

原発事故による風評被害にあっている福島県の農業を支援しようと、東京都は国民体育大会とそれに続く全国障害者スポーツ大会に参加する選手団やスタッフに配る弁当に福島産の米を使う取り組みを始めています。

国体などで福島産の米を使い支援


ユーリ・バンダジェフスキー博士(元ゴメリ医科大学学長)の警告
子どもの体重1kgあたり、セシウム137が10ベクレル(体重5kgの子どもなら50ベクレル)蓄積するだけで遺伝子に影響を与え、不整脈を引き起こす可能性がある(不整脈は、心臓病につながる)と警告していまます。
体重5kgの幼児が、セシウム137を毎日0.32ベクレル摂取し続けると体内10ベクレル/kgになります

バンダジェフスキー研究 セシウム濃度と不整脈

子どもの体重1kgあたり0~5ベクレル セシウム137が蓄積している子どもでは、80%の子どもたちは正常な心電図です(20%は正常ではない)。しかし、子どもの体重1kgあたり12~26ベクレル セシウム137が蓄積している子どもたちでは、正常な子どもは40%になります。60%の子どもたちが不整脈を引き起こしています。

国際放射線防護委員会(ICRP)は一度に1000ベクレル摂取した場合、毎日1ベクレル摂取した場合、毎日10ベクレル摂取した場合の体内セシウム137蓄積量のグラフを公表しています。(ICRP Publication 111)

毎日1ベクレル摂取で、2年後には体内蓄積200ベクレルに

毎日1ベクレル摂取しただけで、700日後(約2年後)には体内蓄積量は200ベクレル近くにもなります。毎日10ベクレル摂取していると、700日後(約2年後)には体内蓄積量は1400ベクレルを超えます。


◆チェルノブイリでも日本でも心臓病が急増
チェルノブイリ原発事故の後、放射能汚染地の住民に心臓病が急増していきました。原発事故から22年が過ぎた2008年、ベラルーシで亡くなった人の半数以上(52.7%)が心臓病でした。何故、心臓病が激増したのか―私たちは学ぶ必要があります。

2008年のベラルーシの死因 52.7%心臓病

チェルノブイリ原発事故後のベラルーシで、バンダジェフスキー博士が病気で亡くなった人を解剖して分かったことは、心臓病の多くは、放射性セシウムが心筋(心臓の壁を構成する筋肉)に蓄積して起こったということです。

日本では、心疾患死亡に関する人口統計において、福島県の心疾患死亡率が2011年度の全国一位になっています。(秋田県が公開したデータ)


◆2011年度 心疾患死亡率は、福島が全国一位
福島は、2010年度の8位から2011年度(2011年4月~2012年3月)は1位になっています。また、福島に近いほど心疾患死亡率が増加しています。

福島と周辺県の心疾患死亡率が増加

     2010年度  2011年度  増加率   
福島   197.6   226.0   14.4%  
宮城   141.3   160.0   13.2%  
茨城   150.1   165.9   10.5%  
岩手   202.6   219.3    8.2%  

全国平均 149.7  154.4    3.1%  

心疾患死亡率 2011年と2012年度の比較


体内にセシウム 心臓疾患まねく チェルノブイリ事故で警鐘
(2013年7月29日 東京新聞 朝刊)

チェルノブイリ原発事故最大の被災国ベラルーシで、死亡した人を解剖して臓器ごとの放射性セシウムを測定した医師がいる。ウクライナ在住の病理解剖学者ユーリー・バンダジェフスキー氏(56)だ。低線量内部被ばくに警鐘を鳴らす研究は当局に危険視され、投獄される憂き目も見た。来日した「不屈の学者」に聞いた。

東京新聞:体内にセシウム 心疾患招く バンダジェフスキー


福島米の安全性のアピールに貢献するのは
国体選手と障害者、地元の学童たち

(2013年10月3日 みんな楽しくHAPPYがいい)から抜粋

「自分で食べないものを」といわれて福島市のJA新ふくしま組合長、吾妻雄二(66)は考えた。自分たちが食べるしかない。とくに、学校給食に福島市産米を使うことだ。子どもたちが福島の米を食べれば、安全性を全国にアピールできる――。

プロメテウスの罠 給食に福島米

福島 給食で地元米の使用再開
福島県内の学校給食 「県産食材」震災後も使用 
さらに新年度、県産食材使用市町村に食材購入費を補助
県は新年度、県産食材を給食に使う市町村に食材購入費を補助する。


ジョン・W・ゴフマン著『人間と放射線―医療用X線から原発まで―』
京都大学原子炉実験所の今中哲二さんや小出裕章さんが翻訳したジョン・W・ゴフマン博士の名著 『人間と放射線―医療用X線から原発まで―』によれば、55歳以上と子どもを比べると(同じ放射線量を浴びたときに)10歳の児童は200倍以上、0歳の乳児は300倍以上もガン死率が高くなります

ゴフマンのグラフ(520サイズ)

例えば、児童が5~10ベクレル/kg汚染された給食を食べているというのは、55歳以上の大人が、その200倍の1000~2000ベクレル以上に汚染されたものを食べていることになります。政府の内部被ばくを軽視する姿勢は、原爆被爆者の内部被ばくを認めず、被爆者を苦しめてきた時代からずっと変わっていません。


日本では、チェルノブイリの経験がまったく生かされていない
【ウクライナで5万人の子どもを診察したエフゲーニャ・ステパノワ博士】

日本人へのアドバイス 病気予防対策の一番目
放射能に汚染されていない食べ物をとること

加えて、充分なビタミンをとること。体力増進に努めること。
汚染地域を離れて保養施設などで休むこと(最低でも4週間)

 
福島県と小中学校は、まず、福島の米や野菜の給食での使用を取りやめ、ゴフマン博士やバンダジェフスキー博士の研究、ウクライナ政府報告書「チェルノブイリの被害の全貌」などを時間をかけて慎重に検討した上で、どのような食材を給食に使用するのかを決めてほしい。ただでさえ、日常的に外部被ばくを受けている子どもたちに、これ以上内部被ばくを加えるべきではない。国が定めた放射能汚染基準(100ベクレル/kg以下)で食品を流通させるのなら、汚染されたものは、まず大人が食べるべきだ。しかし、日常的に被ばくしている汚染地の方々は、これ以上被ばくしない方がいいと思う。JAと農家の方は、国策で原発を進めてきた政府と東電に損害賠償を求めてほしい。そして、その要求を皆で支持したい。

そして、未だに年間被ばく量を20ミリシーベルトから1ミリシーベルトに戻さない政府に、目先の経済より「放射能から子どもを守ることを最優先させる」ように国民運動を起こしたい。

2013/10/14

【秘密保護法案】 国民的な議論を尽くせ

◆福島の原発事故では、メルトダウン(炉心溶融)と緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報公開が遅れるなど秘密にされた事実は少なくない。原発の安全性をめぐる幾多の訴訟でも、重要な資料の隠ぺいや破棄が次々に露呈してきた。「原発がテロの標的になるのを防ぐ」との名目で、多くの情報が特定秘密に指定される恐れは大きい。 

◆80年代中頃、中曽根政権の下で今回の法案と類似した「国家秘密法」の制定が図られようとしたが、多くの国民の反対で実現しなかった。

秘密保護法案:国民的な議論を尽くせ

【秘密保護法案】 国民的な議論を尽くせ 川副正敏
(2013年10月13日 西日本新聞 提論―明日へ)

政府が今臨時国会に「特定秘密の保護に関する法律案」(特定秘密保護法案)を提出し、成立を図ろうとしている。しかし、この法案は情報公開の原則に背を向け、民主主義の根幹を揺るがす深刻な懸念がある。

法案では、防衛、外交、外国の利益を図る目的による安全脅威活動及びテロ活動防止に関する広範囲な事項の情報について、その漏えいがわが国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあるものを原則5年間「特定秘密」に指定し、これを漏えいした公務員などを10年以下の拘禁刑に処するとしている。

しかし、特定秘密を指定するのは行政機関の長(大臣など)自身である。そこでは「安全保障」の名による、時の政府当局者の利害や保身の意図が入り込んだ恣意的な指定や過度の拡張的指定、無用な指定期間の更新など、乱用を防ぐ手だてはない。

現に、1972年の沖縄返還では、米国の負担すべき軍用地復元補償費を日本政府が肩代わりし、事実上、核兵器の持ち込みを容認する密約が存在したことが今日では明らかとなっている。このことはその後の沖縄の米軍基地問題をめぐり、政府に対する不信の根源の一つであり続けた。

今回の福島の原発事故では、メルトダウン(炉心溶融)と緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報公開が遅れるなど秘密にされた事実は少なくない。

原子力発電所の安全性をめぐる幾多の訴訟でも、重要な資料の隠ぺいや破棄が次々に露呈してきた。「原発がテロの標的になるのを防ぐ」との名目で、多くの情報が特定秘密に指定される恐れは大きい。

                     ◆

処罰の対象となる行為の範囲は意図的な漏えいだけでなく、過失も含まれる。外部の人間が情報の保有者に対し、脅迫、窃盗のほか、「その他管理を害する行為」により取得すること、さらにはその未遂、共謀、教唆または扇動など広範な行為が取り込まれている。

これではジャーナリストの取材活動さえも重罰に処せられる可能性があり、著しい萎縮効果を生む。これにより、報道の自由が事実上強く制約され、国民の知る権利が侵害されることを危惧する。与党は、「知る権利」を明記する方向で調整し、批判をかわそうとしているようだが、歯止めになるとは思われず、むしろ問題が浮き彫りとなった。

80年代中頃、中曽根政権の下で今回の法案と類似した「国家秘密法」の制定が図られようとしたが、多くの国民の反対で実現しなかった。今、中国や韓国との領土をめぐる確執や北朝鮮情勢などを理由に国民の耳目をふさごうとするのは本末転倒だ。法案の必要性の理由として挙げられている過去の秘密漏えい事件は、いずれも自衛隊法や国家公務員法など既存の法律で対処できたものばかりであり、新たな立法を必要とする事実は見当たらない。

                    ◆

憲法9条改正や集団的自衛権容認論が高まる時だからこそ、冷静な議論をするためにも、これらに関する情報が広く国民の間で共有されなければならない。

私は福岡市の情報公開審査会で、市民からの情報公開請求を行政側が拒んだ案件の当否を検討してきた。為政者の政策決定と遂行において、情報の積極的な公開は、説明責任を尽くす源であり、市民との信頼関係を築き適正な世論を形成する基盤だと痛感している。

国の外交・安全保障政策は、地方自治と次元を異にする面はあるものの、国民主権の原理に照らすと、情報公開の重要性に変わりはなく、むしろ国民生活全体に重大な影響を及ぼす点で、その意義は一層大きい。

秘密情報を設ける場合に何よりも必要なことは、それが「国民の知る権利」に対するあくまでも例外であることを前提とし、為政者にとって不都合な事実が隠されることのないよう、司法手続きを含めた第三者機関による厳格なチェックシステムを確立することだ。

法案の要綱に対する国民の意見聴取期間はわずか2週間だった。日本の民主主義の在り方を大きく左右しかねない重大な法案成立を拙速に進めてはならない。あらためて原点に返り、国民的な議論を尽くして、慎重な審議を求めたい。

川副正敏 弁護士 1949年、福岡県生まれ
06年4月~07年3月 日本弁護士連合会連副会長
13年3月から法務省法制審議会委員


◆民意も新聞社説も大半が【秘密保護法案に反対】している中で
「自由民主党」は、自由と民主主義を破壊する法案を通そうとしている
【資料 2013年 新聞社説】 
秘密保護法 「報道配慮」 の見当違い 信濃毎日新聞 社説 9/30
秘密保護法原案 国民の目をふさぐ悪法だ 琉球新報 社説 9/28
【秘密保護法案】 危険な本質は変わらない 高知新聞 社説 9/26
秘密保護法案 危険性に変わりはない 北海道新聞 社説 9/24
秘密保護法案 現行法で対処可能だ 琉球新報 社説 9/23
秘密保護法案 取り繕いでは済まされぬ 西日本新聞 社説 9/23
秘密保護法 かつて来た道たどる懸念 信濃毎日新聞 社説 9/22
知る権利 保護を最優先に議論を 神奈川新聞 社説 9/22
秘密保護法案  「知る権利」 担保できぬ 京都新聞 社説 9/20
秘密保護法案―知る権利はつけ足しか 朝日新聞 社説 9/19
秘密保護法案/「知る権利」 を保障できるか 福島民友 社説 9/18
特定秘密保護法案 「知る権利」 守れるか疑問だ 宮崎日日新聞 社説 9/17
秘密保護法案 「知る権利」 が脅かされる 新潟日報 社説 9/17
秘密保護法案 軍事国家への入り口だ 東京新聞 社説 9/13
危惧は払拭されていない/秘密保護法案 東奥日報 社説 9/11
疑問点があまりに多い秘密保護法案 日経新聞 社説 9/7
秘密保護法案/人権害しては本末転倒だ 神戸新聞 社説 9/7
秘密保護法案 社会ゆがめる情報統制 岩手日報 論説 9/7
「秘密保護法案」/「知る権利」 に重大な懸念 山陰中央新報 論説 9/6
秘密保護法案 報道の自由への配慮が必要だ 読売新聞 社説 9/6
[秘密保護法案] 「知る権利」 侵害するな 沖縄タイムス 社説 9/6
秘密保護法案 情報管理の行き過ぎを懸念 熊本日日新聞 社説 9/6
秘密保護法案 法制化は見送るべきだ 京都新聞 社説 9/6
特定秘密保護法案 知る権利に重大な影響も 岐阜新聞 社説 9/6
秘密保護法案 知る権利に重大な懸念 茨城新聞 論説 9/6
特定秘密保護法/知る権利を保障できるのか 河北新報 社説 9/6
秘密保護法案 国民主権と民主制の否定だ 琉球新報 社説 9/5
秘密保護法案 拭えぬ 「知る権利」 の侵害 西日本新聞 社説 9/5
秘密保護法案 国民の知る権利守れるか 徳島新聞 社説 9/5
秘密保護法 危険な法案は断念せよ 信濃毎日新聞 社説 9/5
秘密保護法案 懸念材料が多すぎる 毎日新聞 社説 9/4
「秘密保護法案」 解釈で統制強化の恐れも 佐賀新聞 論説 9/3
特定秘密保護法 漏えい防ぐ効果は薄い 神奈川新聞 社説 8/31
[秘密保護法案] 国会での慎重な議論を 南日本新聞 社説 8/29
特定秘密保護法案 政府は国会提出方針の撤回を 愛媛新聞 社説 8/29
秘密保護法案 「知る権利」 は大丈夫か 中国新聞 社説 8/29
秘密保護法案 国民不在の法制化やめよ 琉球新報 社説 8/27
秘密保護法案 情報の国家統制は危うい 山陽新聞 社説 8/27
秘密保護法案 脅かされる 「知る権利」 北海道新聞 社説 8/26
秘密保全法案―権利の侵害は許されぬ 朝日新聞 社説 8/25
【秘密保全法案】 国民の権利に大きな懸念 高知新聞 社説 8/24
秘密保全法案 情報の国家統制は危険 京都新聞 社説 8/21
秘密保全法 社会を息苦しくする 信濃毎日新聞 社説 8/20
秘密保全法制 「知る権利」 侵害は許されない 愛媛新聞 社説 5/2
日常生活も縛られる危険/秘密保全法案 東奥日報 社説 4/19

*このサイトで、社説を読むことができます。

◆◆秘密保護法案 意見公募で8割反対
(2013年9月27日 東京新聞朝刊)

東京新聞:意見公募で8割反対

 政府は26日、自民党の特定秘密保護法案に関するプロジェクトチーム(PT)の会合で、機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ同法案の概要に対するパブリックコメント(意見公募)の実施結果を明らかにした。今月3日から17日の間に約9万件が寄せられ、反対が8割近くを占めた。

 意見公募は、政府が法案を閣議決定する前などに、国民の意見を聞く制度。意見が数件しか寄せられないケースも多く、9万件は異例だ。今回の募集期間が、一般的である30日の半分しかない15日だったことを考えれば、国民が強く懸念している実態を示したといえる。

 反対意見は「原発問題やTPP(環太平洋連携協定)交渉など重要な情報を知ることができなくなる」「取材行為を萎縮させる」など、国民の知る権利や報道の自由を懸念する内容がほとんどだった。

 「スパイを取り締まれる状況にしてほしい」など、賛成意見は約1割にとどまった。

 反対意見が圧倒的に多かったことについて、法案成立を推進するPT座長の町村信孝元外相は「組織的にコメントする人々がいたと推測しないと理解できない」と記者団に述べた。

全文

反対意見が圧倒的に多かったことについて、法案成立を推進するPT座長の町村信孝元外相は「組織的にコメントする人々がいたと推測しないと理解できない」と記者団に述べた≫・・・民意を理解できない人が法案推進のトップに座っている

「自由民主党」が強くなるほどに、自由と民主主義が危うくなっていく
                      ↓
特定秘密保護法案、臨時国会成立目指す 自民・石破幹事長
(2013.10.13 23:20 産経ニュース)

 自民党の石破茂幹事長は13日夜、BS?TBSの番組で、国家機密を漏らした国家公務員への罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案について「来年の通常国会に送る必然性があるとは思わない」と述べ、15日召集の臨時国会で国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法案とセットで成立を目指す考えを示した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131013/plc13101323220005-n1.htm 

 ただ、規定は努力目標にすぎず、どんな表現が盛り込まれても「知る権利」が制限される懸念は消えない。


【秘密保護法案】真実究明に大きな懸念
(2013年10月14日 福島民報)

 第66回新聞週間があす15日から始まる。報道の使命と責任をあらためて自省、自戒するとともに、新聞を一層身近にするのが目的だ。努力をさらに重ねたい。
 「いつの日も 真実に 向き合う記事がある」を今週間の代表標語に掲げた。日々の出来事を早く正しく伝えるのはもちろん、背後に横たわる問題や隠された事実を明らかにするのは新聞に課せられた大きな役割といえる。

 特定秘密保護法案が、あす召集の臨時国会中に提出される見通しだ。真実の究明を妨げかねない条項が盛り込まれる。疑問や批判に応え、議論をもっと尽くすべきだ。

 法案原案は、政府が防衛や外交などの分野で「漏えいすると安全保障に著しく支障を与える恐れがある」情報を「特定秘密」に指定し、公務員の漏えいには最高10年の懲役刑を科す?としている。

 秘密を取得したり、漏えいを唆したりした者も処罰対象となる。新聞・放送・雑誌などの関係者をはじめ、民間業者、行政を監視・調査しようとする市民団体までが広く罪に問われかねない。

 特定秘密の指定は閣僚ら行政機関の長に委ねられる。テロ防止などに関する事項も対象に想定されている。管理者の都合に合わせて取り扱われる可能性はないのか。指定の期間を限る予定ながら、延長できる。重大な情報が国民の目に触れないまま、闇から闇へ埋もれる心配も出よう。

 日本新聞協会は「取材や報道の自由が制約されかねず、国民の知る権利が損なわれる恐れがある」と強い危惧を表明する意見書を2日、政府に提出した。野党や日弁連や市民団体からも反対や懸念の声が上がっている。

 政府は、知る権利や取材の自由への配慮を規定した修正案を11日に示した。ただ、あくまで「努力規定」にとどめたい姿勢だ。法案を所管する森雅子少子化担当相(参院本県選挙区)は、秘密を指定する第三者機関の設置などを検討する考えを明らかにしたが、法案への規定導入は「確定的ではない」という。

 東京電力福島第一原発事故の取材では、放射線被ばくの危険に加え、保安対策などを理由に制限が加えられてきた。安倍晋三首相が先日、第一原発を視察した際には「特殊な場所のため、大勢での取材が不可能」を理由に県内報道機関に公開しなかった。

 秘密保護法で制限に拍車が掛かることはないのか。安倍首相が「制御されている」とした汚染水の実態はどうだろう。県民が知るべき真実はまだ山ほどある。(鈴木 久)

2013/10/12

給食に福島米を推進する中で、セシウム基準値超え120ベクレル

福島のコメ、セシウム基準値超え 今年初、120ベクレル
(2013年10月8日 19:39 共同通信)から抜粋

 福島県は8日、南相馬市の農家が収穫したコメの一部から、食品基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える120ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。福島県産米の基準値超えは、今年初めて。

 栽培していた水田は、東京電力福島第1原発から20~30キロ圏。3日に収穫した52袋(1袋30キロ)の検査で、2袋が120ベクレルだった。


今年度産米で初の基準超え
(南相馬市旧太田村産120ベクレル/kg)

(2013.10.10 内部被ばくを考える市民研究会)から抜粋

NHK:10月8日今年度産米で初の基準超え

今年度産米で初の基準超え(南相馬市旧太田村産120ベクレル/kg)
(2013年10月8日19時53分NHKニュース 福島県のニュース)から抜粋

県産のコメの放射性物質の検査を行う「全袋検査」で、南相馬市の一部の農家が収穫したコメから、国の基準を超える放射性物質が検出されました。「全袋検査」で今月3日、基準を超えるコメ袋が44袋みつかったため、県が精密検査をしたところ、このうちの2袋から、国の基準を20ベクレル上回る、1キログラムあたり120ベクレルの放射性セシウムが検出されたということです。

南相馬市旧太田村産玄米の放射性セシウム濃度(2013年10月3日採取)
厚生労働省が2013年10月8日公表した食品中の放射性物質の検査結果データ45袋の玄米セシウム合計は、ほぼ60~80ベクレル/kg


国体などで福島県産米使い支援
(2013年10月3日 NHK)から抜粋

国体などで福島産の米を使い支援

原発事故による風評被害にあっている福島県の農業を支援しようと、東京都は国民体育大会とそれに続く全国障害者スポーツ大会に参加する選手団やスタッフに配る弁当に福島産の米を使う取り組みを始めています。

東京で先月28日に開幕した国体と今月12日に開幕する全国障害者スポーツ大会には、あわせて2万8000人の選手や役員が参加します。

また国体の競技会場がある25の市区町村も都の要請を受けて選手団などに配る弁当に福島産の米を使っています。

これらのコメは、すべて放射性物質を調べる検査によって安全性が確認されているということです。

東京都スポーツ振興局の神田明課長補佐は「東北の被災地ではまだ風評被害が続いていると聞いているので、東京都としてさまざまな形で支援していきたい」と話しています。


放射性セシウム「20ベクレル未満」を福島市の小中学校給食に使用再開
福島市産米 給食使用きょう再開 市、安全確保へ5回検査
(2013年1月8日 河北新報)

 福島市は7日、福島第1原発事故で中止していた小中学校給食への市内産米使用を3学期初日の8日に再開すると発表した。放射性セシウムが1キログラム当たり20ベクレル未満という独自基準を設け、全量と抽出を合わせて5度の検査で安全を確保する。

 国の基準は1キログラム当たり100ベクレル以下であれば食品として流通可能だが、地元食材に対する保護者の不安に配慮する。県の全袋検査で25ベクレル未満だった市内産のコシヒカリ玄米を調達し、精米工場で2回、学校給食会と給食センターで各1回の検査を行い、精米前、精米後とも市などの検査機器で検出下限値の20ベクレル未満のコメだけを使う。

 市は原発事故が起きるまで市内産のコシヒカリを週3?4回の米飯給食に用いてきたが、震災で保管庫が被災し確保が困難になったのを機に、福島県会津産に切り替えた。

 2011年産は使用再開を見送ったが、12年産は県全体の全袋検査に加え、検査機器導入も進んだことから安全を保てると判断した。市教委の野地正栄教育部長は「国よりもはるかに厳しい基準と検査で、日本一安全な学校給食を提供する」と話した。

 市教委によると、年間に給食で使うコメは約250トンで、震災前は使用率40.4%だった市内産食材の8割弱を占めた。県内13市では、いわき、相馬、南相馬、伊達の4市が市外産米を利用している。


ユーリ・バンダジェフスキー博士(元ゴメリ医科大学学長)の警告
子どもの体重1kgあたり、セシウム137が10ベクレル(体重5kgの子どもなら50ベクレル)蓄積するだけで遺伝子に影響を与え、不整脈を引き起こす可能性がある(不整脈は、心臓病につながる)と警告していまます。
体重5kgの幼児が、セシウム137を毎日0.32ベクレル摂取し続けると体内10ベクレル/kgになります

バンダジェフスキー研究 セシウム濃度と不整脈

子どもの体重1kgあたり0~5ベクレル セシウム137が蓄積している子どもでは、80%の子どもたちは正常な心電図です。しかし、子どもの体重1kgあたり12~26ベクレル セシウム137が蓄積している子どもたちでは、正常な子どもは40%になります。60%の子どもたちが不整脈を引き起こしています。

この割合は、セシウム137の体内蓄積量が大きくなるほど、深刻な影響を与えていることをデータは示しています。子どもの体重1kgあたり74~100ベクレル セシウム137が蓄積すると、正常な心電図の子どもは12%に激減します。

国際放射線防護委員会(ICRP)は一度に1000ベクレル摂取した場合、毎日1ベクレル摂取した場合、毎日10ベクレル摂取した場合の体内セシウム137蓄積量のグラフを公表しています。(ICRP Publication 111)

毎日1ベクレル摂取で、2年後には体内蓄積200ベクレルに

毎日1ベクレル摂取しただけで、700日後(約2年後)には体内蓄積量は200ベクレル近くにもなります。毎日10ベクレル摂取していると、700日後(約2年後)には体内蓄積量は1400ベクレルを超えます。


◆心臓病が急増
今、全国で心臓病が増加しています。私たちは、チェルノブイリの経験から学ぶことがたくさんあります。チェルノブイリ原発事故後、放射能汚染地の住民に心臓病が激増していきました。原発事故から22年が過ぎた2008年、ベラルーシで亡くなった人の半数以上(52.7%)が心臓病でした。何故、心臓病が激増したのか――私たちは学ぶ必要があります。

2008年のベラルーシの死因 52.7%心臓病

チェルノブイリ原発事故後のベラルーシで、バンダジェフスキー博士が病気で亡くなった人を解剖して分かったことは、心臓病の多くは、放射性セシウムが心筋(心臓の壁を構成する筋肉)に蓄積して起こったということです。

2012年12月26日の東京新聞によると、茨城県取手市(放射能汚染地=ホットスポット)の小中学生に心臓病が急増しています。一次検診を受けた小中学生1655人のうち73人が要精密検査と診断され、11年度の28人から2.6倍になっています。中学生だけで見ると、17人→ 55人と3倍強に増えています。

取手市 心臓病の増加

心臓に何らかの既往症が認められる児童・生徒も10年度9人から11年度21人、12年度24人と推移。突然死の危険性が指摘される「QT延長症候群」とその疑いのある診断結果が、10年度の1人、11年度の2人から8人へと急増しています。

また、心疾患死亡に関する人口統計において、福島県の心疾患死亡率が2011年度の全国一位になっています。(秋田県が公開したデータ)

◆2011年度 心疾患死亡率は、福島が全国一位
福島は、2010年度の8位から2011年度(2011年4月~2012年3月)は1位に、岩手が6位から4位になっています。

福島と周辺県の心疾患死亡率が増加

     2010年度  2011年度  増加率   
福島   197.6   226.0   14.4%  
宮城   141.3   160.0   13.2%  
茨城   150.1   165.9   10.5%  
岩手   202.6   219.3    8.2%  

全国平均 149.7  154.4    3.1%  

心疾患死亡率 2011年と2012年度の比較


福島米の安全性のアピールに貢献するのは
国体選手と障害者、地元の学童たち

(2013年10月3日 みんな楽しくHAPPYがいい)から抜粋

「自分で食べないものを」といわれて福島市のJA新ふくしま組合長、吾妻雄二(66)は考えた。自分たちが食べるしかない。とくに、学校給食に福島市産米を使うことだ。子どもたちが福島の米を食べれば、安全性を全国にアピールできる――。

プロメテウスの罠 給食に福島米

福島 給食で地元米の使用再開
福島県内の学校給食 「県産食材」震災後も使用 
さらに新年度、県産食材使用市町村に食材購入費を補助
県は新年度、県産食材を給食に使う市町村に食材購入費を補助する。


ジョン・W・ゴフマン著『人間と放射線―医療用X線から原発まで―』
京都大学原子炉実験所の今中哲二さんや小出裕章さんが翻訳したジョン・W・ゴフマン博士の名著 『人間と放射線―医療用X線から原発まで―』について、小出さんは講演などで「放射線被ばくに関して最も信頼できる本」として、よく引用されていますが、ゴフマン博士の【年齢別、がん死率】の研究によれば、55歳以上と子どもを比べると(同じ放射線量を浴びたときに)10歳の児童は200倍以上、0歳の乳児は300倍以上もガン死率が高くなります。

ゴフマンのグラフ(520サイズ)


日本では、チェルノブイリの経験がまったく生かされていない
【ウクライナで5万人の子どもを診察したエフゲーニャ・ステパノワ博士】
日本人へのアドバイス 病気予防対策の一番目
放射能に汚染されていない食べ物をとること

加えて、充分なビタミンをとること。体力増進に努めること。
汚染地域を離れて保養施設などで休むこと(最低でも4週間)

・・・・・・

児童が10~20ベクレル/kg汚染された給食を食べているというのは、55歳以上の大人が、その200倍の2000~4000ベクレル以上に汚染されたものを食べているのと同じである
 
福島県と小中学校は、まず、福島米の給食での使用を取りやめ、ゴフマン博士やバンダジェフスキー博士の研究、チェルノブイリの被害の全貌を時間をかけて慎重に検討した上で、どのような食材を給食に使用するかを決めてほしい。JAと農家の方は、国策で原発を進めてきた政府と東電に補償を求めてほしい。

そして、未だに年間被ばく量を20ミリシーベルトから1ミリシーベルトに戻さない政府に目先の経済より「放射能から子どもを守ることを最優先させる」ように国民運動を起こす必要がある。

宮城県産米で基準値超え 福島以外で初、流通せず
(2013.1.10 産経ニュース)

宮城県は10日、同県栗原市の旧沢辺村で収穫された自家消費用のコメから食品の新基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える186?208ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。厚生労働省によると、福島県以外でコメが新基準値を超えたのは初めて。

流通はしていない。宮城県は栗原市に旧沢辺村産米の出荷自粛を要請した。

検出限界値 福島県庁食堂『1ベクレル』 学校給食『10ベクレル』

2013/10/10

『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』 解説:崎山比早子さん

一人でも多くの人に読んでほしい本

『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店)

調査報告 チェルノブイリ被害の全貌

『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』刊行記念 
アレクセイ・ヤブロコフ博士講演会 2013年5月18日

(書き起こし みんな楽しくHappy がいい)から抜粋

解説:崎山比早子さん(元放射線医学総合研究所主任研究官、医学博士)

福島原発事故から2年が過ぎました。事故が起きた当時、毎日テレビを見て、原子炉の破壊状況を見ていた時に、2年後にこのような生活があるなどとは、その時は想像もできませんでした。事故現場で被ばくをしながら懸命に働いていらっしゃる労働者のみなさんのおかげで、幸いにして私たちの今日があるのだと思います。

しかし今、福島から離れた都会、あるいは福島県の中ですら 事故当時のあの衝撃は徐々に薄れてきて、放射線に対する注意を忘れてきていると思います。この時期に報告書が刊行された意味は大きいのではないかと思います。

この報告書には、いま日本において沢山の方が放射線のリスクを考え、これから自分たちの生活をどうするか、判断する基礎になる情報があります。特に注目されるのは、これまで国際原子力機関とか、国際放射線防護委員会、ICRPですね。WHO等の国際機関で否定され続けてきた放射線による非がん性疾患の発症を豊富な資料に基づいて紹介している事です。

これまで西側でほとんど読まれる事が無かったロシア、ベラルーシ、ウクライナ国内で発表されてきた論文に加えて、ドイツ、スウエーデン、トルコなどチェルノブイリ事故によって放射能汚染が起こった国々からの報告も入っています

チェルノブイリ原発事故によるヨーロッパの汚染地図

また放射線の人体影響だけではなく、チェルノブイリ地方における野菜や果物などの汚染の程度。汚染食物を取り込んでしまった場合の対処の仕方など、実生活に役立つ情報。それから環境汚染による野生の動植物への影響も網羅しています。

そういう意味でこれは大変貴重で、私たちの実生活に役立てたい報告書です。

福島事故以来、日本では低線量被ばくのリスクに関して、これまで決められていた公衆の年間被ばく限度制御1ミリシーベルトが20ミリシーベルトに見逃されてしまいました。事故があったからといって、人の放射線に対する感受性が20分の1になったわけではありません。

1ミリシーベルトという限度線量自体安全量ではありません。それは理論的にも、基礎実験でも、それから広島・長崎原爆被爆者をはじめとする疫学調査でも、放射線に安全量は無いということは明らかに証明されているからです。

1ミリシーベルトと決めたのは、原発を運転し電気を売るためのコストとリスクをはかりにかけて、「これ以下に限度線量を下げるともう採算が取れなくなる」という事情からです。その事は原子力産業の影響下にあると言われているICRPの委員長であるゴンザレスさんも、昨年福島のシンポジウムでそんなふうにおっしゃっていた事です。

1ミリシーベルト自体が安全量ではなく、経済的政治的な要因で決まっているのに、日本の放射線専門家が「100ミリシーベルトまではリスクがあるという証拠は無い」といかにも科学的であるかのように主張しているのはおかしなことです。

しかも見る気にさえなれば100ミリシーベルト以下でも、統計的に有意に白血病や脳腫瘍などの癌が増えるという論文はあるんです。放射線リスクにしきい値が無いという事は、水爆の父と言われたアンドレイ・サハロフが1958年に発表した本のタイトルにすでに書いてあります

自然放射線科学というのは、新しい事実が発見されるとその発見をベースにして前にどんどん進んで行くというのが普通の姿です。しかし放射線のリスクに関しては、いくら科学が進んでも、それが取り入れられず、分かっていることも分かっていない事にされ、何時まで経っても同じ議論を蒸し返しているという事があります。

これは明らかに問題が科学からずれて、経済的政治的な領域に入っているのに、相変わらず科学であるかのような装いのもとに論争しているからだと思います。

放射線による非がん性の疾患が無い事にされ、チェルノブイリ事故による脳神経系の疾患に対しては「放射線恐怖症」という診断名が発明されたのも、同じような事情によると思います。

放射線の障害は基本的に放射線が体内を透過した時にできる反応性の高いフリーラジカルを通して生じます。がんの原因になるのも、多くがこのフリーラジカルがDNAを傷つけるからです。

このフリーラジカルがどのように細胞の中のいろいろな分子を傷つけて、報告書に出てくるようなあらゆる病気を引き起こし、老化を促進するのか。これから研究が必要です。

しかし病気に対して最も効果的なのは予防です。予防は被ばくをしない事です。そのために政府は住民を汚染地域から避難させる義務がありますし、これ以上汚染が広がらないように、国家的なプロジェクトとして、一日も早く事故現場を安定させることが急務です。

政府をそのように動かしていくのは市民の力です。その力のベースになるのは、科学的に正確な知識です。そのような意味で、今日ヤブロコフ博士のお話を伺う事が出来るのは、大変有力ですし、幸運だと思います。

よろしくお願いいたします、どうもありがとうございました。

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岩波書店 『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』(内容の一部)

アマゾン 『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』

書評から一部抜粋

チェルノブイリの大惨事に関する、金字塔ともいうべき決定版, 2013/5/15

 3・11いらい、旧ソ連邦崩壊の前夜、ウクライナ共和国チェルノブイリで起こった原発事故(1986年4月26日)にたいする関心が高まっている。チェルノブイリ原発事故の実態を知らずして、フクシマ原発事故の帰趨をおしはかることはできないからである。

 チェルノブイリの大惨事(catastrophe)が人びとと環境にいかなる影響を及ぼしたか、そして事故いらい四半世紀がたつ今、いかなる影響を及ぼしつつあるか。それを知るために逸することのできない、最新の、金字塔ともいうべき決定版が本書である。

 本書の特徴を三つほど指摘してみたい。

 第一に、本書の扱う主題がきわめて包括的であること。

 本書の内容は、第1部「チェルノブイリの汚染(概観)」にはじまり、第2部「チェルノブイリ事故の人びとの健康への影響」で、罹病率老化の加速がん及び非がん疾患死亡率などを論じ、第3部「環境への影響」で、大気、水、土壌の汚染、植物相・動物相への悪影響、ウィルスなどの微生物への悪影響を詳述し、第4部「チェルノブイリ後の放射線防護」において具体的な提言(食物にふくまれる放射線核種の低減、ペクチン剤による体外排出、放射線防護の新しい原則の提示)に及んでいる。その記述の詳細にして包括的なことは他に類を見ない。

 第二に、本書は「メタ分析」とよぶ戦略的方法によって書かれていること。

 これまでにもチェルノブイリの大惨事についての報告、著書、論文はあったが、本書を「決定版」とするのは、従来、欧米や日本の研究者、一般読者には容易に近づくことのできなかった数千点におよぶ厖大な、ロシア語をはじめとするスラブ系言語で書かれた文献を収集・総覧して、それらの基礎のうえに築かれた「一大伽藍」(cathedral, カテドラル)だからである。

 本書の「方法論的アプローチ」の特徴を著者らは「メタ分析」(meta-analysis, or meta-review)とよぶ。「厳密な数量化」や「統計的に有意」な相関関係を見出すだけの手法にはおのずから限界があるとみて、ヨリ有効な方法として民族的、生物学的、社会経済的など、さまざまな特徴において互いに比較可能な集団間(地域、サブグループを含む)の差異を比較照合することによって、チェルノブイリの大惨事の全貌を明らかにする手法を著者らは戦略的に編み出したのである。

 第三に、本書はチェルノブイリの大惨事を過少評価するあらゆる見方を粉砕する論争と論駁の書(polemique, ポレミック)でもある。 

 事故から20周年にあたる2005年、「チェルノブイリ・フォーラム」を開催しながら、チェルノブイリの放射能汚染の悪影響を示す厖大なデータを無視して、大惨事の過小評価で国際的コンセンサス(合意)をはかるIAEA(国際原子力機関)、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、WHO(世界保健機関)などの「科学的に正当化できない」諸見解に、本書の著者らは厳しく対峙しているのである。

 待望の、部厚い本書を読みおえて、思わず胸に抱きしめて目をつむっていたら、涙があふれ出た。

 このひとことをもって本書推奨のことばとしたい。

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5つ星のうち 5.0 圧倒的な情報量と深刻な内容, 2013/4/30

グロジンスキー教授(ウクライナ国立放射線被曝防護委員会委員長、ウクライナ国立科学アカデミー一般生物学部長)による前書きにあるとおり「本書はおそらく、チェルノブイリが人びとの健康と環境に及ぼした悪影響に関するデータを、もっとも多く広く包括的に集めたもの」です。

IAEA/WTOの報告書が数百の英語文献に基づいていたのに対して、本書は現地語を中心とする5千以上の資料に基づいています。原書はニューヨーク科学アカデミーの紀要であり科学的な裏づけのある内容です。福島原発事故に20数年先行する事例として、日本にとって極めて重要な文献と言えます。

個々の資料の報告内容を小さなパラグラフにまとめて列挙する形式は文献解題のような趣があります。その間に貴重な図表が掲載されています。たとえば第3章の最後に、事故から6年後の北ウクライナ汚染地域における罹患率(成人および15~17歳)が出ています。循環器98%、筋肉・骨73%、消化器63%、皮膚・皮下組織60%で、いずれも事故の翌年より数十倍に増えています。健康状態は事故発生時に原子炉の消火作業にあたった人たち(リクビダートル群)より悪いかもしれないとのことです。

再びグロジンスキー教授によれば本書で「悪影響は減少するどころか増大しており、将来にわたって増え続けることが示されて」おり、「この先幾世代にもわたって、人びとの健康も自然の健全性も悪影響を受け続けることになるだろう」とのことです。

目次は以下のとおり。

序論 チェルノブイリについての厄介な真実

第1部 チェルノブイリの汚染――概観

 第1章 時間軸と空間軸を通して見たチェルノブイリの汚染

第2部 チェルノブイリ大惨事による人びとの健康への影響

 第2章 チェルノブイリ事故による住民の健康への影響――方法上の問題点

 第3章 チェルノブイリ大惨事後の総罹病率と認定障害

 第4章 チェルノブイリ大惨事の影響で加速する老化

 第5章 チェルノブイリ大惨事後に見られたがん以外の各種疾患

 第6章 チェルノブイリ大惨事後の腫瘍性疾患

 第7章 チェルノブイリ大惨事後の死亡率

第3部 チェルノブイリ大惨事が環境に及ぼした影響

 第8章 チェルノブイリ事故後の大気,水,土壌の汚染

 第9章 チェルノブイリ由来の放射能による植物相への悪影響

 第10章 チェルノブイリ由来の放射能による動物相への悪影響

 第11章 チェルノブイリ由来の放射能による微生物相への悪影響

第4部 チェルノブイリ大惨事後の放射線防護

 第12章 チェルノブイリ原発事故による食物と人体の放射能汚染

 第13章 チェルノブイリ事故に由来する放射性核種の体外排出

 第14章 チェルノブイリの放射能汚染地域で生きるための放射線防護策

 第15章 チェルノブイリ大惨事の25年後における住民の健康と環境への影響

         *           *

偏見と独断によるまとめ, 2013/8/19
福島の今後を考える上で、本書は最良にして、最大とも言えるテキストです。チェルノブイリ事故(1986年4月26日)から27年経って、今もなお拡大しつつある被害の実態は私の想像をはるかに超えていました。以下では、各章ごとに私なりにとらえた要点、もしくは印象に残った内容をまとめると共に、背景となる本文中の事例を紹介しました。長文になるので第4部(12―15章)は省略しました。

第1章 時間と空間軸を通して見たチェルノブイリの汚染

まとめ 放射性物質による汚染地域は、ヨーロッパだけではなく、北太平洋、南北アメリカ、アジア、南半球(タヒチ島等)と地球全土に拡がっていた

第2章 チェルノブイリ事故による住民の健康への影響

まとめ 政府(旧ソ連等)、IAEA(国際原子力機関)、UNDP(国連開発計画)、WHO(世界保健機関)の公式発表を信用してはいけない

  (1) ソ連政府による機密主義とデータの組織的な改ざんにより、真実のデータが隠蔽されてしまった。  

  (2) IAEA 、 UNDP 、そして WHO の公式報告書では、人々の健康に関する悪影響はそれまで考えられていたほど重大なものではないと結論された

  (3) 本書の目的は、知られている限りにおいて、その影響の規模と範囲を明らかにすることにある。

第3章 チェルノブイリ大惨事後の総罹病率と認定障害

まとめ 放射性物質による高濃度汚染地域では、 2000 年以降、大人も子供も健康な人の割合が 20 % 前後(5人に1人)にまで低下し、慢性疾患による障害者が今も増大しつつある

  (1) 事故前には 90 % の子供が「健康と言える状態」にあったが、2000 年には、そのようにみなせる子供は 20 %以下となった〔ベラルーシ〕

  (2) 1988 ― 2002 年にかけて、健康な避難者(成人)の割合が 68 % から 22 % に下降し、「慢性的に病気」の人が 32 % から 77 % に上昇した。

第4章 チェルノブイリ大惨事の影響で加速する老化

まとめ チェルノブイリ由来の放射性核種に汚染された全ての人々に、老化の加速が見られた

  (1) 重度汚染地域の子供には早発性の脱毛症が、また、汚染地域の中年男女は、平均的一般人より 8 歳若く心臓発作で死亡した〔ベラルーシ〕。

  (2) 老化の加速はリクビダートル(事故処理作業員)に典型的な特徴であり、多くは平均的な一般集団より 10 ― 15年早く疾患を発症した。

第5章 チェルノブイリ大惨事後に見られたがん以外の各種疾患

まとめ 血液および循環器・リンパ系疾患が、チェルノブイリ事故に由来する主要な障害であり、リクビダートル(事故処理作業員)の主な死因でもあった。また、放射線による被曝は、内分泌、免疫、呼吸器から消化器系、そして泌尿生殖器から神経、感覚器等に至るあらゆる疾患を人体にもたらしていた

【血液・リンパ系の疾患】 

  ・新生児出血性疾患の発生数が事故前の2倍以上〔ベラルーシ〕となり、ダウン症候群症例が通常の 2.5 倍に増加〔ドイツ〕した。

  ・重度汚染地域〔ベラルーシ〕では、リンパ系及び造血器疾患の発生率が 56.6 % 増加し、内、白血病は 90.3 % 、リンパ系及び造血器の悪性腫瘍は 26.7 % 増加した。

  ・リクビダートル〔ロシア〕の循環器系疾患(高血圧、虚血性心疾患等)の罹病率が、 1986 年以降 1994 年までに 23 倍に増加した。

【内分泌系疾患】

  ・事故から数年後に、べラルーシの全汚染地域で内分泌疾患の急増が認められた。

  ・子宮内被ばくした女子の約 32 % が不妊となった、また、新生児の 28 % が甲状腺機能低下症により知能と生理機能の双方に異常を生じた〔ウクライナ〕。

  ・ 500 人のリクビダートル〔ウクライナ〕の過半数に下垂体-副腎系の重大な機能障害が認められた。

【甲状腺機能障害】

  ・放射性核種による高濃度汚染地域〔ベラルーシ〕では、在胎 4,5 ヶ月の胎児の 43 % に甲状腺の病変があった。

  ・放射能汚染地域に居住する学齢期の子供の 64.2 ― 75.2 % に甲状腺肥大、 2.4 ― 2.5 % に自己免疫性甲状腺炎、 0.5 ― 1.2 % に甲状腺ののう胞性変化や腫りゅう、 0.01 % に甲状腺癌が認められた〔ウクライナ〕。

  ・甲状腺癌の症例が 1 例あれば、他の種類の甲状腺疾患が約 1000 例存在する

【免疫系疾患(チェルノブイリ・エイズ)】

  ・免疫系破壊の結果として、免疫不全に加え、急性、慢性の疾患や感染症の頻度と重症度が高まった(「チェルノブイリ・エイズ」として知られる)。

  ・子宮内被ばくした小児の 43.5 % に免疫不全が、また、乳児には急性呼吸器ウィルス感染、急性気管支炎、急性腸内感染および貧血症が多発した。

  ・十代の少年、少女の 45.5 % に慢性扁桃炎、アデノイド肥大、扁桃肥大が認められ、頚部リンパ節腫脹の発症頻度が増加していた。

【呼吸器系疾患】

  ・呼吸器系疾患は最も早期に表れた被ばくの影響であった〔ウクライナ〕。

  ・放射能汚染地域に住む十代の少年少女、成人、及び避難者では、気管支炎と肺気腫が 1.7 倍に増加し、気管支喘息は 2 倍以上に増えた。

  ・慢性気管支炎と気管支喘息は、リクビダートル〔ウクライナ〕の罹病率と障害、及び死亡率の二大主要原因である。

【泌尿生殖器系の疾患と生殖障害】

  ・避難者の子女 1017 人の内、 11 % に性的発達の遅れ(第二次成長の発達異常、子宮発育不全等)が見られ、 14 % に月経機能障害があった。

  ・男性リクビダートル〔ベラルーシ〕の 42 % で精子数が最大 53 % 減少し、可動精子の割合の低下、死滅精子の数の増加が見られた。

【骨と筋肉の疾病】

  ・リクビダートル〔ベラルーシ〕の 30 ― 88 % に骨粗しょう症が見られ、骨密度が、該当する年齢の平均値より 16 ― 37 % 低かった。

  ・これは、被ばくによって破骨細胞前駆細胞と骨芽細胞前駆細胞が直接損傷されたことに起因する。

【神経系と感覚器の疾患】

  ・成人の脳細胞が破壊されることにより、記憶や書記行動の障害、けいれん、拍動性の頭痛等の症状が増加した(「チェルノブイリ認知症」)。

  ・神経系疾患は放射能汚染地域〔ベラルーシ〕から避難した十代の少年少女がかかる病気の内、 2 番目に多く、罹病率は 1000 人当たり 331 例だった。

  ・男性リクビダートル〔ロシア〕 6万8309人 のデータには、 2万9164 例の精神障害が公式に登録されている。

【感覚器の異常】

  ・高濃度汚染地域では、視覚と聴覚の異常(若年性白内障、硝子体変性、屈折異常、ぶどう膜炎、極端な聴力の低下等)が高い頻度で発生した。

  ・重度汚染地域〔ベラルーシ〕では、先天性白内障、小眼球症、耳の位置異常、過剰耳(福耳)等、先天性奇形の発生率が目に見えて高い。

【消化器系疾患とその他の内臓疾患】

  ・汚染値が 5000 ― 1万5000Bq/’u の地域に住む子供〔ウクライナ〕には、胃粘膜萎縮症が対象群の 5 倍、腸上皮異形成は 2 倍も多く発生した。

  ・相対的に汚染度の高い地域〔ウクライナ〕の住民に、消化器潰瘍、慢性胆のう炎、胆石症、及び膵炎の発生頻度は目に見えて増えた。

  ・リクビダートル〔ロシア〕の消化器系罹病(胃炎、胃十二指腸炎等)率が、事故後の 8 年間で 74 倍にも増加した。

【皮膚と皮下組織の疾患】

  ・脱毛症で入院していた 69 人の子供(十代を含む)の内、 70 % 以上が重度汚染地域〔ベラルーシ〕の出身だった。
  ・事故に続く 9 年間で、皮膚及び皮下組織における疾患の罹病率が最高値を示したのは 1993 年だった。

【感染症および寄生虫症】

  ・放射性物質に汚染された地域で、胃腸炎、感染性胃腸炎の重症型、細菌性敗血症ウィルス性肝炎等の疾患群の発生率や重症度が増大した。

【先天性奇形】

  ・ゴメリ州〔ベラルーシ〕では、 1994 年の先天性奇形発生率は 1986 年の 6 倍だった。
  ・放射能汚染地区〔ウクライナ〕において、多指症、内臓の変形、四肢の欠損や変形、子宮内発育障害等重度の先天性奇形が有意に増加した。
  ・リクビダートルの家庭に生まれた子供の 9.6 % に先天性奇形(脊柱側湾症、喉や歯の変形等)があった〔ウクライナ〕。

  ・事故後に発生した中枢神経系奇形(脳や脊髄の奇形)の内、 98 %が水頭症を呈していた。

第6章 チェルノブイリ大惨事後の腫瘍性疾患

まとめ ヨーロッパでの、放射線に起因する血液癌(白血病)の予測発生数が 1万2904 例、これによる予測死亡者数は 9161 名、同じく、甲状腺癌と非メラノーマ皮膚癌を除く固形癌の予測発生数が 13万405 例、これによる予測死者数が 8万851 人となった

【甲状腺癌】

 ・甲状腺癌は事故に起因する全ての悪性腫瘍の中で最も多く見られた
 ・ベラルーシでは、 2000 年までに 7000 人を超える甲状腺癌の患者が登録され、約 3000 人が甲状腺癌の手術を受けた。
 ・ベラルーシでは、甲状腺癌症例数は事故前と較べて、小児で 88 倍、十代の少年少女で 12.9 倍、成人で 4.6 倍に増加した。
 ・チェルノブイリの甲状腺癌は、1. ずっと早く(被ばく後 3,4 年で)発症し、2. 侵襲性が強く、3. 被ばく時に子供だった者だけでなく成人にも発現する

 ・甲状腺癌は放射線に起因する甲状腺障害の氷山の一角にすぎない。癌が一例あれば、その背景には他の器質性甲状腺障害が数百例存在する。

【血液のがん-白血病】

 ・ 1989 年以降 2003 年までの小児癌 4950 例〔ベラルーシ〕の内訳は、白血病、中枢神経腫瘍、甲状腺癌、リンパ腫、及び腎臓癌等であった。

 ・重度汚染州〔ウクライナ〕では、急性白血病の発生率は男性において劇的に上昇し、男女を合わせた罹病率は、汚染度の低い州より3倍以上高かった。

 ・リンパ肉腫と細網肉腫は事故後 6 ― 10 年目にかけて、骨髄性白血病は事故に続く 5 年間と 11 ― 15 年目にかけて有意な上昇が認められた。

【その他の癌】

 ・事故後、胃腫瘍の割合が減少した一方で、甲状腺癌、肺がん、乳がん、泌尿生殖器癌、結腸癌、及び直腸がんが増加した。
 ・リクビダートル〔ウクライナ〕では、消化器系の腫瘍が 33.7 % 、呼吸器系の腫瘍は 25.3 % 、泌尿生殖器の腫瘍 13.1 %だった。

 ・前記で、最も急激に増加したのが泌尿生殖器の疾患で、 1993 年から 1996 年にかけてほぼ 3 倍( 11.2 % から 39.5 % へと)増加が認められた。

 ・モギリョフ州〔ベラルーシ〕の男性リクビダートルの癌診断後 1 年以内の死亡は 72 % 、 1 年経過後の死亡は 16.7 %、 5 年生存率は 2.4 % だった。

 ・事故後の 10 年後から 15 年後にかけて、悪性黒色腫(皮膚がんの一種)の発生率が 5 倍に増加し、脳腫瘍は 3 倍になった。

第7章 チェルノブイリ大惨事後の死亡率

まとめ 被ばくによる死亡(者)は、事故処理作業員(リクビタートル)ばかりでなく、精子、卵子、胎児、嬰児、小児から少年・少女、そして成人、妊婦等に至る、生体のあらゆる段階で発生していた

【出生前死亡】

  ・高濃度汚染地域〔ウクライナ〕における流産と死産の推定値は合計約 5 万例だった。

【新生児の死亡】

  ・ 1986 年 11 月に新生児の男児比率が有意に低下した〔チェコ〕。
  ・ベラルーシ、ゴメリ州では、小児癌による死亡率が全国統計の 2 倍、汚染が最小だったヴィテブスク州の 20 倍多く登録された。

【成人の死亡】

  ・ロシア人リクビダートル 24万4700 人の内、 2005 年までに 3万1700 人、即ち 13 %以上が既に死亡した。
  ・ロシア人リクビダートルの 3 大死因( 1993 )は、1. 外傷と中毒( 40 % )、2. 循環器系疾患 ( 29 % )、3. 悪性新生物( 1.3 % )だった。

【死亡総数の推算】

  ・ベラルーシ、ウクライナ、及びヨーロッパ側ロシアでの事故による死亡者数は、大惨事に続く 15 年間で 21万2000 人と推計される。
  ・上記と同様の仮定で、 2004 年までの、チェルノブイリ大惨事に由来する(地球全土の)死亡総数は、 105万1500 人と推計される。

第8章 チェルノブイリ事故後の大気、水、土壌の汚染

まとめ 放射性物質による汚染は、北米や東アジアにおいてさえ、 1960 年代に核実験が始まった頃の最高値を上回った。また、土壌中の放射性核種が垂直下方向に移動すると、根の深い植物が放射性核種を吸い上げ、再び地表へと戻す再循環過程の存在が明らかとなった

第9章 チェルノブイリ由来の放射能による植物相への悪影響

まとめ 原発から 30 km 以内の強制退避区域(チェルノブイリゾーン)の植物相には、突然変異による枯死や構造上の異状、腫瘍様変化が多発した

  (1) チェルノブイリ事故のため、 30 キロメートルゾーン内の松林は強い放射線の衝撃に耐えられず枯死した(いわゆる赤い森)。

  (2) 事故に続く 2,3 年間、 30 キロメートルゾーン内で調査したシロイヌナズナの全個体群で、致死性突然変異と葉緑素突然変異が有意に増加していた。

  (3) 事故から 13 年程過ぎても、 30 キロメートルゾーン内で育つ 2 つの小麦品種では染色体異常の出現頻度が自然の頻度より有意に高かった。

  (4) 汚染地域に生育する植物には、形状変化、切断、ねじれ、しわ、分岐、茎の帯化等、放射線誘発性の変化が見られた。

第10章 チェルノブイリ由来の放射能による動物相への悪影響

まとめ 放射線による被曝は、森の動物相や重度汚染地域に留め置かれた実験動物にも、人体に生じたのと同様の被害(腫瘍の発生、免疫不全、平均寿命の短縮、老化の早まり、血液組成の変化、奇形、性比の偏り等)をもたらし、罹病率と死亡率を著しく増大させた

【動物の繁殖の異状】

  ・ゴメリ州〔ベラルーシ〕では、 1993 年から 1999 年にかけて、馬の国内最多の流産率、死産率及び子馬の罹病率を記録した。

  ・汚染地域の豚の交尾が目に見えて減少し、子豚の 1.8 % ― 2.5 % が死産に終わるか、口唇、肛門、四肢の先天性奇形を伴っていた〔ベラルーシ〕。

  ・強制避難区域の森林では、事故後の 20 年間に鳥の種類が 50 % 以下に減少し、重度汚染地域では、鳥類の個体数が66%も減少した。

  ・重度汚染地域のツバメにおいて、異状精子(頭部の変形、 2 つの頭部、 2 つの尾部を持つ精子等)が有意に高い頻度で発生した。

  ・汚染地域のヨーロッパヤチネズミは、 22 世代に渡って胎児死亡率が上昇した。

【遺伝的変化】

  ・ 12 キロメートルゾーン内の牛に、赤血球数の減少、ヘモグロビン値の低下、及び好中球と単核細胞の割合の低下が観察された。

  ・ 1986 年以降、ヨーロッパヤチネズミの染色体異常の出現率と胚致死の発生率は 22 世代以上に渡り目に見えて高まった。

  ・退避ゾーンで捕獲したツバメでは、体細胞突然変異とゲノム(染色体)突然変異が、他の地域の 2 倍から 10 倍高かった。

  ・ベラルーシでは汚染度の高い湖沼程、鯉の胎芽、幼生、及び幼魚の先天性奇形発生率が有意に高かった。
  ・ 1990 年に、 30 キロメートルゾーンに近いポレーシェ地区で捕獲された全昆虫の最大 22 %が奇形だった。

第11章 チェルノブイリ由来の放射能による微生物への影響

まとめ 放射線は、病原微生物を活性化し、感染力の増強、病原性の悪化等をもたらしたばかりでなく、人体の腸内細菌叢の分布状態を変え、自然界の土壌細菌、ウィルスにも予測できない変性をもたらしていた。

  (1) 重度汚染地域で肝炎ウィルス、ヘルペスウィルス、ニューモシスチス、及びレトロウィルスの活性化(感染力の増大、病原性の悪化等)が観察された。

  (2) ウクライナに住む避難者の子供において、ビフィズス菌の顕著な減少と大腸菌の顕著な増加が小腸内で認められた。

  (3) 事故以来、野生動物における狂犬病の報告が事実上皆無である。これは狂犬病ウィルスの消滅か、不活性化を示唆する。

  (4) タバコモザイクウィルスの新変位株(ナス科以外の植物に感染)が数種類出現した。

  (5) 事故後、チェルノブイリ周辺の汚染土壌で黒色微小菌類が劇的に勢いを増した。

以上の事柄を、そのまま日本に当てはめる事はできませんが、今後、原発事故がもたらすであろう甚大で重篤な被害の全体像を知ることができます。

最後に、本書を出版して下さった著者の方々、並びに翻訳チームの方々に、深い感謝と惜しみない讃辞を送りたいと思います。

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