子どもへの説明例(WFスタッフ矢野の場合)その1

私は、震災や放射能汚染からの避難の受入れ事務に
携わらせていただくと同時に、避難の受入れ先
としても関わらせていただいています。

普段は家族5人で、とっ散らかしながら住んでいる、
ちいさな我が家を使っての受入れ。

受入れ先として、手を挙げるには、やはり家族の同
意も必要となり、我が家の、長男ソウタ(4月で10歳)
にも、なぜ、避難してくる人を、我が家で受け入れる
のかを、説明することに・・・

で、そのためには、当然、原発事故をめぐる状況
説明が、必要になるのですが。

原発事故をめぐるいろんな情報が飛び交うなか、
何からどう伝えていけばいいのやら。

僕自身も、オロオロしている最中なのですが、10
歳の子どもを前にして、オロオロするのも悔しいし、
やはり、ここは親として、きちんと説明するのは大
事な務め。

子どもがいる、いないに関わらず、大人として、親と
して、ぼくたちは、子どもの世代に、きちんと説明す
ることが大切で、

先日、深津さんが書いてくださった「被災時の子ども
たちへのケア」にも、子どもへの丁寧な説明が大切と
書いてあり・・・
https://blog.livedoor.jp/littlesounds/archives/52269628.html

でも、ぼく自身、どんな状況なのか分からないなか。
どう説明すりゃいいのか?悩みつつも、このMLのメン
バーで力を合わせていければいいなとおもっています。

「私なら、こう説明する」「これだけは、伝えておきたい」
というアイデアをみんなで出し合って、共有していけたら
いいですね。

先日、「ちょっと話しがあるんだけど」と、ソウタを昼食
に誘い、二人で話しをした際、ぼくの状況認識を、次の
ように伝えました。

?子どもへの状況説明・・・矢野の場合?

【ひろかず】
地震と原発事故のこと。学校でも先生が説明したり
してる?

【ソウタ】
うん、してる。

【ひろかず】
じゃあ、放射能っていうのも、なんとなく分かる?

【ソウタ】
うん。身体によくないんでしょ。

【ひろかず】
そう。しかも目に見えない毒みたいなもんでね。
それが、風にのって、広がっていってんだって。

お父さんの友だちで東京に住んでいる人がいるん
だけど、外で遊ぶことも控えなくちゃいけなくて、あ
と水とか食べ物も気をつけないといけないんだって。
人によっては、全然、気にしない人もいるんだけど。

とくに、小さな子どもが、その放射能を身体に取り込
んだりすると、被害を受けやすくって、病気になるん
よね。

だから、いま、放射能の被害が及ばない地域。ぼくら
が住んでいる福岡は、大丈夫なんだけど、こっちの方
に避難してくる人が増えてきているのよ。

お父さんとしては、ひとりでも多くの子どもが安全な
ところで過ごしてもらいたくて、だから、うちも避難先
にしようと思っているのね。

【ソウタ】
放射能って、どんな毒なの?

【ひろかず】
ん?ええとね、放射能っていってもいろんな種類が
あってね、放射性ヨウ素とか、セシウムとか、プルト
ニウムとか・・・って言っても、目に見えないんだけどね。

それが空気中に撒き散らされて、体内に入ると、ガン
とかを引き起こすらしいのね。政府は、直ちに被害はで
ないって言っているんだけど、一度、放射能が体内に入
ると、ずっと病気になる不安を抱えてしまうことになる。

昔、チェルノブイリの原発が爆発事故を起こしたんだけど、
そのときも大量の放射能が撒き散らされちゃって、それが
原因で、実際に子どもにガンが増えたんだよね。

【ソウタ】
爆発したの?

【ひろかず】
そう、今回も福島の原子力発電所が爆発したのね。爆発する
発電所って、どうおもう?

【ソウタ】
こわいね。

【ひろかず】
ほら、前に風力発電のでっかい風車みにいったこと
あるじゃん。おぼえてる?

【ソウタ】
うん

【ひろかず】
あれも、電気を作る発電所なんだけど、あれなら、爆発
するってことはないし、なんらかの事故が起きたとしても、
放射能が漏れることなんてない。

でも、原子力発電所の場合は、放射能が漏れてしまう。

あ、広島の原爆。原子力爆弾って知ってる?

【ソウタ】
しってる。

【ひろかず】
あれも結局、爆発すると放射能を撒き散らして、人を
殺してしまうんだけど、爆発したら危ないってことでは
原子力爆弾も、原子力発電もおんなじなんだよね。

で、今、福島の原子力発電所が爆発して、危ない状態
になっていて、そこから避難してくる人。とくに子どもが
うちにも来るかもしれないから、ソウタもそのときは、仲
良くしてあげてほしいのよ。

【ソウタ】
わかった。

だいたい以上のような話しの流れだったのですが、
ソウタはさほど質問せず、目の前のチャーハンを黙々
と食べていたのでした。

その沈黙が、ぼくにはちょっと辛かったのですが、10
歳のソウタに、実際に説明してみることで、「子どもた
ちのために」という、軸を意識できたようです。

軸ができて、それまでのオロオロ感が、減ったような、
情報の取捨選択の基準ができたような、できないよう
な・・・

いずれにしても、子どもたちにとって、必要な行動を
とれるようにしていきたいですね。

 

矢野宏和

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